2021年12月26日日曜日

社会的承認の大切さ

昨年の一斉休校から「オンライン授業」が大学をはじめとして、様々な校種の学校で取り入れられることとなりました。特に大学では、20代の感染者数が多いということから、多くの大学が今年になってもその授業の一部をオンラインにしています。

 このオンライン授業は思わぬ副産物をもたらしたと内田樹さんは次のように述べています。(「戦後民主主義に僕から一票」SB新書・2021年、pp.274-275)

 

これまでだと5月の連休明けくらいで、授業についていけない、授業に興味がもてないという学生が脱落する。科目によっては履修者の30%が姿を消す。それがオンライン授業では激減した。それについて大学教員たちから興味深い話を聴いた。 

これまで大学というのは「学生が主体的に学ぶ場」だとされてきた。事実はどうあれ、建前はそうだった。だから、積極的に学ぶ意志を持たない学生に、教員側が「手を差し伸べる」ということはしなかった。不登校や学業不振の学生をケアするのは「学生相談室」とか「心理相談室」の仕事であって、教員が何十人、何百人いる履修者の出欠を気にすることはなかった。ところがオンラインになると、欠席者に配布物を送ったり、来週までの課題を伝えることができるようになった。「質問があればメールでどうぞ」というメッセージを送ることができるようになった。すると、欠席者が次の週には来るようになった。それで分かったのだが、彼らが授業を聴く意欲を失ったのは、「教員に個体識別されていない」ということが一因だったのである。自分が教室にいてもいなくても、それによって何も変わらない。その存在感の希薄さ、自己評価の低さが彼らの学習意欲を殺いでいたのである。だから、教員から(オンラインであれ)固有名で名前を呼びかけられたことで、ささやかながら社会的承認を得て、少しだけ救われたのである。その結果、前期が終わった時点で、定期試験を受けたり、課題を提出したりした学生の数は前年度を上回ることになり、平均点が上がったと聞いた。

 

この「社会的承認」の重要性は、小・中・高校で不登校対策として様々な工夫をしている先生方には、体験的にすでに理解されている事柄でしょう。大学教員もやっとこのコロナ禍のオンライン授業によって気づかされたということです。大学生時代の良さというのは、仲間(同級生のヨコの関係、サークルなどの先輩・後輩のタテの関係)のつながり、そして教員とのつながりなど、様々な人との出会いにあると思います。そして、もちろんそこには「社会的承認」があるわけです。ただ、最近は人間関係づくりの苦手な学生が増えているのも事実で、その辺りのケアも必要な時代のようです。

今年1年間、お読みいただきありがとうございました。また、コロナの波がやってきそうな気配ですが、どうか健康に留意され、よいお年をお過ごしください。

  

2021年12月19日日曜日

新刊『質問・発問をハックする』

 24日に発売予定の『質問・発問をハックする』(コニー・ハミルトン著、山﨑亜矢ほか訳、新評論)の訳者の一人で、滋賀県の公立高校の大橋康一先生(地歴公民科)が、紹介文を書いてくれました。


 これまで「教えこむ」ことが重視され続けてきた日本の教育が変わりはじめます。来年4月から実施される新学習指導要領で、はじめてまともに「問い」が脚光を浴びることになったのです。新指導要領は、『歴史をする』(リンダ・S・レヴィスティックほか著/吉田新一郎ほか訳)で紹介されたような、暗記主義を脱する教育への入り口です(まだ入り口です!)。3年前に発表されて以来、教育界において「質問づくり」が大きなムーブメントになってきたのは、ご承知の方も多いと思います。そんな中で注目されたのが『たった一つを変えるだけ』(ダン・ロススタイン、ルース・サンタナ著/吉田新一郎訳)でした。

私は日本の歴史学関係の大学・高校の有志の方々と、もう20年近く歴史教育の改革にとり組んできました。新指導要領の歴史に関する部分はその成果です。そうしたとり組みの中で行われてきた全国各地の研究授業で『たった一つ・・・』の名を聞くことが多くなりました。QFT(質問づくり)を知って以来、私自身もそれを用いた授業をやったり、勤務校などで紹介したりして、その効果を確信しておりました。吉田新一郎さんから、その続編といえるこの本の翻訳への協力を持ちかけていただいたことは、望外の喜びでした。

さて『質問・発問をハックする』の内容ですが、続編という位置づけのとおり、『たった一つ・・・』で質問の作り方を学んだ上で、いかに授業を展開するか。どのような場合にどのような質問をするか。質問をする上でどのような注意をすべきか等々、具体的な方法(ハック)や事例が満載されています。それもそのはずで、この本は「何百人もの教師と少人数からなる授業研究」の実践をもとにして書かれているからです。もちろんそうした実践は、アメリカの小中高校を舞台にしたものなので、クラス規模が倍近くの日本の学校とは事情が違います。しかし、『たった一つ・・・』もそうですが、このような本は他にありません。質問を活かした授業を展開するコツや設計する際の知恵が欲しければ、この本を参考にするしかありません。実際私も、読みながらうなづいたり、「目からうろこがはがれる」ような経験が何度もありました。授業に取り入れて成功したり失敗したりして、あらためて質問を活かす良い授業というものを考えさせてもくれました。

特に私が気に入ったハック(章)は、1「質問に対して、全員の手が挙がると想定する ― すべての生徒が学習に参加することを期待しよう」、8「生徒の思考プロセスという音楽に耳を傾ける ―正解だけでなく、正しい考え方に注目する」、10「生徒のやる気のスロットルを回転させる ―生徒自身が質問できるように支援する」、11「学びの安全地帯をつくる ―生徒が挑戦できる環境を提供する」です。

問いというものは思いつきでは上手く行くことは少なく、計画的に行うことが効果を上げます。一方で、想定外の問いやその結果による混乱も生じます。そうした事態にどう対処すれば良いのか等を、この本は教えてくれるでしょう。くり返しますが、他に類書はありません!

