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2015年9月27日日曜日

「たった一つを変えるだけ」


今回は最近出版された「たった一つを変えるだけ」(ダン・ロスステイン、ルース・サンタナ/訳・吉田新一郎・新評論2015)を取り上げます。

私は中学校教員を30数年やりましたが、ここ15年くらい前から「エッセンシャル・クエスチョン」を研究対象の一つにしてから、「問い」の重要性について考えてきました。その問いの大切さについてこれほどわかりやすく、また具体的にその進め方について語ってくれた本はないと思います。

同書10ページの「質問づくり」には次のように述べられています。

 質問づくりは、過去20年間にわたって慎重に開発され、試され、簡素化され、改善されてきました。その手順は、以下の7つの段階に分けられます。

①「質問の焦点」は教師によって考えられ、生徒たちがつくり出す質問の出発点となる。

②単純な四つのルールが紹介される。

③生徒たちが質問をつくり出す。

④生徒たちが「閉じた質問」と「開いた質問」を書き換える。

⑤生徒たちが優先順位の高い質問を選択する。

⑥優先順位の高い質問を使って、教師と生徒が次にすることを計画する。

⑦ここまでしたことを生徒たちが振り返る-----学んだことは何か? どのようにして学んだか? 学んだことをどのように応用できそうかなど。

 
   この④の「閉じた質問」「開いた質問」の視点は大切ですね。私も中学校で理科を教えていたころは、気が付くと「閉じた質問」ばかりで授業を進めていたことを思い出します。これでは、教師と生徒の一対一のやり取りだけで終始してしまい、深まりのある授業はできません。「閉じた質問」を「開いた質問」に変えていくことで、生徒はよりよく学べるものと思います。それから、質問を考えた後に、その中から、優先順位の高いものを選び出すという活動も重要です。様々な情報の中から、大切なものを選び出すことは、これからの社会で生きていくために必要なスキルの一つであることは間違いないでしょう。そのような力を育てていくことは学校の授業の大切な役割の一つであると思います。

    ⑥もまた重要ですね。これから学習する内容をここで、教師が生徒とともに、決めていく。これなら「学習意欲が低い」というような課題は出てくるはずがありません。むしろ、子どもたちが進んでやりたくなるような活動を計画することができるわけです。
   
 ⑦最後に、「振り返り」です。これによって、さらにこの学習を深化させることができます。

 本当に、この「たった一つを変えるだけ」が多くの教室で実行されるならば、今の教育は間違いなく変わるものと思います。近年、大都市近郊では、小中学校に若い先生方がたくさん採用されています。この先生たちが、「教師からの問いかけ」を中心とした従来の授業のやり方を真似るのではなく、「子どもからの問い」を大切にする授業にするだけでも、この国の教育が変わっていくものと思います。「たった一つを変えるだけ」をぜひ多くの若い教師に読んでもらいたいですね。

 

 

 

2016年6月12日日曜日

21世紀の教育で大切な「創造力」


教師のほとんどは、20世紀に教育を受けてきた人たちです。その中に、「創造力」という概念は含まれていませんでした。(20代の先生たちは、21世紀の最初の十年の教育を受けていますが、残念ながらいまだに教育は20世紀、いやひょっとしたら19世紀の教育を引きずったままです。それは、正解主義や権威主義に代表されるものです。★)
それらに対して、21世紀の教育の柱(キーワード)の一つとしてあげられているのが「創造力」です。
 このことは、『たった一つを変えるだけ』の訳者まえがき(特に、vページやviiページ)で紹介しましたし、このプログでも繰り返し紹介してきました

 いま訳している本★★の中にも創造力が当たり前のように登場します。

 しかし、創造力を言葉として知っていることと、それを子どもたちが身につけられるレベルで理解し、かつ授業で実践できることとはまったく別物です。(このことも含めて、『たった一つを変えるだけ』や『算数・数学はアートだ!』は訳しました!)

