2019年6月30日日曜日

多忙な現場を敬遠

先月、文部科学省が2018年度の全国の公立小学校の教員採用試験の倍率が3.2倍で過去最低になったことを公表しました。510日付の毎日新聞の記事によると、その原因について次の3点が主な要因であると紹介しています。

・「団塊ジュニア」世代の小学校入学に備えて80年代に大量採用した教員が退職期を迎えていることによる小学校教員採用の増加
・民間企業の採用が活発化していること
・小学校教員の免許取得のカリキュラムを組む大学が限られていること

 この分析に対して、帝京科学大学の剱持教授は「学校現場が『ブラック』だと知られてきた影響ではないか」と指摘しています。さらにこうも付け加えています。
「働き方改革を進め、処遇の改善を図ると同時に、若手が教員の魅力を新卒に伝えられるようにしなければ、倍率は今後も低下するだろう」

 この記事の最後の部分で、働き方改革と処遇の改善は政治や行政にお願いするとして、後半の「教員の魅力」はぜひ多くの現場の教師のみなさんに考えていただきたいことです。
それでは、その魅力をどのようにして伝えていけばよいのでしょうか。

★授業に熱中する
「コンプライアンス=従順さ」ばかりが要求される学校では面白くない、わくわくしないのです。教師だってそうですから、子どもはなおさらです。
それを学ぶことは面白いことばかりではないなどと分かったようなことを言う人もいますが、基本は本物の学びなら面白いはずです。今まで、考えもしなかったことに気づかされたり、そんなこともあるのかという驚きや発見、そんな場面に出会ったりしたら、わくわくしないはずがありません。そんな授業をつくるのが教師の仕事の中心のはずです。そのために、できることはなんでもやる。ネットワークを利用して、多くの人の知恵を集める。何といっても、今はSNSの時代です。このような取組を続けていくことが新卒の教師に「教師の魅力」を伝えることになると思います。

★「選ぶやってみる振り返る」
 最近、大学での自分の授業や時折参観する小学校での授業などを見るにつけ、「選べる」ことの大切さに気付かされます。
『教育のプロが進める選択する学び』(マイク・エンダーソン/新評論2019)28ページに次のような一節があります。

学習する際に選択肢を提供された生徒は、より高いレベルで学習に取り組めるという理由がいくつか明らかになっています。一つには、生徒がより楽しんで取り組むときには、彼らの脳は円滑に学んでいることをよりよく処理することができますし、それをより効率的に、長期間にわたって記憶できるようになります。

つまり、選択肢を与えることによって、児童生徒はより深く豊かな学びに取り組むことができるというわけです。当然、これまで以上に課題に集中して取り組むこともできるようになるわけです。全員に同じ課題を与えて、指導計画に定められた学習内容を「教科書」というたった一つの資料だけに依拠して「カバーする」授業を続けていては21世紀の学びは実現しないということです。

★学び続ける
やはり何と言っても、自分自身が学び続けることが大切です。そのために、本を読むことは避けて通れません。もし、一人で読み続けることが難しいならば、ぜひ何人かのグループでブック・クラブ形式によって行うと案外続けられるものです。一人では途中で挫折しそうな本もこれなら続けられたという経験は私自身何度もありました。
 また、少人数でもよいですから、共に学ぶグループ・仲間がいると良いと思います。私も中学校の現場を離れて6年たちますが、今でも少人数の勉強会を月に1回のペースで行っています。話し合いの中身は、それぞれが持ち寄った実践事例などですが、一人では気づけない別な角度からの「ものの見方」を教えてくれる貴重な機会になっています。

一人ではできないことも仲間の助けがあれば続けられるでしょうし、一人では気づかない新たな視点からのものの見方にたどり着くこともできます。気の合う仲間を自分の近くで探して、まず話し合う機会をつくりましょう。そこが、学校改善と自己変革の第一歩です。

2019年6月23日日曜日

「選択する学び」のバリエーション


 2週前に『教育のプロがすすめる選択する学び』を紹介しました。今回は、自分自身の「選択する学び」の歴史を振り返ってみました。そこから、自分自身が長年にわたって著者と同じく、「選択する学び」の信奉者(?)であったことが分かりました。