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2021年12月12日日曜日

学習会話を育む

最近ではコロナ感染状況も落ち着きをみせ、以前のようなグループでの学習活動が教室内にもどってきました。勤務校においても換気をしながら20分以内ならば向き合っての会話活動は可能と判断し、またそれ以上の会話では、パーテーションを付けて向き合う学習活動を可能としました。

 

子どもたち同士が話し合い、新しい考えをつくり出し、クラス全体で考え合おうと議論が始まる。そんな場面に遭遇する度に、教師という仕事の魅力を感じます。一方で、なかなかうまくいかないのが話し合い活動。話し合ってはいるものの、意見の紹介で終わってしまい考えが深まらないことも。

 

子どもたちの話し合いが成立していれば安心しているレベルから、さらに会話がもつ深い世界へ引き込んでくれる、そんな待望の本があります。それがジェフ・ズィヤーズ ()、 北川雅浩・竜田徹・吉田新一郎 (翻訳)『学習会話を育む誰かに伝えるために』新評論。著者のズィヤーズはスタンフォード大学の教育研究者で15年以上にわたって現場教師とともに教室での話し合い活動を改善するため、子どもたちの会話スキルを高めるだけではなく、会話を通して学習内容の理解を深め、さらには思考スキルや言語能力を高めることに取り組んできた方です。この本は、授業中の会話をより実りあるものにしたい、学習会話の質を高めるための具体的な手立てと教室アクティビティーを学びたいと願っている教師の皆さんのために書かれたものです。




 

「学習会話(academic conversation)」とは、二人以上の子どもたち同士の会話を指し、子どもたちは会話を通して少なくとも1つの考えがつくられるように努めます。効果的な学習会話によって、学習内容の理解、言語能力の向上、社会的感情的スキルの向上、学び手としての自信と自覚を高めること、さらには公平性の促進、学習に生かすための実態把握まで可能となります。この学習会話は教科や学習内容にかかわらず、広く運用が可能な点においても、ぜひ身につけておきたい考え方とスキルです。

 

学習会話で用いられる中心となる学習会話のスキルには以下の5つあります。ただ話し合っていたグループトークから、その会話で何を話し合えばいいのか、明確に示しています。

 

スキル1 考えをつくり上げる

学習会話では考えを協働して作りあげるそのプロセスと会話のスキルを用いることへ意識を向ける必要があります。考えをつくるとは、①たたき台となる考えを出す、②考えやそれを伝える際に用いられた語句を明確にする、③根拠や事例、説明を用いて考えを支えることです。本書からの例を見てみましょう。

 

A「僕は良いチームだったと思うよ」

B「どうして?

A「だってクラークは自然について知っていて、ボートもつくれるよ。ルイスは医者みたいだし、それに…」

B「しかも、クラークは植物について何でも知ってるもんね」

A「そのことは、何の役に立つの?」

B「植物を食べなきゃいけない時があるよね。でも毒のあるものは食べないようにしなければならない。たぶん薬になるものも探さなきゃならないだろうし」

A「さらに、他の人は別のことを知っている」

B「それってルイスのこと?」

A「そうそう」

B「別のことっていうのは?」

A「ルイスは地図が読めるんじゃないかな」

B「彼らは地図を持っていた?」

A「すべての工程じゃないと思うけど、たぶん」

B「最初の部分だね」

A「おそらく、ルイスは地図の描き方を知ってたんじゃないかな」

B「そうだろうね」

A「僕も彼らが良いチームだったことに賛成だよ。」

本書 P.16より

 

※アメリカ最初の探検家ルイスとクラークは、陸路で太平洋に向かって探検をした(1804年〜1806年)ことで知られています。

 

この会話によって、子どもたちは話す以前には思いつかなかった新しい考え「良いチームであったこと」をつくり上げています。会話はこういったライブ感こそ魅力であり、と同時に秩序のなさでもあるため、そのスキルが必要になるのです。

 

スキル2 たたき台となる考えを出す

会話を始めるためには、まずたたき台となる考えを少なくとも1つ出す必要があります。 たたき台として出したそれぞれの考えは、協力して練り上げていくだけの価値のあるものか否かを見極め、適切なものが選べる能力を子どもたちに身に付けさせる必要があります。

 

スキル3 考えを明確にする

「それは私たちにとって何を意味しますか?」「自由をどのように定義していますか?」「もう一度、言ってもらえますか?」など、必要な情報を引き出す質問をし、意味を共有し全員を同じ土俵に乗せること、それが明確にすることです。

 

スキル4 考えを支える

理科における実験データ、歴史の一次資料の根拠、算数・数学では見つけたパターンについて一般化を支えるための演繹的な説明など効果的な会話をするためには、事例や根拠、理由を用いて論証し、考えの説得力を高めることがとても重要です。

 

スキル5 評価する、比較する、1つを選び出す

討論や決議の場面では、複数の競合する考えのどちらが有力であるか、最善の考えを決める際に、比較検討したり評価することが求められます。しかし、すぐに意見を出して会話を始めてしまうことで、その意見を守ろうと固執してしまい、相手を言い負かし討論で勝つことに専念してしまうことがあります。そのため、自分の意見をそのまま最初に述べることから始めないことです。最後まで自分の意見を保留しておき(少なくとも心の中に留めておく)、両方の考えを作り上げることから会話を始めた場合は、両方の側面についてしっかり理解した上で、最終場面での客観的な判断が可能となります。

 

これらの学習会話を洗練させるには、教師による「問いかけ」が重要です。指導書に示された誰にでも当てはまるように準備された発問例ではなく、目の前の子どもたちが何を知っていて、何を知る必要があるのか、そして何に興味があるのか、子どもたちの実態を理解している直接的な教師にしか作れない魅力的な「問いかけ」をつくる必要があります。

 

そのため、効果的な「問いかけ」には明確な教師からの期待や指示を含んだものになり、単なる発問よりも長くなるケースが多くなります。表にその他の効果的な「問いかけ」例を載せておきますので参考にしてみてください。(本書P.43より)

 

 


 

学習会話は学んだことを形にし、自分たちのものにするための絶好のチャンスでもあります。多様な考えをつくり上げることこそが1番の学びです。それぞれの考えをできるだけつくり上げたいもの。そのためには、他の人を尊重し大切にし、他の人から学ぶ必要があります。

 

授業中あまり話さない子どもの声をクラス全体の学習に活かし、子どもたち自身が自分たちは考えをつくり上げる力がある信じることです。学びとは様々なこと読む、書く、考える、話す、聞く、見る、会話するなどに取り組んで有意義な考えを作り上げることだというマインドセットを育てていくのです。

 

学習会話の効果は授業の場面に限りません。日常生活において困ったときには話し合って解決しようとする文化が育いくことでしょう。この本は単なるスキル本ではなく、学びとは一体なんなのか? そして、話し合い、対話をしていく民主的な文化を育てていく、そんな深みを持っています。子ども同士の話し合いは、勉強をできる子の一方的な説明で終わってしまいがちです。新しい考えを生み出すための学習会話へとそのスキルとマインドセットを学んでみませんか。この冬休みに『学習会話を育む』ぜひご一読を。


PLC便り『新刊案内 学習会話を育む』

http://projectbetterschool.blogspot.com/2021/10/blog-post_24.html

2021年12月5日日曜日

学校を協働の学びの場に

学校には「ハック」(意図的に手を加えて、より良いものにつくりかえること)すべきことがたくさんあります。★1

なかでも、ハッキングの必要度が高いものは「校内研修」ではないでしょうか。みなさん、これまでの校内研修で、主体的に、意欲的に、深く学んだという実感はありますか?それとも、押し付けられた、強制された、仕方なく「つきあった」程度の関わり方でしたか?