 私たちは、創造力を言葉として認識できるだけでは、何の意味もなく、具体的に子どもたちが身につけられるレベルで理解し、かつ日々の実践に結び付けていく必要があります。なので、さらに創造力関連の本や資料を読み漁り始めました。

 最初に見つけたものの一つが、上記の『たった一つを変えるだけ』の29ページで紹介しているSuccessful Intelligenceでした。この本を潮出版は『知能革命』と訳して(違和感をもってしまうタイトル!)、すでに1998年に出版されていました。著者のロバート・スタンバーグは、人が成功するために必要な能力を分析力、創造力、実践力の3つであるとして詳しく紹介してくれています。簡単に言うと、分析力は問題解決に、創造力は解決すべき問題の決定に、実践力は効果的に解決を導き出すのに用いられる」(194ページ)としています。

 この本の中で、創造力について紹介に値すると思ったのは、次の2つのリストです。

一つひとつの項目を、ぜひじっくり味わってください。金曜日の「RW&WW便り」にも書いたように、大切なことは教師があるべき姿をモデルとして示し続けることこそが最大の教育的効果を生みます。(モデルを示さずに、ただ言うだけだったりしたら、何もしない方がいいかもしれません。)次に大切なのは、こういう特質を使わざるを得ない授業を組み立てることです。★★★それは、教科書をカバーする授業でないことは確かです。


●あなたは、これらの中でどれが特に大切だと思いましたか? ~ どちらもすべてなのですが・・・、私が特に大切だと思うのは、「創造的な人の特質」では、1と2と6です。「自分を活性させる20箇条」では、15~20です。
●これまでの管理職や先輩で、これらの多くをモデルで示してくれていた人を思いだせますか?
●あなたは、これらの中のどれは、すでにやれていますか?
●今後数か月取り組んでみたいのはどれですか? 一つか、二つを選んで(「16.選択ができる ~ 一度に、あまりにも多くに手を広げることもなく、あまりにも少しのことしか手がけないこともない」を参考にして)、ぜひ身についていないものを補い続けてください! ~ 私は、「創造的な人の特質」の3番目から取り組みます。


★ あとで紹介する『知能革命』の196ページには、「学校というものは、のちの人生で重きをなさない能力を評価するきらいがある。その結果、生徒の目標を追求する気持ちを失わせてしまう」と書かれています。私たちは、学校という場で何をしているのかにもっと気をつける必要があり、そして改める必要もあります。
★★ 一人ひとり能力も、興味関心も、学習履歴も異なる子どもたちをいったいどう教えたらいいのか、という本です。
★★★ 具体的には、たとえばこんな形で、です。



2015年12月27日日曜日

ルネサンスの学習者

 『理解するってどういうこと?』の206ページ(第6章) と 『たった一つを変えるだけ』  

 おかげさまで『たった一つを変えるだけ』の売れ行きは好調です。
 発売以来ずっと、アマゾンの「学校教育一般関連書籍 売れ筋ランキング」のベスト3を維持しているそうです。(タイトルに惑わされて購入してくれているのでしょうか?)

 先週、『理解するってどういうこと?』も重版になるというので、修正の必要な箇所を直すために読み直しました。改めて、これほど中身の濃い教育書にはなかなかお目にかかれないと思いながら読みました。

 この本にはあまりにもたくさんのハイライトというか得るものがあるのですが、その中から一つ紹介します。
 第6章のタイトルは「理解のルネサンス」で、206ページには「ルネンサンス的思考を促進する教室」の特徴がまとめられています。(下の表)
 
 そうなんです、これのかなりの部分は『たった一つを変えるだけ』で紹介している内容とオーバーラップするのです。

 あと4日で2015年も終わりです。

 2016年を、あなたにとっても、子どもたちにとってもルネサンス的思考を促進する年にしますか? それとも、これまで通りの中世の暗黒時代のままでいきますか?(←『理解するってどういうこと?』の著者が第6章で投げかけている問い)

 今からでも遅くありません。この年末年始を、ぜひ暗黒時代から抜け出してルネサンスにするための準備期間にしてください! よいお年を。 Whatever it takes.


2017年2月12日日曜日

質問とフィードバックの効果~学びを継続するための鍵~


 5週間前のPLC便り「振り返りこそが学び/成長の鍵~年間を通して振り返る」http://projectbetterschool.blogspot.jp/2017/01/blog-post_8.htmlでは、子どもたちや保護者も巻き込んでの「振り返り」=「形成的評価」の重要性とその効果について、手紙形式やアンケートによるものなど具体的な方法論と共に紹介されていました。ぜひ、実践していただきたいと思います。 

 「振り返りこそが学び/成長の鍵」であると同時に、学ぶことに対しての興味・関心を高め、学び続けることを可能にするためには、学習者自身(子どもたちや先生方)が、「質問(問い)」をもつことと重要な他者(教師や親・家族、友人、メンターなど)からの「フィードバック」がなされることの二つが、重要ではないかと考えるようになりました。 

