2021年3月28日日曜日

『歴史をする』を読みました

先週のこのブログで取り上げられた『歴史をする』を読みました。私自身は理科教師でしたが、歴史にも興味があり、発売前から関心がありました。

一読しての感想は、「これはうちの教職課程の学生にぜひ読ませたい」です。 

1章「過去、現在、未来」の小項目に「歴史は、鍵となる問いとテーマである」があります。ここには、次のように書かれています。(同書14ページ) 

私たちは誰であるのかという現在のことについて考えることや、私たちの将来像という未来を思い描く際に歴史を役立てるためには、取るに足らないことに埋もれ、出来事の時系列の再集計だけを行うといった歴史カリキュラムではいけません。その代わりに、鍵となる問いやテーマの調査に生徒を熱中させ、人々、価値観、そして人々がとった選択を中心とした活気に満ちた歴史カリキュラムが必要となります。 

まさに歴史を単なる物語として聞くだけの立場から、子どもたちが主体的に問いを見つけ、それを探る過程こそが「歴史をする」なのでしょう。自分たちの何のかかわりもない過去の人物の名前や出来事を覚えるだけの授業であるならば、学ぶ意欲が湧くはずもありません。この点については、第2章「それは災難ではない」の中の「人は探究の真っただ中で学習する」において、次のように述べられています。(同書61ページ) 

人は、自分にとって重要な意味をもつ問いに対する答えを求めるときにのみ学習をするのです。 

また、単に課題を与えるだけでは探究する学習が実現しません。その点に関しても、次のように述べられています。(同書68-69ページ) 

教師なら誰もが知っているように、探究していくのに必要とされるスキルをもっている生徒はほとんどいません。探究心は教育に不可欠なものですが、単に課題を与えただけでは意味のある結果は得られません。ほとんどの生徒が自分の経験を最大限活かすための直接的な支援が必要なので、教師におけるもっとも重要な責任は、生徒が学習するために必要な枠組みを提供することとなります。

このプロセスは「足場かけ」と言われています。建設現場の足場が人の作業を支援しているように、授業において「足場」は生徒の学習をサポートします。生徒は、学びを支援してくれる教師や知識の豊富なクラスメイトと一緒に活動することで最高の学習ができるのです。 

この「足場かけ」は教育学者ヴィゴツキーによって提唱された「発達の最近接領域」論に基づくものですが、それに基づいた学習のプロジェクト展開例がこの本にはたくさん紹介されています。ICT活用にも触れた第6章などは、これから「探究学習」を志向しようとする教師にとっては大変参考になるものだと思います。自分の学校の校区の歴史や地域の方々との交流などから、その学校独自のカリキュラムができあがるでしょう。 

私が最後に勤務した中学校の校区には、かつて石切り場があり、それを運び出すだめの鉄道(昭和初期のころですから、その鉄道の動力は人力でした。)があり、その路線の一部がいまだに残っていたのです。また、近くには金の鉱山跡があり、最盛期の江戸時代の様子などが古文書に残されていました。そうした身近な歴史的な遺産をテーマに追究していくことで、生徒たちにとって面白いプロジェクトが展開できそうです。そんなワクワクするような学びが多くの地域で実践されることを期待したいものです。

 

 

 

2021年3月24日水曜日

『歴史をする』は、今日発売

 

以下は、下訳段階の原稿を読んでコメントしてくれた協力者の冨田先生が書いてくれた『歴史をする』の紹介文です。

  *****

「歴史をする」とは、隣のあの子が存在する理由を知り、多元的民主主義の一員になること。

「歴史をする」とは、過去のエイジェンシー(主体者意識)の移ろいを思い描き、今の自分自身の中のエイジェンシーを呼び起こすこと。

「歴史をする」とは、自分が物語の主人公になり、よりよい未来を作り出す一人になること。

「歴史をする」ことで、子どもたちは行動し、探究し、自分自身も歴史を刻む一員であることを知るのです。エイジェンシーを体得する歴史の学び方とは、どのようなものなのでしょうか?

語呂合わせで年号を覚えることや、歴史上の人物を漢字で正しく書けるようになることなど、学校で行われている暗記とテスト中心の歴史は、ほとんど意味がありません。本当の歴史はそうではなくて、自分自身が歴史とどうかかわり、今を創り出していくか、歴史はそれこそに価値があることを、本書は丁寧に教えてくれています。

子どもたちにかかわる私たちは、覚えて、解答して、先生から評価を頂くような、おもしろみのない過去を繰り返してはならないのです。あんなに息の詰まる思いをしたのに、それでもまた知識理解偏重の歴史学習を子どもたちに再び充てがおうとしているのですか?