まず、この本の中でも繰り返し(vページや8ページなどで)登場する
1 リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップ
  https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/teachers/osusume (現在は、これらの算数・数学、理科、社会科版を応用/開発中です!)
2 一人ひとりをいかす教え方(『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』と『一人ひとりをいかす評価』)
3 探究学習(『たった一つを変えるだけ』や『PBL――学びの可能性をひらく授業づくり』)
の3つは確実に挙げられます。1と3は、ある意味で同じとも言えます。その核には、サイクルを回すこと、自立した学び手になることがあります。そして、生徒たちは一律ではないので、常に多様性を前提に対応することを考えると2も切り離せなくなります。
そして、他にも次のようなものを紹介してきました。

4 リーディングとライティング・ワークショップの「聞く・話す」版として捉えられるウェブ討論(『最高の授業』)
5 一斉授業を中心に据えた教え方に代わる、学びの責任を生徒に移行していく教え方・学び方(『「学びの責任」は誰にあるのか』およびリーディングとライティング・ワークショップ関連の本はすべて)
6 教師が出す宿題から、生徒が主体的に取り組む家庭学習(『宿題をハックする』)
7 マルチ能力と学び方のタイプ(『マルチ能力が育む子どもの生きる力』、思考の6段階(『「考える力」はこうしてつける』と『シンプルな方法で学校は変わる』)
8 理解や読みの方法(『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』の76~80ページ、『「読む力」はこうしてつける』、『理解するってどういうこと?』)
9 教師の言葉遣い(『言葉を選ぶ、授業が変わる!』と『オープニングマインド』)
10 従来の読み聞かせ以外の3つの効果的な読み聞かせの方法の紹介(『読み聞かせは魔法!』)
11 算数・数学を嫌いにしてしまい、数学的思考も身につかない教え方から、算数・数学を好きになり、かつ数学的思考も身につく教え方への移行を可能にする『算数・数学はアートだ!』と『教科書では学べない数学的思考』
12 読み物教材に代わるアクティブ・ラーニングの道徳の教え方・学び方(『人間関係を豊かにする授業実践プラン50
13 評価の仕方(『テストだけでは測れない!』、『一人ひとりをいかす評価』『成績をハックする』)
14  効果的とは言い難い教員研修に多様な選択肢を提供する『「学び」で組織は成長する』、『シンプルな方法で学校は変わる』、『効果10倍の教える技術』
15  学校や学びのリーダーのあり方や方法を提示している『校長先生という仕事』『エンパワーメントの鍵』『教育のプロがすすめるイノベーション(仮題・7月出版予定)』
16  効果的・効率的とは言えない職員会議やコミュニケーションを、(いろいろな意味で)やって得する会議や話して/聞いて得するコミュニケーションに転換する『会議の技法』と『好奇心のパワー』
17  多様ないい学校や授業のつくり方を紹介している『いい学校の選び方』
18 授業で中・高生が(からだもこころも!)動かないというのは学びの質と量を最低限に押さえているようなものです(小学生も同じですが)! こころとからだを学びにいかすための方法としての『ドラマ・スキル』
19 学びが得られているとは言い難いPTAに、学びを中心に据えた参加者主体の活動のあり方を紹介している『ペアレント・プロジェクト』(この本には、教員研修を含めた大人を対象にした「学びの原則」的なものも書かれています!)
20 主にはテストや入試によって固定マインドセットが染み付いている日本の教育界に、より大切なマインドセットである成長(ダイナミック)マインドセットの身につけ方を紹介している『オープニングマインド』と『親のためのマインドセット入門(仮題・9月出版予定)
21  従来の国際理解教育に代わる開発教育(いまのESD)、過去志向の人権や平和教育に代わる未来志向の人権・平和教育、公害教育やアウトドア教育に代わる教科と連動した環境教育(http://eric-net.org/about-eric01.html)なども紹介してきました。

これらの核には、すべて「選択をする学び」が据えられています。ぜひ、『教育のプロがすすめる選択する学び』と一緒に、ご自分の関心分野の情報をお読みいただければ幸いです。