その一つのきっかけは、『たった一つを変えるだけ~クラスも教師も自立する「質問づくり」』Dan Rothstein & Luz Santana(著),吉田新一郎(訳)2015年[新評論]や 、『最高の結果を引き出す質問力』茂木健一郎(著)2016年[河出書房新社]、『GRIT~やり抜く力』Angela Duckworth(著),神崎朗子(訳)2016年[ダイヤモンド社]の3冊を読む機会があったからです。 

『たった一つを変えるだけ~クラスも教師も自立する「質問づくり」』では、「生徒たちが輝く授業」=「ワクワクする授業、生徒が主役になる授業、教科書を結果的にカバーする授業」→「テストを過剰に意識しない授業、自分たちの質問に焦点を当てた授業」→「楽しい探求=自分の質問を解き明かす学び」→「テストが終わっても残る、身につく」、そんな子どもたち自身による主体的な学びが実現できるようにするための「質問づくり」の実際について、具体的に紹介されている魅力的な本です。★ 

『最高の結果を引き出す質問力』は、学生や一般社会人を対象に書かれたものです。質問とは、「自分自身との対話」であり、組織や社会・世界・自分の人生を変えるためには、他人に言われたことをやるのではなく、どんなに小さなことでもよいから、自分自身の頭で考えて行動することが大切である。そのためには「質問力」を高めることが必要であり、そのための重要なステップは、「感情力」:モヤモヤとした違和感を感じる力 →「メタ認知力」:自分の感情や状態に気づく力 →「論理力」:論理的にものごとを考える力 の3つである。自分の置かれた現状や生き方・人生を変えるための「いい質問」や「質問力を高めるための具体的な方法・アクション」について書かれています。 

 3冊目の『GRIT~やり抜く力』では、ビジネスパーソンやアーティスト、アスリート、ジャーナリスト、学者、医師、弁護士、大学生、士官候補生、グリーンベレーなど、様々な人々を対象にしたインタビュー調査やアンケート調査、心理学的実験の結果に基づいて、「やり抜く力」について述べています。パート1で「やり抜く力」とは何か?なぜそれが重要なのか?、パート2で「やり抜く力」を内側から伸ばすこと、パート3で「やり抜く力」を外側から伸ばすことについて、エビデンスとともに具体的な方法が、わかりやすく紹介されています。 

 この本の中で印象的だったのが、第10章「「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法」で紹介されているデイヴィッド・イェガーとジェフリー・コーエンという二人の心理学者が行った実験です。実験の目的は、「高い期待を伝えるメッセージと」と「惜しみない支援」を組み合わせた場合の効果を検証することでした。 

 実験では、中学校1年生を受け持っている教師たちが、生徒たちの作文に対して、「フィードバック」の言葉を書くように指示されました。「ここをこうしたら、さらによくなる」という提案とともに、いつも書いているような「励ましの言葉」を書くのです。それらの作文は回収され、無作為に半分ずつに分けられました。そして、半分ずつの作文には、それぞれ次のようなメッセージの書かれた付箋が貼られたのです。 

A:「あなたの作文へのフィードバックとして、いろいろコメントを書き入れました。」

B:「あなたなら、もっと作文が上手になると思うので、いろいろコメントを書き入れました。期待しています。」 

 もちろん、どちらの付箋が貼られているか生徒たちにはわからないようにするため、作文はフォルダーに入れたまま生徒に返されました。そして、生徒たちには「作文を手直ししたい人は、ぜひ翌週に再提出してください。」と伝えられたのです。 

 その結果は、Aの内容のメッセージを受け取った生徒の再提出率は40%であったのに対して、Bの内容のメッセージを受け取った生徒の再提出率は80%を超えていたのです。 

 つまり、生徒にとって「重要な他者(教師や親・家族、友人など)」から「高い期待」を込めたプラスのフィードバック、ストローク・はたらきかけを行うことによって、学びに対する意欲を高めることができるのです。このことは、子どもたちだけではなく、私たち大人・教師にとっても同じことがいえるはずです。 

 最後に、「質問」と「フィードバック」の二つを効果的に行うための具体的な方法は、これまでに何回も紹介されてきている「大切な友だち」のやり方です。授業だけでなく様々な学びの場で実践してみてください。http://projectbetterschool.blogspot.jp/2012/08/blog-post_19.html 


★ この本の第4章「生徒たちが質問をつくる」では、中学校や高校の理科における「質問づくり」の実際と問題への対処法について、事例を挙げてわかりやすく紹介されていて参考になります。また、「振り返る」ことの重要性についても、第8章「学んだことについて振り返る」を設け、「学びを促進するためのメタ認知思考」を高めることについて述べられています。