目を覚ましましょう。歴史は過去を知るためにあるのではなく、過去を省み、今を選び、未来を生み出すためにある。私たちは、子どもたちにそれをどのように伝えていけばいいのでしょうか? 子どもたち一人ひとりが主人公となり、創造的に歴史を綴る一人のエージェントになるために、私たちはやれることが星の数ほどあると、この本は私たちを何度も励ましてくれるでしょう。

社会科の学びを創造的なものにしたい先生、歴史を通じて今を考える視点を与えたい保護者、歴史を学ぶことで明日を作り出そうとしている生徒自身、みんなで暗記中心の旧来の授業を脱ぎ捨てて、共に学びを変えていきましょう。 

  *****

 歴史の授業をこのように捉えた授業は、今の日本で行われているでしょうか? その可能性が見えてくる本です。

 しかも、このことは単に社会科の歴史分野に言えるだけでなく、残りの地理や公民(政治経済)分野にも言えてしまいますし、さらには、理科、算数・数学、国語等の他教科にも言えてしまいます。というか、参考になる点が満載の本です!

 ちなみに、冨田先生は現在、この本は去年の今頃から翻訳が始まったのでまったく参考にしていませんが、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップ(作家の時間と読書家の時間)を社会科に応用した実践をまとめた『社会科ワークショップ』の校正作業中です。夏前には出版予定ですので、ご期待ください。(冨田先生の中には、そういう経験があるので、上の文章が自信をもって書けてしまうのです! 日本でも十分にやれてしまう、と!)

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2021年3月21日日曜日

スパイダー討論の実践紹介

 横浜市の平先生が、『最高の授業 ― スパイダー討論が教室を変える』(アレキシス・ウィギンズ著)を読んで、早速実践した報告を送ってくれました。

 

  *****

 

横浜市で6年生を担任しています。

スパイダー討論と出逢い20213月「実験してみよう!」と、思い切ってスパイダー討論にチャレンジしました。結論から言うと、スパイダー討論のおかげで自分の教育観をガラリと変えることができました。子どもはスパイダー討論が楽しみでしょうがないようです^^

以下、自分が「道徳」の授業で実践しているスパイダー討論の様子を報告させていただきます。

 

私はスパイダー討論と1番相性の良い教科は道徳だと思っています。さらに「どう解く?」という答えのない問いに挑む教材がジャストフィットします。流れさえ掴めば、この本を購入するだけで15時間分の教材研究が手に入ります。つまり定時で帰れます(笑)

スパイダー討論×「どう解く?」の実践を紹介します。

 

まず、「どう解く?」の教材から話し合いたい議題を1つ決めます

ちなみに私のクラスでは最初の議題は「正義の味方はなんで悪者を殴ってもよいのだろうか」という問いでした。

 

役割を決めます。

私のクラスでは、

司会→1

レコーディング→1人決めています

スパイダー討論をやる中で輪の中に発言回数を記録する役が自然と生まれました。

フレームを超えて自分たちでより良い討論にするために自考する姿がもう素晴らしいですよね^^

 

クラスを2つの輪に分け、15+3分でスパイダー討論を始めます。

本の中で紹介されているアプリを活用することで、自分の話し合いの姿がメタ認知でき、効果絶大です(特にクラスに1人はいるだろう優秀な児童が、自分が話しすぎているという事実に気が付きます(笑))

→1つの輪は多くて14人程度が理想だと感じます。

 

討論の評価

ルーブリックをもとに話し合いを評価します。

私のクラスのルーブリックは

全員が平等にテーマを意識して参加した

一度に話す人は一人で、良いペースで活発な話し合いだった

チーム内で出てきた疑問や質問はみんなで解決する努力ができた

小さなつぶやきも無視されず、おとなしい人にも発言しやすい雰囲気や声かけができた

誰かが話している時には、話し手が不快になる態度や行動をとることなく、何を言おうとしているのか一生懸命分かろうと努力できた

 

以上の観点をもとにAE5段階で評価します

 

アプリを活用したフィードバック

ここが1番盛り上がります(笑)

AIが客観的にデータをもとに話し合いを判定してくれるという点が私も気に入ってます。

本にはBを獲得するには、8ヶ月程度実践する必要があると書いてありましたが、私のクラスは2回目でBの評価をいただきました!学級ができあがっている3月の実践ということで少しずるい気もしますが、すごいです!

自分で言うのもあれですが、私のクラスはすごく育っています。「指示ゼロ」で自考して動ける児童が何人もいます。

つまり良いクラスはスパイダー討論がうまい。

逆説的に考えると良いクラスにするにはスパイダー討論を上達させればいいとも言えるのではないでしょうか?

あくまでも1つの考えとして、、、

 

子どもたち同士で学びの深化を図ります

今、道徳では「考え、議論する道徳」が求められています。3分ほど自由にテーマについて話し合いをすることで、子どもの考えを発散させます。

私は勝手に居酒屋交流と名付けています(笑)

自由にワイガヤできる感じが気に入ってます!