教員の学びについて研究している研究者は、「よい研修というのは本質的、意図的で、日常に根づいていて、体系的なもののはずである」★2 と述べています。参加する意味を感じられず、学校現場とはかけ離れた内容の、質の低い研修を押し付けられているというのが、実態なのだと思います。同書はさらに、「背景、経験、興味、環境、能力に関係なく、教師は既製品のように標準化された教員研修を押し付けられています。(略)教師は、工場で大量生産をおこなっているロボットのように扱われています。そこには、協働も、すぐれた実践の共有も、組織のビジョンや目標の達成もありません。」と実に手厳しい。

では、どのような学びの場が教師にとって必要なのか。同書の筆者らは、「個人的な「パッション・プロジェクト(★3 PLC便り 2021年5月2日)」や協働的な学びの機会こそが、教育界における未来の教員研修であると確信しています」と述べています。

ここに、新しい校内研修へのヒントがあると思います。一人ひとりにあったもので、意味があり、実践に応用できるものであること。そして、教員同士がともに学び、成長し、組織としてのビジョンや目標を確立できるような校内研修です。

そのような校内研修は、どうすれば実現するのでしょうか。本書での提案をもとに考えてみましょう。

◯学びに選択肢があるようにすること
誰かが決めて、誰かが実施するものを、受け入れるだけの学びでは、オーナーシップは生まれません。自分自身が選び、決定し、実行したものは、真の学びとなり、仲間と共有したり、発信したい情報となるはずです。

◯協働的な学びにシフトすること
教師が協働で学べる方法は様々です。エドキャンプ★4、同僚とのブッククラブ、TwitterなどのSNSやネットワークを通したやりとり、アイデアの交換など。アイデアや実践などを同僚と共有し、賞賛されたり、賛同してもらったときに、自分自身の仕事の価値を見出すものです。

◯教師のニーズを知る
教職員一人ひとりがもっているニーズ、目標、レディネスのレベルなどについて知っておくことは、一人ひとりに最適化された学びをサポートすることにつながりますし、教職員の協働的な学びの場を創設することにもつながるはずです。

◯研修の日常化
日常のあらゆる場面を学びの場であると「決める」ということです。「研修日」を決める必要はないはずです。日々の授業、日々の実践の中に、学ぶべきことは埋め込まれているはずです。職員会議だって、決定事項の伝達に使うのはもったいない。職員会議を教職員が成長する時間と位置づけににはどうすれば良いか考えてみませんか。

◯時間割に共通の空き時間を組み込む
時間は必要です。共に過ごす時間も必要です。多忙な教員の時間を調整するのは至難の技。なんとかして時間を確保しましょう。

◯全員の学びが記録できて、共有できるようにする
グーグル・ドキュメントのような共有可能な場所にチャートをつくるのは良いアイデアだと思います。誰でも、いつでも、どこからでも見ることも、修正することもできるのですから。次の3つの欄をつくることが推奨されています 1) 現在ある知識、現在実践していること 2) 目標(学びたいと思っているテーマなど) 3) 成果(学んだこと、研修の成果)

我が国では実に様々な研修が提供されています。国が提供するもの、都道府県や市町村の関係機関が提供する公的なもの、民間組織やNPOなどが提供するもの。それぞれに魅力的なものはあるのでしょうが、所詮は誰かがどこかで、学校や教室のことを知らずに計画しています。

そろそろ、それらの動きに「独立宣言」を突きつける時です。子どもたちや地域の近くにあって、もっともよく知った自分たちで、自分たちの主体的で専門的な学びの場を創っていきませんか。


★1 教育関係のハックシリーズはこんなにも多く出版されている。
https://www.shinhyoron.co.jp/wp/wp-content/uploads/20211108-books_that_create_new_lessons.pdf

★2 ジョー・サンフォリポ&トニー・シナシス(飯村寧史、長崎政浩、武内流加、吉田新一郎訳) (2021) 『学校のリーダーシップをハックするー変えるのはあなた』新評論 ハック9 協働して学ぶ.

★3 「パッション・プロジェクト –大人も情熱を注げるプロジェクト–」https://projectbetterschool.blogspot.com/2021/05/blog-post.html

★4 EdCamp Japan http://www.edcampjapan.org

2021年11月27日土曜日

私立大学の生き残り戦略

 

 9月末に日本私立学校振興・共済事業団から衝撃の発表がなされました。それは、今年度の大学入学定員充足率が調査開始以来、初めて100%を割り込んだというものでした。つまり、本格的な大学全入時代に突入したということで、定員割れの4年制私立大学も全体のほぼ半数にあたる277(前年度から93校増加)になりました。

 18歳人口が1992年の205万人をピークとして年々減り続け、2021年は114万人になっています。このまま減り続けると、2040年には88万人になるようです。

 そのことは、私立大学一般入試における志願者数にも大きな影響を与えています。

 1990年は志願者数では、上位3校は早稲田大159,514、日大156,627、明治大111,494でした。それが2021年度の上位3校は、近畿大135,979、千葉工業大108,707、明治大99,470となりました。上位校の顔ぶれが変わったことも変化の一つですが、志願者数全体も減ってきています。かつては、一人で何校も受験をするのが当たり前でしたが、コロナ禍ということもあり受験生も志願する大学の数を絞ってきているようです。また、地方在住の受験生は地元の大学を選ぶことも増えてきているようです。(せっかく東京に出てきても、授業がほとんどオンラインではやり切りないという話をよく聞きました。)

 こうなると定員割れをしている私立大学は経営的にも厳しくなってきます。そのためここ数年生き残りをかけて、様々な取り組みをスタートさせている私立大学が多くなってきています。

 1124日付の日本経済新聞に「講義は遠隔 地域で学ぶ」と題して次のような記事が掲載されていました。

 講義はオンラインで実施し、地域を巡りながら学んでもらう大学が誕生している。学生はその土地で暮らしながら様々なプロジェクトに参加。地域ニーズを発掘・創造し社会課題の解決を探る。

 この大学は文部科学省の大学設置基準に準拠していないため、大学卒業資格は取得できません。しかし、大卒の資格を必要とする学生には、別な大学の「すべてネットで完結する通信教育課程(新潟産業大学)」が受講できるようになっているそうです。この大学は、今年4月に「アスノオト」(東京都千代田区)が運営する4年生の「さとのば大学」です。大学には、キャンパスはなく、地域を1年ごとに巡り、現地で暮らしながらその地域の人々と一緒にプロジェクトに参加して学ぶようです。講義はすべてオンラインで行い、平日午前中はオンライン講義を受け、午後は学習した内容を基にして、地域のプロジェクトに参加するとのこと。初年度にかかる費用は80万円前後で、国立大学と同程度のイメージのようです。卒業後はまちづくりのコンサルの会社への就職や地域おこし協力隊への参加など、地方創生にかかわる仕事を想定しているようです。

 大学もそれぞれの立地や経営資源などの強みを活かして、対面とオンラインの有機的な組合せなどによって、これまでの経験値に捕らわれることなく、学びのあり方を追究してほしいものです。少子化で、しかも言葉通りの「大学全入時代」にあたって、このピンチをチャンスに変える大学が多くなることを期待したいものです。

2021年11月21日日曜日

新刊案内『学校のリーダーシップをハックするー変えるのはあなた』


ジョー・サンフォリポ&トニー・シナシス(飯村寧史、長崎政浩、武内流加、吉田新一郎訳) (2021) 『学校のリーダーシップをハックするー変えるのはあなた』新評論.