2021年12月19日日曜日

新刊『質問・発問をハックする』

 24日に発売予定の『質問・発問をハックする』(コニー・ハミルトン著、山﨑亜矢ほか訳、新評論)の訳者の一人で、滋賀県の公立高校の大橋康一先生(地歴公民科)が、紹介文を書いてくれました。


 これまで「教えこむ」ことが重視され続けてきた日本の教育が変わりはじめます。来年4月から実施される新学習指導要領で、はじめてまともに「問い」が脚光を浴びることになったのです。新指導要領は、『歴史をする』(リンダ・S・レヴィスティックほか著/吉田新一郎ほか訳)で紹介されたような、暗記主義を脱する教育への入り口です(まだ入り口です!)。3年前に発表されて以来、教育界において「質問づくり」が大きなムーブメントになってきたのは、ご承知の方も多いと思います。そんな中で注目されたのが『たった一つを変えるだけ』(ダン・ロススタイン、ルース・サンタナ著/吉田新一郎訳)でした。

私は日本の歴史学関係の大学・高校の有志の方々と、もう20年近く歴史教育の改革にとり組んできました。新指導要領の歴史に関する部分はその成果です。そうしたとり組みの中で行われてきた全国各地の研究授業で『たった一つ・・・』の名を聞くことが多くなりました。QFT(質問づくり)を知って以来、私自身もそれを用いた授業をやったり、勤務校などで紹介したりして、その効果を確信しておりました。吉田新一郎さんから、その続編といえるこの本の翻訳への協力を持ちかけていただいたことは、望外の喜びでした。

さて『質問・発問をハックする』の内容ですが、続編という位置づけのとおり、『たった一つ・・・』で質問の作り方を学んだ上で、いかに授業を展開するか。どのような場合にどのような質問をするか。質問をする上でどのような注意をすべきか等々、具体的な方法(ハック)や事例が満載されています。それもそのはずで、この本は「何百人もの教師と少人数からなる授業研究」の実践をもとにして書かれているからです。もちろんそうした実践は、アメリカの小中高校を舞台にしたものなので、クラス規模が倍近くの日本の学校とは事情が違います。しかし、『たった一つ・・・』もそうですが、このような本は他にありません。質問を活かした授業を展開するコツや設計する際の知恵が欲しければ、この本を参考にするしかありません。実際私も、読みながらうなづいたり、「目からうろこがはがれる」ような経験が何度もありました。授業に取り入れて成功したり失敗したりして、あらためて質問を活かす良い授業というものを考えさせてもくれました。

特に私が気に入ったハック(章)は、1「質問に対して、全員の手が挙がると想定する ― すべての生徒が学習に参加することを期待しよう」、8「生徒の思考プロセスという音楽に耳を傾ける ―正解だけでなく、正しい考え方に注目する」、10「生徒のやる気のスロットルを回転させる ―生徒自身が質問できるように支援する」、11「学びの安全地帯をつくる ―生徒が挑戦できる環境を提供する」です。

問いというものは思いつきでは上手く行くことは少なく、計画的に行うことが効果を上げます。一方で、想定外の問いやその結果による混乱も生じます。そうした事態にどう対処すれば良いのか等を、この本は教えてくれるでしょう。くり返しますが、他に類書はありません!

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2026年3月22日日曜日

教育現場で好奇心を育む3つのコツ

 https://note.com/coachingletter/m/ma24c24afc5bdの3月18日号で書いたことの続編的な位置づけです。

 「社員の意欲が下がっているときこそ、リーダーが好奇心を後押しし、認めることで、イノベーションや仕事の意味を生み出すチャンスになる」という記事(https://www.smartbrief.com/original/3-tips-to-replace-employee-stagnation-with-curiosity-in-2026)を見つけました。まさに、いまの日本の学校が一番必要としていることではないでしょうか?

 その記事の全訳はしませんが(興味をもたれた方は、ぜひご自分でトライしてください)、ここではCopilotとのやり取りの一部を紹介します。

  *****

1 好奇心を伝染させる文化をつくる

🔍 原文の本質

  • インスピレーションは「スピーチ」ではなく「問い」から始まる
  • 好奇心は、成果を生むための「戦略的スキル」
  • 質問傾聴探究の連鎖がチームを変える

🏫 教育への置き換え

教師も生徒も、日常の中で「問いを立てる力」★が学びの質を決めます。学校でこれを実現するには:

  • 授業で「今日の学びを面白くする質問」を生徒が一つ書く★
  • 教師同士で「最近、子どもたちの学びの変化で気づいたことは?」を共有
  • 管理職が「結果」ではなく「気づき」を問う文化をつくる