2019年6月15日土曜日

なんのための算数・数学? 覚えるから美しさへ、「算数・数学をアートする」こと



先日、内田樹さんのブログに「外国語教育について」★という、刺激的かつ、示唆的なエントリーがありました。なんのために外国語を学ぶのか。外国語を学ぶということは、その国の文化やあこがれを学ぶためで、外国語そのものは言語的な道具でしかないことを説かれています。あこがれの英米文化をのぞいてみたく、ビートルズの曲の意味を知りたい、英米文学を読みたいと英語を学習していた。しかしこれは、1960年代での話。今は、英語圏は世界語として、個々人がよりいい就職を人よりいい地位を獲得するためのキャリアパスの道具となってしまい、生活を豊かにするための経済指標の言語になりさがってしまっています。

これと同じ事が、今の日本の算数・数学についても起こっています。

算数・数学とは、できるだけ多くの公式・やり方を覚えて、できるだけ素早く、いつでも使えるようにするもの(多くの公式は生活の中ではほぼ使われないものと誰もが知っているにもかかわらず!)。それは受験のための準備学習に利用され、さらに悪いことに、算数・数学のそのテストや成績によってその後の就職や採用のパスポートとしても使われてしまっています。このような算数・数学の現状にあなたはわくわくしていますか? なによりも生徒たちはわくわくして学んでいますか? これでは、学習者の好奇心を失わせ、算数・数学の世界に潜んでいるパターンや美しさを見つけ出そうとする意欲をそごうとしていることにしかみえません。

それではなんのために算数・数学を学ぶのでしょうか? その本質とはなんなのでしょうか? 感動した映画を観るように、コンサートに行って音楽にうっとりするように、算数・数学には芸術のような美しさがあります。それは、算数・数学がアートだからです。その美しさのパターンを見つけることにもあります。

“走る前に歩けるようにならないといけないですよね。ちがう。あなたが走って行きたくなる何かが必要なんです。”ポール・ロックハート『算数・数学はアートだ』P60より★★

子どもが走り出そうとするときは、どんなときでしょうか? 歩けるようになったから、その次のステップとして走り出すようになるのでしょうか? もちろん、走るためには、その基本的な技術である歩く練習が必要です。しかし、ちがいます。子どもたちは、走る楽しさやその先にある観たい世界やあこがれがあるからではないでしょうか? そこではじめて、走り出したい気持ちに駆られるのではないでしょうか? それを味わうことなくしては、走ることに全く意味はありません。では、算数・数学では、走り出したくなるような、わくわくした喜びや楽しみを、味わわせていますか?

学校で学ぶ算数・数学では、基礎・基本を徹底して学習します。まるで歩き方を徹底して教えるかのように。系統的に仕組まれた教科書を使うことで、あたかも算数・数学の世界を理解させてくれるような錯覚に陥ります。算数・数学だけは、どうもすべてのカリキュラムが系統的に完成されているように理解されていると誤解されています。しかし、未だに、新しい発見や証明が提出されているのも事実であり、まだ途中のプロセスの中にあります。

例えば、図工や美術の授業を想像してください。絵の具の使い方、筆の使い方、順番に色塗りをしていけば一見、「美しい絵」が仕上げられます。しかし、教師により一方的に指示されて定型で仕上がった作品になんの意味があるのでしょうか? また、真っ白なキャンバスに自由に絵を書けるのはいつ来るのでしょうか? あれもこれも教えることで、そこには、楽しむプロセスや創造的なプロセスが抜け落ちてしまっています。

現状の算数・数学を全て否定しているわけではありません。身につけることと、その本質である美しさや楽しさを学ぶバランスを失ってしまっていることを指摘しているんです。純粋に算数・数学を楽しむ時間を、平行してもつのはいかがですか? 現在、「数学者の時間」として、作家の時間、読書家の時間に続き、試行錯誤している教師たちのプロジェクトが進んでいます。そこでは、単元末の発展的な学習として、算数をアートすること。または、通常の算数・数学の時間と平行して、年間通して算数・数学の楽しさに触れられる時間を進めています。

最近では、円と三角形を使った算数アートをする時間がありました。自分のオリジナルコンパスをつくりながら、円の性質について試行錯誤を通して理解していく。さらに、その道具を使いながら、円と三角形のサーと作品をつくってみる。子どもたちは驚くほど集中してものづくりにはげみます。そこに描かれているのは、自分だけのオリジナルな算数・数学の世界が展開されているからです。いつもは算数が苦手な子どももこのときばかりは夢中になります。