新しい翻訳書が出版されます(11月25日発売)。学校のリーダーシップに関する、本質的で、画期的な一冊です。変わらない学校から脱却するための考え方や発想が詰め込まれた一冊です。そして、これまでにない視点とアイデアが満載の一冊です。秀逸な実践と深い考察に支えられた一冊です。

『学校のリーダーシップをハックする』が掲げているハック(意図的に手を加えて巧妙につくりかえようとすること)は、次のとおりです。現代の日本の学校に欠けていて、変革が必要な問題ばかりです。

ハック1 リード・ラーナーになる――校長は、学び続けるモデルを見せよう
ハック2 C.U.L.T.U.R.E(文化)をつくりだすー―リーダーが率先してはじめよう
ハック3 関係を構築する――意図的に関係をもとう
ハック4 学校の壁を取り払う――コミュニティーとパートナーになろう
ハック5 生徒の声を拡散しよう――声を見える化し、周囲の人の支持を高めよう
ハック6 生徒を学校の中心に据える――子どものための学校をつくろう
ハック7 スーパー教師を見いだす――スペシャリストのチームを育てよう
ハック8 教師も情熱を注げるプロジェクトをする――教師を励まして学びと成長を推進しよう
ハック9 協働して学ぶ――仲間とともに成長しよう
ハック10 マインドセットを変える――ネガティブ思考をやめよう

本書のエッセンスは、「はじめに」の次の一節に集約されています:

「校長の日々の仕事は、もはや単なる管理者や経営者、あるいは上司でさえもありません。その代わりに、校長は、イノベーションの実践のモデルとなる必要があります。

それは、教師の学び方が変わることによってもたらされます。校長室に座ってEメールをチェックしたり、効率的に事務処理をしたりするだけでは、現代の学校のニーズを満たすことはできません。効果的な働きをするリーダーは、学びを日々の仕事の中心に置いています。今こそ、伝統的な学校の実践をハックして、政策や教育委員会からの指示、テストの成績だけではなく、生徒一人ひとりにあわせた本物の学習体験を重視する時です。」(p.4)

「校長は、イノベーションの実践のモデル」というのです!もうこれだけでも、ワクワクするような変革が学校に起こりそうな気がしてきます。そして、教職員や子どもたちともに生き生きと歩むリーダーの姿や家庭や保護者と楽しげに語り合うリーダーの姿が、目に浮かびます。

『学校のリーダーシップをハックする』を読んで、新しい時代の学校リーダーのあるべき姿について、考えてみませんか。あなたが、今、管理職であれば、明日からでも実践できるアイデアに出会うことでしょう。あなたが、管理職でなかったとしても、学校のイノベーションに主体的に関わっていける様々な方法が紹介されています。

そう、変えるのはあなたです。


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2021年11月14日日曜日

てるちゃんのかお

新型コロナの感染状況もようやく落ち着きをみせ、学校は通常に戻りつつあります。これまで最小限に抑えられていた子ども同士の関わりが増えるに従い、トラブルも同じように増えてきます。子どもたちが気軽にふざけあって、からかってしまうのが見た目や容姿。それが深刻ないじめ問題へ進展していくこともあります。

 

本来ならば、教師と共に話し合いを通して、相手の気持ちを推し量ったり、自分の本当の気持ちを伝えてみたりと、一人ひとりが成長する機会となっていきます。そういった個別の問題を関係する子どもたちとは話し合うことはできたとしても、学級全体で考え合う機会をもつことはなかなか難しいものです。見た目問題は、子どもたちにとってとても気になるトピックでもある一方、話題にしたくともしづらくもあり、一人ひとりの悩みや個性にどう向き合っていくのか、教師として腕がためされるところです。

 

そのきっかけにふさわしい絵本が文:藤井輝明/絵:亀澤裕也『てるちゃんのかお』金の星社です。この絵本をもとに、教室で子どもたちと考え合ってみてください。著者の藤井さんは2歳の頃より、顔の右側に大きなコブができました。見た目問題に悩みながらも、医学博士として顔に病気や傷などを抱える人達に対する差別・偏見をなくすため、講演や授業をされていた方です。

 

絵本の読み聞かせをもとに、主人公てるちゃんの辛い経験やそこから努力してきたこと、まわりの家族の支えがあったことなど、子どもたちとてるちゃんの気持ちについて話し合いました。バケモノ呼ばわりされて心が傷つき、なんでこんな顔になってしまったのかその悲しい気持ちやみんなとちがう自分に悩んでいるてるちゃんに共感しました。みんなとちがっている顔のコブこそが個性ではないのか、だから強く生きてこられたのではないかと。子どもたちからは「顔のことについて気になることが私にもあるかも」と素直な感想もきけました。

 

てるちゃんこと藤井輝明さんは、見た目で辛い経験をずっと経験する中で、落ち込んだまま生きていくのも人生だけど、前向きに生きて行ってやろうじゃないかと「前向きに生きる五つの誓い」として、自分に掲げていることがあります。

 

素志貫徹のこと「常に志を抱きつつ、懸命に為すべきことを為すならば、いかに困難に出会うとも、道は必ず開けてくる。成功の要諦は、成功するまで続けるところにある」

 

自主自立のこと「他を頼りに、人を当てにしていては事が進まない。自らの力で自らの足で歩いてこそ、他の共鳴も得られ、知恵も力も集まって良き結果がもたらされる」

 

万事研修のこと「見るもの聞くこと全てに学び、一歳の体験を研修と受け止めて慎むところに真の向上がある。心してみれば万物ことごとく我が師となる」

 

先駆開拓のこと「既製に捉われず、絶えず創造し開拓していく姿に日本と世界の未来がある。時代に先駆けて進む者こそ、新たな歴史の扉を開くものである」

 

感謝協力のこと「いかなる人材が集うとも、和がなければ成果は得られない。常に感謝の心を抱いて互いに協力しあってこそ信頼が培われ、真の発展も生まれてくる」

藤井輝明著『運命の顔』草思社 P.225P.226より

 

信じられないかもしれませんが藤井さんの顔を見ただけで、ツバを吐きかけてくる人もいます。藤井さんがバスに乗っていると中高年の男性から嫌な視線を感じていました。目が合うと上から下へ、完全に見下したように下げずむかのような視線。藤井さんがバスから降りる間際、中高年の男性はペッとツバを吐き捨てたのです。頭上に何かが落ちてきた瞬間、すぐにそれがツバだとわかったそうです。動揺してしまうと、怒りや悲しみが一気にこみ上げてしまうので、必死に気持ちを押し殺しました。「このようなことはゆうに百回以上も経験してきているじゃないか」と心の中で言い聞かせ、ポケットからハンカチを取り出し、まだ生暖かいツバを拭き取りました。バスを降りて、何食わぬ顔で歩くその男の人の横顔を見ながら。