例:「どんな小さな変化が子どもの学びに影響していると感じますか?」

例:「今、私たちがまだ問えていない問いは何でしょう?」

“Did you hit your numbers(結果は出しましたか)?” “What are you noticing(どんな変化・成長・学びを気づきましたか)?” に置き換えるだけで、学校は「指示待ち」から「探究する組織」に変わります。

 

2 つながりのための余白をつくる

🔍 原文の本質

  • 人が離れるのは「努力しないから」ではなく「見てもらえていないから」
  • つながりは大きなイベントではなく、日常の小さな存在の確認から生まれる

🏫 教育への置き換え

学校でも、生徒も教師も「見られている」「大切にされている」と感じると、学びや仕事へのエネルギーが大きく変わります。

  • 朝の会で「最近どう?」を形式ではなく本気で尋ねる
  • 教師同士で「今日のあなたの良かったところ」を一つ伝え合う
  • 管理職が廊下で立ち止まり、教師の小さな工夫を言語化して称賛する
  • 生徒の小さな努力(提出物の改善、友達への声かけ)をその場で認める

つながりは、学級(学校)経営の土台であり、教師のエンゲージメントの源泉です。

 

3 結果だけでなく好奇心そのものを評価する

🔍 原文の本質

  • 結果だけを評価すると、挑戦や問いが減る
  • 好奇心を認めると、結果はむしろよくなる
  • プロセス(質問・試行・リスクテイク)を価値づけることが鍵

🏫 教育への置き換え

学校では「結果評価」が強くなりがちですが、探究・学びの本質はプロセスにあります。

  • ルーブリックに「問いの質」「試行回数」「仮説の更新」を入れる
  • 生徒の振り返りに「今日の初めては何?」を追加
  • 教員研修で「今年挑戦した新しい実践トップ3」を共有
  • 管理職が結果よりプロセスを称賛する文化をつくる

例:授業改善のための小さな試行を指摘・紹介する

例:失敗した試みからの学びを共有する場をつくる

好奇心を評価(賞賛)すると、挑戦が増え、結果も自然と伸びるというパラドックスが教育でも成立します。

 

 以上を整理すると、次の表のようになります。

 3つすべてを一度に、というよりも、これらの中の一つでも取り組めそうなのはあるでしょうか?

 ちなみに、Copilotが提供したURLをうまく読み込めない段階では、次のような表をつくり出してくれていました。原文にはない内容(?)を生成AIが勝手に考え、解釈して提供してくれていた情報ではありますが、大事な点を押さえていたので驚くと同時に、感心もしたので、参考までに紹介します。

 なお、3つのコツは別物というよりは、相互にかなり深く関連し合っている気がします。どれから入っても、すべてを押さえられるような関係というか・・・なので、取り組みやすい(挑戦しやすい)項目からはじめてください。いずれにしても、表に描かれている環境にならない限りは、教師は元気になれ(自立でき)ないし、いい授業を生徒に提供できないし、結果的に生徒たちもいい学びを体験できないままが続くことが約束されています。それほど、大事なことです。

 

★一つどころか、たくさんみんなで出し合う方法が、『「おさるのジョージ」を教室で実現 ~ 好奇心を呼び起こせ!』の第5章「質問することを支援する」のなかでは「100個の質問をする」をはじめ生徒が質問をするための方法がいくつか紹介されています(もちろん、『たった一つを変えるだけ』で紹介されている方法も含めて!)。

 

2024年6月23日日曜日

(若手)教師におすすめの本・第2弾

 前回https://projectbetterschool.blogspot.com/2024/05/blog-post_19.html

は5人の日本の先生たちのおすすめの本を紹介しました。今回は、6人の先生たちのリストを紹介します。

その前に、前回の記事では「常に、学び続けているモデルを生徒たちに示し続けることが教師の大切な役割ではないでしょうか? そのためには実験というか、新しいことにチャレンジし続けることが不可欠です」と書きました。教師の役割について書いてあるとてもいい本があります。

 ピュリアスほか著の『教師―その役割の多面性』(文教書院、1970年)です。全部で22の教師の役割が紹介されています。これは、55年前に出版された本なのに、内容的には今でも十分に参考になります(ということは、教育分野の成長の速度があまりにも遅すぎるということ?)。

それでは、先生方の本のリストをお楽しみください。(と同時に、ご自分のリストをぜひつくって、pro.workshop@gmail.com宛にお送りください。その方が、はるかに学べます!)