このような取り組みは、単元末のわずかな時間をテストで点を稼ぐための習熟の時間にあててしまうことよりも、算数数学好きや、その世界への好奇心をずっと育てられると思いませんか? 「できる」ためを目指した算数・数学は、その学問的視野を狭め、先にある広大は景色をせばめてしまいます。難問に「うーん」と脳みそに汗をかいて、もがきながら考え続ける。そういうすぐには解けない問題だからこそ、楽しみながら、その算数・数学の世界のもつパターンを発見したとき、その美しさに魅了され、考えることに向き合い続ける力が育っていくのではないでしょうか?

PLC便りには、教科書では学べない「数学的思考」についても連載してきました。
・算数・数学がキライな人にすすめたい「考える楽しさ」をあじわえる1冊
https://projectbetterschool.blogspot.com/2019/02/blog-post_9.html

・数学的思考はたった二つ。それは、試す「特殊化」と確かめる「一般化」
https://projectbetterschool.blogspot.com/2019/03/blog-post_10.html

・一律同時の問題解決型算数授業はまぼろし!? 数学的予想を考える
https://projectbetterschool.blogspot.com/2019/04/blog-post_14.html


このような試行錯誤が、カチコチに固まってしまった算数・数学への誤解に、風穴を開けてくれるはずです。算数・数学をアートしたり、数学的思考を高めたりするための授業実践している方がいらしたら、pro.workshop@gmail.comまで、ぜひ教えてください。




内田樹「外国語教育」
http://blog.tatsuru.com/2019/05/31_0824.html

★★
ポールロックハート著・吉田新一郎訳『算数・数学はアートだ!』
算数・数学の固まった物の見方を変えるためにも、おすすめの一冊です。算数・数学への私たちのカチコチなうがった世界観を一歩、外から眺める視座をあたえてくれるはずです。覚える・できる算数から、アートする算数へバランスをとってみませんか?

あとがきに “何が解決をもたらすのか、自分自身で学ぶしかありません。そのことは、本のなかでかなりはっきりかいたつもりですが…P169”とあります。私たちには、まだ自分の頭で考えて、教育をよりよくしていこうとするチャンスは残されているはずです。思考停止してしまったら悪行の数々を代々と引き受けることとなってしまいます。私たちにできることはなんですか?

2019年6月9日日曜日

新刊案内『教育のプロがすすめる選択する学び』


学校を卒業する生徒たちには、自発性、創造性、自立性、忍耐力などを身につけた社会人となることが期待されていますが、それらは授業を通してどれほど実現できているでしょうか? この問いに対して、著者のエンダーソン氏は次のように言い切っています。
「これらは画一性と従順さを基調にしたような環境では決して身につけることのできない資質です。彼らが学ぶ際により多くの選択できる機会をもっていれば、自分にあった学び方で、より熱中して取り組むことが可能となります。その過程で彼らは、生涯にわたって学び続ける学習者に必要とされるスキルと習慣を身につけることができるのです」(viiページ)。

 退屈している生徒、苛立っている生徒、学力が伸びない生徒を助けたいと思っている教師は少なくありませんが、そうした切実な問題を克服するための情報は提供されているでしょうか? 残念ながら我が国においてはあまり提供されているとは言い難い状況が続いていますが、エンダーソン氏は「今日のような教育環境のなかでこそ(日米ともに、テストに追われる状況があります!)、これまで以上に『生徒(学習者)が選択する学び』には意味があり、大事だと私は主張します・・・・ほとんどの生徒が、これまで以上に多様で複雑なニーズと能力をもって学校にやって来ています。彼らは異なるからこそ、一人ひとりにとって意味のある形でスキルや学習内容を身につけたり、学んだりするチャンスを必要としているのです」(3ページ)とも書いています。
 本書の結びで著者は、「いろいろな意味で、私は選択肢を提供することが、生徒たちを真の学び手として成長するための助けとなるもっとも重要な方法と位置づけています。ここでいう真の学び手とは、自分の学びに責任をもち、学び手としての自らを理解し、そして取り組むことに個人的な関連やチャレンジ、そして楽しみを見いだす必要についてわかっている人のことです。生徒たちをエンパワーし(力づけ)、彼らが学び方について学ぶことをサポートし、意味のあるキャリアを見いだし、残りの人生を通して成長と学び続けることを楽しめる人々を育てるために、私たちは助けることができるのです」(306ページ)とまとめていますが、まったくその通りだと思います。