 

“かつては目いっぱいの怒りを視線に込めてにらみ返していました。これはものすごく疲れることであり、不愉快な気持ちになります。そしてときどきあることを試すようになりました。それは、笑顔でおじぎを返すことです。不愉快な思いをさせられて、おじぎを返すなんて、おかしな話かもしれません。私がおじぎをすると、まずほとんどの人がキョトンとします。知り合いでもないので、当然のことでしょう。私がおじぎをすると、あわてて視線をそらす人や、気まずそうにうつむく人など、反応はさまざまです。けれども、なかには私につられて笑顔になる人や、おじぎを返してくれる人もいるのです。このほうが、どこか知り合いになれたような気がして、よっぽど気分がいいことだと思いませんか? 私にとっても、きっと相手にとっても。”

藤井輝明著『運命の顔』草思社 P.223より

 

藤井さんは「ただ前を向いていたいと思って生きていただけに過ぎない」と言っています。「自分の目の前に立ちはだかる何かそれにぶつかった痛みに屈すれば障害になり必死に乗り越えようとすれば目標になり得ると。藤井さんにとって顔のコブは克服してきたことではなく、今の現状から逃げずに、前を向いてて生きようとしつづけてこられた個性なのかもしれません。

 

藤井さんは今年の5月にお亡くなりになりました。コロナ前には私の勤務校にも来ていただき、講演や子どもたちと気さくにおしゃべりしてくださり、実際に顔のコブにも触らせてくださいました。実にぷにぷにしていて温かい。触られている藤井さんは、終始ニコニコしていて嬉しそうでした。これは藤井さんにしかできない「ふれあいタッチ授業」です。

 

もう一度本校にお呼びしたいと思っていましたがそれはかなわぬこととなり、残念でしかたありません。しかし、藤井さんが残された多くの著作は、子どもたちがこれから思春期になって見た目問題に悩んだとき、藤井さんと再び出会い直し、励まし、前向きに生きる支えになってくれると信じています。

2021年11月7日日曜日

新刊『国語の未来は「本づくり」』

訳者のマーク・クリスチャンソンさんによる紹介文です(「訳者まえがき」より)。

 

皆様は小学校でどのような国語の授業を受けましたか?

1980年代、私は日米の公立の小学校で数年ずつ学びましたが、どちらの学校でも読むことと書くことは基本的に強制されてやるものでした。

国語は得意だったので「好き」ではありましたが、点数をとること以外、特に学校の読み書きに興味はありませんでした。

指定された教科書や本を読み、テストを受け、指定された題や形式の作文を書いて先生に成績をつけてもらう流れで読み書きを覚えました。

現在の日本の国語教育はどうでしょうか? 今でもその形式が多いと思います。

しかし、それで良いのでしょうか? そして今後はどうあるべきなのでしょうか?

 

と聞かれても「他に方法があるの?」と思う方もいるでしょう。

教師主導の教え方しか経験したことがないと、他の方法をイメージするのは困難です。

私もそうでした。

私は教員になって何年も自分が受けたような一方通行の教え方を(生徒への愛情をもって工夫しつつも)再生することしかできず、生徒全員に基本的に私が決めた同じことをやらせ、同じ基準で優劣の評価をつける授業だけを続けていました。

ただ成績が欲しくて合わせているだけの生徒、退屈そうにしている生徒、完全についていけない生徒がいる現実に違和感を感じつつ。

●「ワークショップの授業」との出会い

皆様はワークショップ(the workshop model)という教え方をご存知でしょうか? (1ページのコラムで概要を説明していますが、日本では「作家の時間」や「読者家の時間」と呼ばれている学習者主体の教え方です。)

私はこの教え方に出合い、自分の教育観が大きく動きました。

2009年、『イン・ザ・ミドル』の原書(当時は未邦訳、訳が出たのは2018年)を全国各地の仲間とオンラインで一緒に読み進めるブッククラブに参加したのですが、その学びの中で目から鱗がポロポロ落ち続けることとなりました。

最初は斬新すぎて理解できず、受け入れられない部分もありました。

「これ、無理でしょ!」という感じでした。

しかし、生徒に自由な選択と主導権を与えて意欲を引き出すことの価値は明らかで、是非自分でもやってみたいと思い、稚拙ながら実践することにしました。

2012年、私は国際基督教大学で教えていたのですが、You: A Course of Personal Writingという英語教育プログラム内の選択科目をつくりました。そして十数人の勇気ある大学生たちが登録してくれ、みんなで試行錯誤しながらワークショップによる作家活動を中心にした学びを行いました。

帰国子女から英語が苦手な生徒まで様々な英語力の生徒が教室に集い、助け合いながら自由に選んだ題材やジャンルの作品づくりに打ち込みました。一学期に三つ以上の作品をクラスのLMS上に「出版」する<このブログは、http://you-personal-writing.blogspot.com/で見られます。>、という基本的な目標以外は自由にさせ、創造力豊かなフィクション、ノン・フィクションの作品ができあがりました。

教員経験15年目にして、初めて学習者に主導権を与えることによって強い学びの意欲と主体性が発生することを体感できました。

●本書を訳そうと思った理由

現在私は小学校で世界市民の養成をしています。慶應義塾横浜初等部の開校時からEnglish for Global Communication(GC英語科)のカリキュラムのデザインをとても優秀な同僚たちと協力しながらさせていただいています。おそらく近い将来にAIがやってくれるようになる外国語としての「英語」よりもさらに大切な地球市民としての意識、課題発見・解決力、異文化理解、そして人間関係づくりと対話の力に重点をおいた授業をつくる方法を模索する毎日です。

専門は英語教育と異文化交流であり、日本の国語科は教えたことがありません。

そのため「国語の未来」を語る本を出すには百年早いと全国の国語の先生たちから怒られそうです。

しかし、日本と英語圏の「橋渡し」は私の教育者としての使命の一つであり、本づくりを通して行われるアメリカのワークショップの読み書き教育の紹介がこのようにできることをとてもうれしく思います。

そして事前に告白しておきます。自分の小学校の授業ではまだ「ワークショップ」を実践していません。(中略)しかし、この本にあるようなアメリカの低学年の「作家の時間」の本づくりを日本の小学生が英語でやる可能性は十分にあると考えています。一人一台のディバイスが配られ、教師に頼らずとも小学生が自分で表現したい英語の語彙や文法を自分で調べて学べる環境はほぼ整いつつあります。それが整えば英語の自由な「本づくり」は十分可能です。

そのようなことを考えている時、本書の原書のEngaging Literate Mindsという魅力的な本のブッククラブへの誘いがあり、その流れで和訳してみることになりました。

本書はアメリカの小学校の国語の教え方を紹介していますが、日本の「国語科の未来」にも「英語科の未来」にも大いに刺激になる内容が詰まっています。

読み書きをどのように教えると子どもたちが夢中になって学ぶのか? その答えを求めているすべての教育者のためにこの本を訳したいと私は思いました。

●この本の三つの魅力

   子どもたちの作品が素晴らしい!