F先生(大学・国語専門)

1『一斉授業をハックする』新評論

2『教えることの復権』ちくま新書

3『雑文集』村上春樹、新潮文庫

4『読んでいない本について堂々と語る方法』ちくま学芸文庫

5『現代思想入門』講談社現代文庫

6『幼児期』岩波新書

7『種をまく人』あすなろ書房

8『特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー』早川書房

9『アフォーダンス入門 知性はどこに生まれるか』講談社学術文庫

10『学力とは何か』中内敏夫、岩波新書

『みんな羽ばたいて』と『たった一つを変えるだけ』

 

G先生(中学校、理科) ~ 思いついた順です

ジェニ・ウィルソン (), レスリー・ウィング・ジャン (), 吉田新一郎 (翻訳)『増補版 「考える力」はこうしてつける』新評論、2018

岩瀬直樹 ()『クラスづくりの極意―ぼくら、先生なしでも大丈夫だよ』 農山漁村文化協会、2011 

ダン ロススタイン (), ルース サンタナ (),吉田 新一郎 (翻訳)『たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」』 新評論、2015

平野朝久(著)『はじめに子どもありき』東洋館出版、1995

佐伯胖 ()「学び」の構造』東洋館出版、1975

今井むつみ(著)『学びとは何か――〈探究人〉になるために』岩波新書、2016

ピーター・グレイ (), 吉田 新一郎 (翻訳)『遊びが学びに欠かせないわけ―自立した学び手を育てる』新評論、2018

 

H先生(高校・英語)

宇佐美寛『私の作文教育』さくら社, 2014

人は、ある読者に何らかの影響を与えようとして文章を書く。----この目的を達成するために必要なことは何でしょうか。そして、この立場に立つと、いかにひどい文章が巷に溢れていることでしょう。著者はそれを嘆き、丹念にそれを批判していきます。それを通して、一文一義、引用する、細部を具体的に書く、などの大切さを伝えています。

宇佐美寛・池田久美子『対話の害』さくら社, 2015

対話は、それ自体は善でも悪でもありません。ただし、強い立場の者が仕掛けた対話には警戒を要する、と著者は言います。テレビでも放映されて話題になった、マイケル・サンデル氏の「ハーバード白熱教室」の実践を、実証的に批判しながら、授業づくりの本質に迫ります。

田中克彦『ことばと国家』岩波新書, 1981

ある時期まで国語の教科書に載っていた、ドーデの「最後の授業」の作品で、フランス語教師のアメル先生が、アルザス地方を去る時に、「フランス語は世界で一番美しいことばだ。」と言い、「フランス万歳!」と黒板に書いた場面は、矛盾に満ちていると著者は言います。国語や外国語教師だけでなく、すべての教師に勧めたい1冊です。

長田勇・桜井均・石井仁・遠藤忠『なぜ少女は走ったか---文化分析としての教育学』川島書店, 1990

生徒のためにという大義名分で行われた、罰マラソンで、少女が死んだ。----教師の何気ない行為、それを疑うことがない日常の信念の中に、大きな問題が隠れていて、時に、それが悲惨な結果を引き起こします。様々な事例を取り上げ、具体的に分析と検討することで現代の学校教育の問題を考えます。

小浜逸郎『学校の現象学のために』大和書房, 1995

「子供は天使である」「悪いのはいつも大人であり教師だ」「子供は学びたがっている」「学校では子供が神様だ」といった世間の通俗的な言説を、著者は切れ味よく批判していきます。子供中心主義か管理主義かといった二項対立の言説に依拠することで、学校現場の現実が見えなくなっている、と著者は警告しています。

向山洋一『いじめの構造を破壊せよ(教育新書121)』明治図書, 1991

いじめ問題を根本から解決する具体例を読むと、教師がいじめをする子供の差別構造に気づかせ、子供に心底から後悔させることが大切だと著者は言います。論旨は明快で、方法論も確かです。向山氏の初期の著作で、入手しにくくなっていますが、この本は優れた本だと思います。

鶴見俊輔『教育再定義への試み』岩波書店, 1999

「人は、生まれ、育ち、おいて死ぬ。その一生を支え続ける『教育』は可能か」と帯に書かれています。

葛藤に満ちた自分自身の人生体験と、様々な人々との交流を振り返りながら書かれている本書は、単なるハウツー本にはない深さがあります。私にとって大切な本です。(この本も1990年代ですね!)

