2014年4月27日日曜日

教師の「社会人基礎力」



 前回、「学習意欲が低下する大学生」のことが紹介されました。そして、意欲を喚起できない大学教師の問題も。(その理由は、多分に「学びの原則」を踏まえない授業に原因があるということで。)状況は、小学校から高校までもほとんど変わりありません。
http://projectbetterschool.blogspot.jp/2014/04/blog-post.html

 さらには、企業をはじめ社会が求めている資質は、以下のようなものです。



 3つの能力    12の能力要素
A 前に踏み出す力
(アクション)
●主体性 (物事に進んで取り組む力)
●働きかけ (他人に働きかけ巻き込む力)
●実行力 (目的を設定し確実に行動する力)
   
B 考え抜く力
(シンキング)
●課題発見力 (現状を分析し目的や課題を明らかにする力)
●計画力 (課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力)
●創造力 (新しい価値を生み出す力)
   
C チームで働く力
(チームワーク)
●発信力 (自分の意見を分かりやすく伝える力)
●傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力)
●柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力)
●状況把握力(自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力)
●規律性(社会のルールや人との約束を守る力)
  ●ストレスコントロール力(ストレスの発生源に対応する力)

                 出典: 経済産業省「社会人基礎力」


 これら12の力で、自分自身、そして周りにいる先生たちを評価してみると、どうでしょうか? 教師のどれだけの人たちが、これらを身につけているでしょうか?
 これらの全部とまでは言わないまでも、かなりの部分が押さえられていないと、大学生や生徒たちの学習意欲を喚起することは難しいと言わざるを得ないような気がするのです。(もちろん、教える内容についての知識があることは言うまでもありません。)

 企業をはじめ社会はこれらの「社会人基礎力」をもった人材を公教育や大学が輩出してくれることを期待しているわけですが、いまの学校や大学教育で、これらを身につけられるのはいったいどこだと先生たちは捉えているのでしょうか?

 授業の中でないことは確かのようです。あまりにも、知識を覚えることで忙しくて(というか、教師が教科書ないし扱うべき内容を押さえるので忙しくて)。

 企業が、体育会系の学生を優先して採用するのも無理はない気がしてしまいます。

 でも、本当にそんな状態が続いていいのでしょうか? 授業で社会人基礎力を無視(ないし軽視)したままで?

 先週、出版された『読書家の時間』の授業法は、授業の中でこれら社会人基礎力のすべてが身につく教え方・学び方です。それは、教師主導の一斉授業/講義(生徒や学生たちは「後部座席」ないし「観客」)から、生徒や学生たちが「運転席」に座った教え方・学び方に転換しているからです。いままでの読解教育のように教科書会社が決めた「良書」を題材にして、すでに解釈が決まっていることを教師が教え込むような教え方ではなく、生徒たちが「自分にあった本」を選ぶことから始まります。選書できる能力こそが「読む力」の核(作文教育の場合は、教師から与えられたテーマについて書くのではなく、自分で書く題材を決められ、そして出版までもっていける力)であるはずなのですが、日本の読解教育・読書教育からは無視され続けています。従って、主体的、自立的、協力的に読む方向にはいきません。

 本当の読む力がつくだけでなく、社会人基礎力やEQやライフスキルまでも同時に身についてしまう教え方・学び方を、ぜひ参考にしていただければと思います。★これは、国語教育だけでなく、他の教科にはもちろん、教員研修や学校運営などに使える方法です。


★ 教師も、教えている間に、これらの力やスキルを身につけることができるのです。与えられた教科書をカバーするような教え方ではなく、主役である生徒たちに寄り添う形での教え方が求められますから、自ずと考え、そして行動することが求められます。教科書というのは、関わる人みんなにとっての「思考停止」の媒体といって間違いないような気がします。すべて「正解尽くめ」ですから、できることといったら考えることではなく、暗記することです!