最大の魅力は著者たちの教室にいた低学年(5才から8才)の子どもがつくった実際の物語や詩などの作品とその作品づくりのプロセスがとても分かりやすく紹介されている事です。自分がつくりたい本を自由につくることを許された子どもたちの素晴らしい創造力と思考と成長を知ることができます。

   主体性を引き出す方法が具体的

この本の著者たちは子どもの主体性を徹底的に重んじる教育を追求し実践しています。アクティブ・ラーニングを掲げる多くの教室では教師が用意してきた活動を行い、最終的に教員が設定した学びの着地点に子どもが時間内に到着するように導きます。

教師が前に立って板書している従来の知識偏重のチョーク・アンド・トークよりはアクティブですが、所謂「アクティブ」な活動において子どもの「主体性」は実際にどのぐらいあるのでしょうか? 

この本で紹介されているワークショップの授業では、5歳から子どもが自分で「作家」として、自分が選んだ題材の本をつくります。自分でテーマを決め、他の子どもや教師と相談しながら、自分の中から溢れ出るアイディアを絵と字を合わせて一つの作品にし、出版します。「やらされた読み書き」ではなく、主体的な読み書きをすることによる教育効果の高さをこの本は論じ、方法論を提示しています。主体性(agency)の定義を語るコラムも、21ページにあります。是非、この言葉は探究すると同時に実践してください。

   社会性(と感情)を育む方法が具体的

私たちは一体どのような社会をつくりたいのか、そしてそのためにはどのような市民を学校で育てるべきなのかという本質的な問いもこの本は追求します。

教室は人間社会の小宇宙です。助け合うこと、他の人を大切にすること、認め合う健全な人間関係を読み書きの授業を通してどのように築くことができるのか、という視点が各章に入っています。自由で民主的な社会の市民のあるべき姿をどのように学校を通して具現化できるのか語っています。特に最終章(「人はどうあるべきか?」について子どもと考える)はインパクトがあります。理想的な教育とはどのようなものであるべきなのか多いに考えさせられます。

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2021年10月30日土曜日

大学の地域連携・地域貢献

 

先日、日本経済新聞を読んでいたら、大学と自治体の間で「包括連携協定」を結ぶ事例が増えているという記事がありました。そこで、ネット検索をしてみると、次のような項目が検索上位にありました。

【横浜国立大学・地域連携推進機構】「企業や自治体との包括連携協定について」 

包括連携協定は、地域が抱える社会課題に対して、私たち教育研究機関と自治体や民間企業がそれぞれの強みを活かし、協力し合うことで課題解決に向き合うための枠組みです。人的・知的資源の交流と活用を図り、多様な要請に応えながら大学の知の向上をめざしています。それぞれ地域にとっての適切な役割を模索しながら、真剣に課題に向き合っています。 

 大学も少子化の中で生き残るためにいろいろ大変です。かつての「象牙の塔」などと言われた時代が懐かしくもなります。「横浜国立大学」の連携事例が紹介されていました。

★南足柄市と横浜国立大学の連携事例(横浜国立大学ホームページより)

フィールドワークをビジネスプランにつなげる

その連携協定の事業の一つが集中講義「実践地域と起業」です。この講義では学生が2泊3日間南足柄市に滞在し、講義やグループワークを通して、同市の課題の解決や魅力の発信を起業(ビジネスプラン)という形で提案するものです。参加した学生は18名。留学生2名、地元出身者1名を含む、幅広い学年・学部の学生が集まりました。

1日目。学生たちは市役所で講義を受けた後、大雄山駅前において2時間ほどフィールドワークを行いました。駅前の雰囲気を肌で感じた後、バスに乗り込み、主要な企業の工場や物産館、事業所、観光スポットなどを見学。宿泊先の最乗寺では、夜と翌朝4時半から1時間ずつ座禅を行いました。学生には大変興味深い体験となったのではないでしょうか。

これは、小・中・高校の総合的な学習の時間にも当てはまることです。学習内容に関連する様々な資料(図書資料、写真、動画など)や場合によっては専門家の話を聞いたり、モノづくり活動を行ったりすることもあるでしょう。また、必要なら校外に出かけていき、フィールドワークを行うなど、立体的な授業を構成することが可能です。

また、日本経済新聞1020日付では、「地域貢献 地方国立大が躍進」の記事が掲載されていました。これは同新聞社が全国の761国公私立大学を対象に「地域貢献度」調査を実施した結果に基づいたものです。「地域経済分析システムを講義で活用」「大学発ベンチャーを支援する制度・取組」などの評価項目に基づいて点数化したようです。

1位が名古屋市立大で、同大学の郡健二郎学長は「公立大学ゆえ、名古屋市民に認められないと、大学として存在していく意味はない」と言い切っているようです。

「開かれた学校づくり」は小・中・高校でしばらく前から盛んに言われてきましたが、大学においても地域に開くことが当たり前になりつつあるようです。「学びの原則」の一つである「協働する学び」の視点からも、ますます教室の外との連携・協力の機会は増えていくものと思います。 

1029日付の日本経済新聞1面には、連載記事「教育岩盤」において、「新陳代謝へ脱・前例主義」と大きな見出しがありました。この記事のサブタイトルにある「変化を嫌う」はまさにこの数十年間、わが国の教育現場を覆ってきた空気です。

「脱・前例主義」で豊かな発想で、大胆に切り込んでいく実践が増えることを期待します。

2021年10月24日日曜日

新刊案内『学習会話を育む』

本には掲載しなかった、「訳者まえがき」の下書きをこの本の紹介として使います。執筆したのは、訳者の一人である竜田徹です。(「生徒」は、小学生、中学生、高校生すべてを含むものとしてお読みください。また、一部は、その後に書かれた「訳者あとがき」で使われました。)


■グループワークやペアワークを高めるために

 本書を読まれるにあたって、訳者の一人としてはじめに三つのことをお伝えします。

第一に、本書の内容は日本の教育現場で行われているグループワークやペアワークを高めることに確実に貢献するだろうということです。小学校・中学校・高等学校等どの校種にも、どの教科の話し合いにも役立てることができる内容です。授業に会話を取り入れるいろいろな方法についても、生徒の実際の会話の記録とともに具体的に紹介されていますので、自分の教室ですぐに実践してみたくなるでしょう。

授業の中で、ペアでの伝え合いや、グループワーク、クラス全体の話し合いや討論に取り組んでいる教師も多いと思いますが、そのときの生徒の様子をちょっと思い出してみてください。次のように感じたことはないでしょうか。

・進め方の「型」や話し方の「型」に捕らわれすぎた結果、生き生きと話せていないように感じられる。言語活動の「型」はどう使えばいいのだろうか?