 

I先生(元中学校理科、校長、大学教授)

 『たった一つを変えるだけ』(新評論)・・・まずはここから。

 『世界は一冊の本』(みすず書房)・・・本がいかに大切か

 『ギヴァー』(新評論)・・・世界・歴史・人間を考えるために

 『心の病気をどう直す』(講談社現代新書)・・・心の病とどう向き合うか

 『学校の戦後史』(岩波新書)・・・これまでの日本の教育の歴史を踏まえる

 

J先生(中学校理科、現在小学校校長)

ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ

「考える力」はこうしてつける

オープニングマインド

作家の時間

宿題をハックする

不安な心に寄り添う

質問・発問をハックする

ケーガン協同学習入門

人的環境のユニバーサルデザイン

「読む力」はこうしてつける

学びはすべてSEL

 

K先生(中学校・英語)

EQ20』『チーズはどこへ消えた』『ケーキの切れない非行少年たち』『発達障害の人がみている世界』『飛びはねる思考(東田直樹)』『さあ、才能に目覚めようストレングスファインダー20』『7つの習慣』『ライフシフト』『他者と働くーわかりあえなさ から始める組織論』『本当の心の力』『自分の小さな箱から脱出する方法』『ものがわかるということ』『好きノート(たにかわしゅんたろう)』『ことばのかたち(おーなり由子)』『すきなこと にがてなこと』『21世紀に生きる君たちへ(司馬遼太郎』『14才の君へ(池田晶子)』『せんせいのつくりかた これでいいのかな と考えはじめたわたしへ』『SELを成功に導くための5つの要素』

2026年3月29日日曜日

なぜ研修は役立たないのか? では、何が本当に効果を生むのか?

  『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーさんが、つい先日、上記のタイトルの論考を書いていたので紹介します。

   *****

忘れてしまう研修と、教師を変える(成長させる)研修を分けるのは、たった三つの要因です。

ある研修で、教師が私の方へ身を寄せて小声で言いました。「明日すぐに使えることを一つだけでいいから知りたいです」。この思いは、ここ20年ずっと聞き続けてきたものです。そしてこれは、多くの研究が示している事実とも一致しています。多くの研修が効果を発揮しないのは、教師に意欲や好奇心がないからではなく、対象のことを考えずに設計されているからです。

教師の学びに関する900以上の研究をまとめた大規模メタ分析では、効果的な研修は「焦点が明確で、継続的で、教師の目の前のニーズに直接関係している」ことが示されています(Darling-Hammond ほか, 2017)。しかし実際の研修の多くはその逆で、短時間に内容を詰め込みすぎ、成果が不明確で、情報を受け取る教師たちの感情面や認知面への配慮がほとんどなく、フォローアップもありません。

研修をうまく機能させるには、もっと早い段階から取り組み、まず対象に焦点を当てる必要があります。

1. 対象を知ること

研修をどのように計画しているかを担当者に尋ねると、多くはまず「扱うべき内容」を挙げます。教育現場のプレッシャーを考えれば理解できる反応ですが、生産的な出発点ではありません。本来の最初の問いはこうです。「今日、目の前にいる学び手は誰で、彼らが今もっとも必要としているものは何か?」

これは「曖昧で非科学的な話」ではなく、認知科学に根ざした考え方です。Malcolm Knowles1984)や Patricia Cranton2006)といった成人学習の理論家たちは、何十年にもわたり、大人は「尊重され、感情的に安心し、扱われる内容とつながりを感じられるとき」に最もよく学ぶことを示してきました。神経科学もこれを裏づけており、ストレスや過負荷、情緒の乱れは新しい情報を取り入れる脳の働きを弱めます。場にいる人々を理解しないまま内容に飛び込むと、学びが始まる前にその土台を損なってしまっています。

「対象を知る」ことを怠ると、いくつかの予測可能な問題が生じます。

  • 認知的過負荷:参加者の事前知識や心の準備状態を把握しないまま進めるため、内容が詰め込みすぎになる。
  • 学習目標の不明確さ:教師が何を最も必要としているかが見えないため、すべてを扱おうとして結局どれも定着しない。
  • 関連性の低さ:どれほど優れた方法でも、教師が自分の文脈や学年・教科等の現実と結びつけられなければ効果が出ない。

解決策はシンプルです。関連を見いだすことから始めるのです。

3〜5分ほどの短いチェックインをするだけで、学びの場は大きく変わります。たとえば、今どんな気持ちでこの場に来ているかを一言で表してもらったり、この研修に「参加してよかった」と感じられるために必要なことを挙げてもらったりするのです。経験値を把握するために、ペアでの短い共有や挙手を求めてもよいでしょう。大事なのは形式ではなく、「そこで得た情報に応じて応える姿勢」です。★