2014年4月20日日曜日

大学の教育


読売新聞418日付で「大学の実力・現場を歩く」という連載に、「新入生の意欲喚起」というタイトルで立教大学の取組事例が紹介されていました。一泊二日の新入生歓迎キャンプで、ゲームや学部長との握手など、様々な企画が用意されているそうです。これによって、学生たちの大学生活に向かう気持ちを高めるねらいがあるとのことです。

 今どきの大学生はここまでしてやらなければならないのかと思われる方もいるようですが、時代は変わってきているようです。

 

 私の勤務する大学でも、20人程度のセミナークラスが必修授業として用意されています。毎週1回は学生とセミナー担任が顔を合わせることで、中途退学者の数を減らそうというねらいがあります。アルバイトにウエイトを置きすぎて、大学に来る日数が徐々に減ってしまう学生や、入学したものの自分が求めていたものと異なる学習内容に意欲が湧かずに欠席日数が増えていく学生など、いろいろなケースがあります。

 

この一年間、いろいろなタイプの学生に関わっていったなかで、次のようなことを感じています。学生同士が互いに刺激し合って、高め合っていくことが望ましいのでしょうが、教師がサポートしていくことも現状では必要な方策だと思います。オンライン学習などが今後本格的に運用されていく時代において、リアルな対面授業を主とする大学での学びというものがどうあるべきなのか、あまりにも数が多くなりすぎてしまった大学の存在意義を検討することも含めて考えていくことが求められています。

 

大学は研究機関でもあり、教育機関でもあるわけですが、どちらかと言えば「教育」の部分がこれまでは弱かったわけで、今後「講義」のあり方も根本的にPLCの考え方を取り入れたものに転換する必要があります。

2014年4月13日日曜日

教科書をこなすだけの授業からの脱却


ここ数週の「PLCだより」では、パートナーから年度末・年度始めということで、「学校経営方針」、「学びのリーダー」が取り上げられました。

 

私も中学校長の時代には、毎年この作業は悩みでもあり、楽しみでもありました。

もちろん、校長一人が勝手に計画を作り上げてもだれも見向きもしませんし、この計画・方針の策定には多くの職員が係わっていく(係わらせていく)ことが大切です。

 

中学校ならば生徒たちも立派に自校の問題点に気づく力を持っています。子どもたちを対象に「こんな学校にしたい」というアンケート調査をやってもいいと思います。中には、「階段を上がるのが大変なのでエレベーターがあるといい」のような意見を出してくる生徒もいますが、「図書館の本が古すぎるので新しい本を入れてほしい」というよう建設的な意見もたくさん出てきます。また、学校周辺の住民の声も取り入れることができることもできます。


要するに、校長が校長室で一人作成した「学校経営方針」ではなく、可能な限り学校に関係する人たちの意見・アイデアを取り入れて作った「経営方針」が本当に活きて働くということです。

 

現在勤めている大学では、自分が「経営方針」を作る場面はありませんが、学生たちに「今年の目標」を立てるように働きかけています。大学生なのだから自分で目標を作るのが当たり前なのですが、その当たり前がなかなかできません。

「自己管理能力」とよく言いますが、これが身についていないまま大学に入ってくる学生が増えています。小中学校の学習指導要領の特別活動の目標などで、「自己管理能力」の指導が強調されていますが、まさに義務教育レベルでさらに力を入れる必要がありそうです。

 

教科の指導でも特別活動の指導でも、肝心なことは「単に教科書や指導計画に書かれたことをそのとおりやる(いわゆるカバーすること)」のではないということです。そのためには、目の前にいる子どもたちの実態から出発した授業が求められるということです。

 

2014年4月6日日曜日

あなたは「学びのリーダー」ですか?



年度のはじめなので・・・

「学びのリーダー」としての自分を自己採点すると何点ぐらいつけられますか?
       点
次に、この質問を尋ねられる2~3人の教職員に聞いてみてください。
(外交辞令でなく、本音で点数を言ってくれる人に!)
       点          点          点

なぜ、自己評価だけでなく、他者の採点も必要かというと、かなりのズレがあるからです。
以前、職員会議の良し悪しを、校長と教職員に評価してもらったことがあります。
その結果は、校長たちはほとんど70点以上を付けましたが、教職員はよくて30点。ほとんどは、0~15点でした。
これほどのギャップがあり続けるということは、組織として大きな問題なのですが、そのことに気づいている管理職はとても少ない現状があります。
従って、自己評価としての「学びのリーダー」も似たような問題を抱えている可能性は大だからです。