・活発に話し合っているように見えて、実際には本題から離れた「おしゃべり」になっていることが多い。もっと学習目標に焦点化して話し合えるようにしたい。そして、話し合いを、学習内容の理解や自分の考えを深めることに役立てたい。

・ある論題の賛否をめぐって討論をしたとき、最初の自分の立場に固執してしまい、テーマそのものへの理解を深めるという本来の学習目標を達成できないことがあった。授業の中で討論を行うときのポイントは何か?

・一つ一つの発言が短すぎる。一言だけで済ませようとしている。教師から促されなくても、自ら理由や事例をつけて長く発言してほしい。自分の考えを他の人に伝える際に、自分の言葉を自分で工夫できるようになってほしい。

・ジグソー学習やディベートなどさまざまな言語活動に取り組んできたが、同じ活動ばかりでマンネリ化している。もっと言語活動のレパートリーを広げたい。

・ペアワークやグループ活動の評価がむずかしい。話し合いの何をどのように評価したらよいのか? これまで自己評価やルーブリックなどを活用してきたが、あまりうまくいかなかった。話し合いの学習効果を適切に見取るための方法を知りたい。

・そもそも、どうして授業でペアでの伝え合いや3~4人グループでのやりとりを取り入れる必要があるのか? 話し合いを取り入れることにはどんな効果があるのか? 授業の中に話し合いを取り入れる意義や理由を明確にしたい。

・「言語活動の充実」や「話し合いの工夫」をテーマとして校内研究を行いたいが、教科や学年の垣根を越えて取り組むにはどのようにすればよいかわからない。話し合いを取り入れた授業改善の意義と方法を校内で共有したい。

本書を読めば、これらの疑問や問題に対し、読者一人ひとりがより新しく明確な考えをつくり上げることができるでしょう。


■「学習会話」とは何か? どんな力が必要か?

二番目のポイントは、本書のテーマである「学習会話」とは何かということです。「学習会話」はAcademic Conversations の訳語です。やや硬いニュアンスのある「アカデミック」と、日常的なニュアンスのある「会話」とが組み合わされた言葉です。本書では「学習場面に適した会話」という意味で用いられます。決してお堅い学術用語ではありません。

「学習会話」は、あまり耳なじみのない言葉かもしれませんが、この言葉が日本の学校教育に示唆するものは小さくありません。例えば、日本の授業の場合、「話し合いを始めましょう」と言うことはあっても、「会話を始めましょう」と言うことはあまりないでしょう。しかし考えてみれば、話し合い活動を成り立たせるためには、大前提として、一対一のやりとりを適切に積み上げることが必要です。つまり、生徒同士が自分たちの力で会話を適切に続けることによって、効果的な話し合いは成立するのです。「話し合い活動がうまくいっているかどうか」を捉えることもたしかに大切かもしれませんが、それより教師にとってもっと大切なのは、「生徒一人ひとりがうまく会話をしているか」を捉えることなのです。

この「学習会話」について著者は次のように主張します。

一年間をかけて、教師に頼らなくても自分の会話をコントロールできるようにするということに重点を置きましょう。また、考えを明確にすること・支えること・評価することは、双方向のスキルであることに気づかせましょう。つまり生徒は、いつ、どのような形でパートナーにこれらのことを促すかを理解する必要がありますし、同時にパートナーから促された場合の対応の仕方も理解しておく必要があります。(p.257

 つまり、生徒たちが学習場面に適した会話の力を身につけること、話し手としても聞き手としても自分の会話のあり方を自覚的に高めていくことが目標とされているのです。このような生徒が育てば、アクティブ・ラーニングなどの対話的・創造的な学びの効果が高まることは間違いないといってよいでしょう。中心的な学習会話の力として本書で提案されるのは、具体的には次の五つのスキルです。

①考えをつくり上げるスキル。②~⑤を包括するスキル。考えをつくり上げるという目的やそのプロセスの全体像を見通す。

②最初の考えを出すスキル。考えをつくり上げていくためのたたき台となる考えを出す。これがなければ学習会話は始まらない。

③考えを明確にするスキル。質問したり言い換えたりすることで、会話する人同士がその考えの意味を共有する。

④根拠を用いて考えを支えるスキル。適切な根拠、事例、理由づけなどを用いて自分の考えの説得力を高める。

⑤つくり上げた考えを評価するスキル。討論などで、複数の考えを判断基準に照らして比較し、価値づけ、一つを選び出す。

 これを図で表すと、図1-2になります。


本編では、各スキルの内容や指導法、生徒同士の会話のサンプルなどが詳しく紹介されており、「学習会話」を育てる指導を考えるうえで大いに役立つことでしょう。


■考えをつくり上げるための有効な方法

最後に、スキル①の「考えをつくり上げる」について簡単に触れておきます。「考えをつくり上げる」は、Building up ideasの訳語です。当初、ideaにはそのまま「アイディア」という訳語をあてていましたが、日本語の場合、「アイディア」には初期の一時的なもの、思いつきというニュアンスをもつことがあります。それに対し、本書のideaは、会話を通して練り上げていくもの、プロセスを含むものとして提案されています。そこで、本書では「考え」と訳すことにしました。

「考え」には、個人的な意見だけでなく、各教科が育成する概念的理解、複雑な問題に対処する方法、出来事や作品の解釈、解決策なども含まれます。このことは、「学習会話」が、国語科のみならず、各教科における思考力・判断力・表現力の育成に役立つということを示しています。

著者は、「会話は、ただ役に立つだけでなく、学習に不可欠なものです」と述べています。日本の学習指導要領でも、学習内容の深い理解に至るためには対話的な学びを取り入れることが重要だと書いていますが、「学習会話」はその有効な方法の一つとなるにちがいありません。

学習会話は各教科の学習でどのように使えるのか、学習会話の中で生徒たちはどんな考えをつくり上げていくのかを分かりやすくするために、本書の特設サイト(https://sites.google.com/view/academicconversations/)には、本書で紹介されている学習会話のアクティビティーをまとめた索引をつけました。そこでは、本書には掲載されなかったアクティビティーを読むことができます。また、本書で多数紹介されている「問いかけ」も索引化しています。これらは、授業で学習会話を計画するときの参考資料としても活用していただければ幸いです。


■本書の提案の新しさ

授業中の話し合いを向上させる鍵は、生徒一人ひとりがもつ「会話スキル」にあると捉えた点に、本書の提案の新しさがあるといえるでしょう。会話にアプローチすることが、話し合いの学習効果を高めることにつながるのです。それが「学習会話を育む」という発想です。話し合い指導の工夫はこれまでも数多く積み重ねられてきました。しかし、話し合い学習を充実させるために生徒一人ひとりが身につけなければいけない力は何か、また、グループやペアでのやりとりを高めていくために教師がすべきことは何かという点については課題も多く、ノウハウが十分に共有されていない状況です。それらの問いに対して、本書が示す「学習会話を育む」という発想は、シンプルで明確な方向性を示すものだといえます。


◆本ブログ読者への割引情報◆


1冊(書店およびネット価格)2640円のところ、

PLC便り割引だと  1冊=2400円(送料・税込み)です。

5冊以上の注文は     1冊=2300円(送料・税込み)です。


ご希望の方は、①書名と冊数、②名前、③住所(〒)、④電話番号を 

pro.workshop@gmail.com  にお知らせください。

※ なお、送料を抑えるために割安宅配便を使っているため、到着に若干の遅れが出ることがありますので、予めご理解ください。また、本が届いたら、代金が記載してある郵便振替用紙で振り込んでください。

 

2021年10月17日日曜日

ピアノの演奏についての本が、教え方・学び方に参考になる!