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2019年6月2日日曜日

ラーニング・コミュニティ:仲間とともに成長する授業づくり


私が大学で担当しているSpeech Communicationという授業は、2つのセッションに分かれている。前半がスピーチ・セッション。ここでは、即興スピーチやプリペアード・スピーチ(事前に準備をしてくるスピーチ)、お互いのスピーチに対する論評などを、学生が進行役を務め、進める。後半は、カンファレンス・セッション。1名のプリペアード・スピーカーに1−2名の仲間がメンターとして寄り添う。クラス全員から寄せられる評価メモ(付箋紙)を使いながら、その日のスピーチについて、じっくりと語り合う。(注)

開講から一ヶ月くらいが経つと、変化が見えてくる。もちろん、回数を重ねることによる、慣れもあるが、それだけでは説明しきれない成長ぶりが見られる。堂々とした話ぶりはもちろん、声の大きさ、表情などが変わり始める。内容やストーリーも、面白い、聞き応えのあるものになっていく。

そして、最もうれしいのが、クラスがとても仲が良くなることだ(余談だが、ほぼ毎年、カップルも誕生している)。学び合いのコミュニティー(Learning Community)が生まれているのだと思う。

最初は、この話し合いは、あまりうまくいかなかった。お互いに感想を言い合うだけで、あとはおしゃべりの時間となっていたようだった。

学生同士によるカンファレンス・セッションが機能し始めたのは、メンターとして実現してほしいことを、ミニ・レッスンとして教え始めてからだと思う。ミニ・レッスンとして提示するのは、以下の10項目だ:

Top 10 Qualities of a Good Mentor
(良いメンターの10つの性質)
1. Willingness to share skills, knowledge, and expertise.
(スキル、知識、専門性を快くシェアしあう)
2. Demonstrates a positive attitude and acts as a positive role model.
(ポジティブな態度を示す。ポジティブなロールモデルとして行動する)
3. Takes a personal interest in the mentoring relationship.
(メンティーに関心を持つ)
4. Exhibits enthusiasm in the field.
(熱意を示す)
5. Values ongoing learning and growth in the field.
(成長や変容を評価する)
6. Provides guidance and constructive feedback.
(相手の成長につながるフィードバックを返す)
7. Respected by colleagues and employees in all levels of the organization.
(あらゆる人から尊敬される)
8. Sets and meets ongoing personal and professional goals.
(目標管理ができる)
9. Values the opinions and initiatives of others.
(他者の意見や行動を評価する)
10.Motivates others by setting a good example.
(良い例を示して、やる気を引き出す)

心がけていることが3つある。

1)この10項目を説明する時は、あまり時間をかけずに、簡潔に説明すること。
2)授業の中で、少しづつ自力で実現していってほしいということ。
3)これらの項目が、授業の中で実現されるを見つけた時は、教員によるフィードバック・セッションで必ず言及して、繰り返し価値付けをすること。

もちろん、全てが完璧にうまく機能しているわけではない。しかし、学生たちのSpeakers' Notebook(題材を集めたり、下書きをしたり、振り返りを書くノート)を読むと、意見交換をしたり、激励したり、アドバイスをしあうことで、お互いが成長できているという実感が読み取れる。お互いの成長を祝福しあっているように感じられるのだ。

今週、提出された FくんのSpeaker' Notebookにはこうある:
「今日、他の人のスピーチを聞いていたら、面白いスピーチというのは、文法や語彙や発音はそこまで関係なくて、情熱がこもっていたり、好きなことについて話しているのだということに改めて気づいた。」   

学びのコミュニティーは、こういった気づきを、皆で積み上げていくことで、生まれていくのだろうと思った。

(注)この授業は、英語のスピーキングの授業であるが、ライティング・ワークショップを応用する形で展開している。

<参考>
Top 10 Qualities of a Good Mentor
https://franchisegrowthpartners.com/top-10-qualities-of-a-good-mentor/