 

2. 焦点を絞る

次に大切な要因は、驚くほどシンプルです。学習到達目標を一つだけ決めることです。そう、たった一つです。

時間が足りず、プレッシャーの大きい教育現場では直感に反するように感じられるかもしれません。しかし、しかし、広く浅くよりも、狭く深く掘るほうが力になるのです。私は『教師のためのアート・オブ・コーチング』の後に書いた『The PD Book: 7 Habits that Transform Professional Development』のなかで、教師が研修後に「一つのアイディア」——一つのプロトコル、一つのルーティン、生徒作品の見方の一つ——を覚え、実践できることのほうが、20のアイディアを聞いて何も定着しないよりはるかに変革的だと強調しています。

目標を一つに絞ると、すべてが良い方向にゆっくりと進みます。ファシリテーターの目的が明確になり、参加者の認知的負荷が減ります。情報を整理し、質問し、練習するための余裕が生まれます。そして教師は「持ち帰って使えるもの」を確実に得られます。

私は研修担当者や管理職と仕事をするとき、計画を始める前に次の文を埋めてもらうことが多いです。「この研修の終わりまでに、教師は__ができるようになる。」もしこの文が長く、複雑で、接続詞だらけになるなら、目標がまだ明確でない証拠です。

3.研修中に「実践」を組み込む

研修が感情面でも認知面でもうまく受講者の教師に届いたとしても、それが教室での実践につながらないことがよくあります。その理由はシンプルです。学んだことを実際に使ってみる時間がないまま、教師が研修を終えてしまうからです。

Learning Policy Institute の研究では、練習・計画・フィードバックのための時間をしっかり確保した研修は、新しい学びの実践度を大きく高めることを示しています(Darling-Hammond ほか, 2017)。学習科学もこれを支持しており、「実践」は記憶を定着させ、不安を軽減し、習慣形成の条件を整えます。

実践のために複雑な仕組みは必要ありません。教師は翌朝使える5分間のルーティンを書き出してみたり、新しい視点で生徒の作品を分析したり、ペアになって会話プロトコルをリハーサルしたり、学んだ方法を使って授業の一部を短く計画したりすることができます。意図的な10分間の実践だけでも、新しい学びが定着する可能性は大きく高まります。★★

 

教師の人間性を尊重する

教師には、人間性と専門性を大切にする研修が必要です。教師の専門性を尊重し、時間を大事にし、授業改善につながる研修は、一つの基本から始まります。それは「対象を知る」ことです。その場にいる人をきちんと理解しようと立ち止まることで、焦点が定まり、大人の学びの現実に根ざした、人にやさしい学びを設計できます★★★。到達目標を一つに絞り、実践の時間を組み込むことで★★、行動が変わる条件が整うのです。

 

出典:https://www.ascd.org/el/articles/why-most-pd-doesnt-work-and-what-actually-does

★私が教員研修に関わり始めた頃、オーストラリアから招いた講師がしっかりこれをやっていたのを思い出しました。

ちなみにこのことは、当然のことながら、生徒対象の授業でも同じです! あなたは、診断的評価、形成的評価、総括的評価の理想的なウェートづけはどのくらいずつだとお考えですか? このこと(=学ぶ対象に焦点を当てて築く学び方・教え方)について書かれているのが、『学びの中心はやっぱり生徒だ!』ですので参考にしてください。先ほどと逆で、これはそのまま教員研修に応用できます!

★★しかし、https://projectbetterschool.blogspot.com/2015/11/blog-post_29.htmlの二つ目の表を見ると分かるように、実践=練習を研修会でするだけでは、残念ながら、ほとんどの参加者は学校に戻っても、それがやれないことはすでに1984年ぐらいの段階で明らかにされています。何が必要かというと、研修後のフォローアップ(=継続的なサポート)です。それが、この文章の執筆者であるエリーナさんがやり続けているコーチングの柱と言えます。一度きりのイベントとしての研修会でいくら努力をしても、参加者の教室や学校レベルの実践が変わることはほとんど期待できません。研修会で関心をもってくれたことを学びのサイクルとして回し続ける形で(https://note.com/coachingletter/n/n6718ea3f0f29?magazine_key=ma24c24afc5bdを参照)、自分のものにしてもらう仕組みが大切です。それを助けるのがコーチです。

★★★『教師のためのアート・オブ・コーチング』のなかには、実践を変える6つのレンズが紹介されており、その一つが「大人の学び」=成人学習のレンズなので、ぜひ参照してください。