 京田辺シュタイナー学校で国語を教えている吉川岳彦さんが紹介してくれた本です。

『ミスタッチを恐れるな 伸び悩みの壁を越え、演奏に生命力を取り戻す』

(ウィリアム・ウェストニー著 西田美緒子訳 ヤマハミュージックメディア)

 コントロールできるという自意識過剰な錯覚を捨てることで、もっと深い、もっと穏やかな種類のコントロールを手にする、そうすればより深く学習できるようになる。72ページ)

 私がこの本に出会ったのは、42歳で妻と娘とともにドイツに渡り、現地の大学院の試験に備えていたときだった。主専攻はシュタイナー教育のクラス担任コースであったが、修士課程ではこのほかに、副専攻を一つ必ず取らなければならない。私が選んだのは“Musik“すなわち「音楽」だった。

 副専攻の実技試験では歌とピアノ、そしてピアノ以外の楽器の演奏が課される。吹奏楽部での音楽経験はあった。しかし、ピアノは弾いたことがなかった。

 さて、渡独したのが5月、試験は6月末である。ピアノの練習はした。しかし、家探し、語学学校での勉強、娘の幼稚園の手続き、ヴィザの申請、日々の生活など、当時、たどたどしい日常会話程度のドイツ語力で悪戦苦闘する中での練習である。そもそも練習するピアノもなかった。使っていたのは36ユーロで買った「カシオトーン」である。

 結局、試験は練習不足と「落ちると後がない」というプレッシャーから、惨憺たる結果であった。不合格である。どこかで「副専攻だし、日本での教員経験を考えて、何とか採ってもらえるだろう」という甘えた考えがあったのだと思う。落ちこんでいたが、9月に再募集があるというメールが大学事務局から届いた。

 再試験のため、私は中古の電子ピアノを手にいれた。そして、ピアノの練習法について書かれた本をAmazonのサイトで探していて、この『ミスタッチを恐れるな』を見つけたのだ。

 この時期に買った本では、『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク』(ペドロ アルカンタラ著、小野ひとみ、今田 匡彦訳・春秋社)、『音楽のためのドイツ語事典』(市川 克明著・オンキョウパブリッシュ)がとても役に立った。

 また、大江千里の『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』(Kindle版)は何度も読んだ。大江千里さんは、もちろんプロだ。しかし、日本での成功を捨てて、ジャズ・ピアニストとして再出発することを47歳で決断した。それもジャズの本場アメリカ・ニューヨークで。目指す所は違うが、今までの教え方を捨てて、シュタイナー教育をドイツで学ぼうとしている自分に重ねて読んだ。

 ピアノの話に戻ろう。

 練習を始めたときは、「間違った鍵盤を弾いてはいけない」という意識が強かった。だから、いつも指をコントロールしようとしていた。当然、力んだ指はこわばり、肩はがちがちに固定されてしまっていた。身体を固めながら、同時に動かそうとするのだから、とにかく疲れるし、ぎこちない動きになる。それでも、極端にゆっくりの速度から、何度も練習を繰り返すことで、それなりに指は動くようになってきていた。日本から『ミスタッチを恐れるな』が着いたのは、それくらいの時期のことだ。

 第一にミスタッチをする。第二に「しまった!」とか、いろいろな声を出す。第三に正しい音を慎重に弾きなおす。この三つを大急ぎですませる。問題の音符がとくにややこしければ、同じことを何度も繰り返す。

 何かが修正されているだろうか? 何も。(104ページ)

 笑ってしまった。私自身、その通りのことをやっていたからだ。今、手元にあるこの本は、ほぼ半分近くのページの端が折ってあり、鉛筆で引いた線とコメントが多く書き込まれている。その中から、もう一つ紹介したい。

 理想とされる自然な方法は、ただ自分を信頼し、エネルギーの自由の流れにまかせて演奏することだ。懸命になって、音の位置をひとつずつ見つける必要はない。体にはもう、音の個々の位置と空間的な関係を独自の身体的方法によって結びつけるチャンスをたっぷり与えてきたからだ。(106ページ)

 そして、「独自の身体的方法」を見つけるための方法が「ミスタッチ」なのだ、と著者は言う。「ミス」を単なる「ミス」としてではなく、「なぜ、こういう動きになるのか?」など、興味と好奇心を持って、それを見ることが大切だ。そうすることで、「ミス」は探求の対象になるのだ、と。

 楽器の演奏に限らず、これは何かを身につける時の基本ではないだろうか? 赤ん坊が立ち上がって歩こうとするときのように。人は「間違うこと」で、自分自身も含めた「世界」を探る。そして、より深く「世界」を識り、利用することができるようになる。「ミス」を恐れて行為しないこと、行為を既知の範囲にコントロールしようとすることは、自らの可能性を閉ざすことだ。

 さて、電子ピアノの良いところは、ヘッドフォンをしてしまえば、いくら「ミス」をしても外には聞えないということだ。私は、安心して、何度も「ミス」をすることができた。実に楽しかった。音を外したって気にならなかった、むしろ、そうやって音楽に身を任せようとすることで、バッハの美しさが素人のピアノ演奏にもかかわらず、自分自身に深く、深くしみこんでくるようだった。私は、長く吹奏楽部でトロンボーンを吹いていた。しかし、これほど演奏すること、音楽そのものの楽しさを感じたことはなかった。

 9月の再試験。今回の受験者は5人。私は2番目に演奏した。もちろん緊張したが、今回は自分が緊張しているということを認識できた。

 左手3の指、最初の音はド。親指が三度でミを重ねる。右手が16分音符の上行形を二度繰り返し、曲は動き出す。私はひたすらピアノの響きを聴き続けた。

 試験後、面接官がホールから出てきた。そして、私の前に来ると、 “Wir respektieren Ihre fleißige Übungen. (我々はあなたの熱心な練習に敬意を表します)と言って、にっこり笑った。

 様々なことがあった3年間の留学後、今、私は京都でシュタイナー教師として教えている。そして、生徒たちにも「ミスタッチ」が存分にできる場を作ろうと、実践を重ねている。『ミスタッチを恐れるな』は、ピアノや楽器の演奏のコツに留まらない。教わる人、教える人、すべてにとって、大切なことが書かれている本だ。