あなたの点数と2~3人の教員の点数がほぼ一致していれば、何の問題もありません。(ほんとかな? もちろん、さらによくなれる可能性はいくらでもあります!)
しかし、ズレていた場合はどうするか? (教員の方が点数を高めにすることはあり得ませんから、教員の評価が低い場合はどうするか、です。)

以下のような可能性があります。ぜひ一つか二つから取り組んでください。
(読者が、校長でない場合は、そっと以下の資料を校長の目が届くようなところに置いてください。)
★もちろん、校長だけが「学びのリーダー」になる必要はありません。誰からスタートしてもOKです。校長がバックアップしてくれたら、よりスムーズに進むというだけで。ですから、上の自己評価も、他者評価も、そして下のアイディアもぜひ実践してください。★

学びのリーダーとして(校長が)できること:

たとえば、
・ほとんど意味のない自分の会議でなく、教員が参加する研修に一緒に出席させてもらい、一緒に学び続ける(事後フォロー/サポートをするために)。
・校内で、いい教育書を扱ったブッククラブをスタートする。
・ネット・サーフィンして、教育関連のおもしろい情報を絶えず集め、それを教職員に提供し続ける(押し付けがましくない方法で。しかも、情報は日本語よりも英語の方が格段に得られます。従って、本気でこれがやりたいなら、英語で情報収集し、日本語にして情報提供していくことが求められます!)
・常に教育書を読み続け、いいものについては、その内容を紹介したり、上記のブッククラブを校内でしたりすることにつなげる。メールの書くときの書名には、名前や所属以外に、「いま読んでいる本は、  」という項目を設けて(これは実際に読んでいる本毎に、切り替える!)、自分が常に読んでいること/学び続けていることを発信する。
・学校のサイトに「教職員の学びコーナー」的なものを設けて、自分を含めて、大人の学びをドンドン書き込めるようにする。(理想は、保護者や地域の人にも参加してもらうこと!)
・「教育情報探偵」になる。教職員が教育情報を探している時に、率先して探してあげる役割を担う。このプロセスで一番得をするのは、探す人。
・可能なら、授業をする(させてもらう)。教えることが、一番よく学べる方法!! そして、やりっぱなしに終わらせずに、上記の学校のサイトの「教職員の学びコーナー」にしたことや振り返りを書く。
・アンケートやインタビューの形で自分や学校のことについて教職員や保護者からフィードバックをしてもらい(情報を集め)、それを自分の学びや学校改善につなげ続ける。

     <メルマガからのつづき>

大切な原則として押さえるべき点は、 

・何よりも自分がすることは楽しむ ~ 誰も億劫がっていることはやりたくありませんから。
・自分が教職員にしてもらいたいことは、自分が率先してモデルで示す ~ 「あれをしなさい。これをしなさい」と言える人は多いが、実際に行われているところを見ないと、やれる人は少ない!! 
・小さい成功を大切に ~ 最初から大きいことは期待せずに、小さな成功を積み上げていく!
・地点Aから地点Bに移行する ~ それが自分であっても、誰か特定の教職員であっても、「いまいるところ」と「行きたいところ」をはっきりさせた上で、そのギャップを埋めるために必要なことをする! 
・対象は絞って ~ 不特定多数を対象にするのではなく、一人から数人を限定して設定してアプローチする → 上の「小さな成功を積み上げる」と同じ
・情報を共有、共有、共有する ~ あまりにも流通している情報量が少なすぎるのが学校教育の大きな問題。従って、同じことを毎年繰り返さざるを得ない状態にある。同じことをし続けることは、何も成長していない証! 
・自分がまずは挑戦しているところを見せる ~ 試すことは恐れる必要のないことをモデルで示す!
・圧力でやらせるよりも、サポートこそを大切に ~ これまでは、あまりにも「やらされ感」が充満しているアプローチが多すぎた。これからは、サポートこそを重視したアプローチへの転換が大切! どのレベルでも(子ども対象の授業でも)、学びの主役は誰なのかをわきまえて。 教えることじゃなく、モデルを示し、サポートすること! 
・学ぶこと(授業も、学校も)のベースは、人間関係であることを忘れない!!  
 
参考: “What Does It Mean to be the Lead Learner?” 
    “10 Ideas To Move Innovation Forward
    『「考える力」はこうしてつける』新評論