 

テーマをもとに振り返りを行います

「どう解く?」のホームページから振り返りシートがダウンロードできるので、そのまま活用しています。ここで私がこだわっている点は「即時フィードバック」することです。即廊下に掲示し、子ども同士が繋がれる環境を作ります。

例年は一人ひとりコメントを書いてから返却していましたが、それだと無駄なことも沢山あります。

コメント返却式だと教師と子どもしか繋げない点です。あと時間がかかります(笑)

しかし、公開することで、子ども同士を横で繋ぐことができます。さらにコメントを記入できる環境を作ることで、SNS教育にもつながると私は考えております。他人の考えに対して誹謗中傷は子どもでも書きません(笑)

 

最後に説話を話して終わります

「どう解く?」の良い点は答えのない問いに対して、著名人の方々からのアンサーがあることです。

「これが正解ではないけど、こんな考えもある」と最後に伝えて終わることで良い感じで終われます。大事なことなのでもう一度言いますが、教師がラクして子どもの思考をグルグル回せます。

 

しかし、教師は「授業で勝負」とよく言われます。私は今まで自分が一生懸命考え、授業を練っていました。教師が教えないことに疑問を持つ方もいるかもしれません。私も最初はすごく不安でした。でも、「ラーニングピラミッド」が私の背中を強く押してくれました!そこには驚愕の事実が記されています。子どもたちに任せる学びは勇気が入りますが、その豊かさを見たらやめられなくなります。

こんな実験結果があります。

スパイダー討論に慣れてきた頃、1度だけ私が輪の中に入って討論をしたことがあります。AIが判定したスパイダー討論の結果はどうだったと思いますか?

 

...結果は過去最低評価のDでした(笑)

教師が日頃いかに喋りすぎているかが分かります。

 

以上の実践から私はスパイダー討論にハマりつつあります。幸い私の学校では学年主任も一緒に研究を進めてくださり、管理職からも「おもしろい!」と言っていただいています。この伸び伸びスパイダー討論ができる環境でどんどん実験して、スパイダー討論の可能性を広げていきたいです!

 

長々と書かせていただきましたが、始めて1ヶ月も経たない初心者なので、至らぬ点が沢山あると思います。気付いたことがあれば、ご指摘、ご意見、感想いただけたら幸いです

沢山の方と磨き合い、高め合えたら嬉しいです😄


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 平先生への質問+指摘・感想等は、pro.workshop@gmail.comへお願いします。

 あなたもスパイダー討論に、ぜひ来年度から挑戦してください!



2021年3月14日日曜日

コロナに負けるな! サークル(輪)になろう

 「話し合いは横並びで!」 お互いの呼気に気をつけるようグループ活動を行っていても、子どもたちはいつのまにか輪になってしまいます。休み時間や外遊び、放課後の様子を見ていればなおさらのこと。本来、人とはそういうものです。自然と身体距離を縮めながらつながりあって関わります。それがオンラインのリモート学習では無理なことだったことが痛いほどわかるこの一年間でした。頭を寄せ合ってその場の空気を共につくり、共有しながら過ごすことが本来の自然な子どもの姿。

 

今年度を振り返ってみて、どれだけ子どもたちとソーシャルディスタンスを気にせずに話し合えてこられたのでしょうか。輪になって親密に笑い合い、ゆずったり譲られたりしながら話し合うその機会がことごとく失ってしまったことは大きな反省です。

 

教室の子どもたちは、日々、トラブルの宝庫。意地悪を言われた。無視された。ルールを守らないでたたいてきたなど、対応に追われがち。しかし、それらは先生だけが率先して解決するものでは決してなく、トラブルは子どもたちにとっての成長のチャンスでもあります。この日々の問題を自分たちの手で解決し、お互い育ち合うコミュニティを築いていける強力なツールが「サークル」です。

 

海外の学校では日本だけに限らず、問題行動を起こした子どもは別の教室に移動させられることがあります。クラスのみんなと関係修復や自らの責任を持つ機会が遠のいてしまいます。それでは、問題行動は教室から出られる方法だと間違った学習をする子もでてくるかもしれません。大切なことは、クラス集団の中で起こったことをそのクラスの中で修復できるように話し合うことです。

 

サークルは輪になって集まること。クラス全員がお互いに見えるように輪になって座り、オープンで率直なコミュ二ケーションをします。このサークルは心理的にも身体的にも安全かつサポーティブな場です。ここでは誰もが教室での困りごとや失敗を種にして、取り扱いの難しい話題についても自由に話し合え、多様な考えや気持ちを受け止めながら、集団としての合意形成を図る場です。

 

 

 

このサークルの詳しいやり方をコミュニティづくり・集団づくりの視点から紹介した本は、ネイサン・メイナード、ブラッド・ワインスタイン著、高見佐知、中井悠加、吉田新一郎訳『生徒指導をハックする育ちあうコミュニティーをつくる「関係修復のアプローチ」』(新評論)です。

 

その中の「ハック2 サークルになりましょう 問題が起こったところですぐに対応する」に詳しく載っています。タイトルに生徒指導とありますが、問題行動解消のためにフォーカスしたものだけではなく、民主的な集団づくりに効果的な具体手法がまとめられています。

 

サークルのやり方(同書P.41より)

    クラス全員が輪になって座ります。

    教師は経営者としてではなく、ファシリテーター及び生徒の発言の聞き手として輪の中に入ります。

    最初は、チェックインの質問から始めましょう。例えば「昨日、読んだもので面白かったものは何ですか?」などです。

    もし、必要と感じれば、緊張状態を取り除くためにマインドフルネスの簡単なエクササイズ★を付け加えましょう。生徒たちの緊張を和らげ、意識を「今、ここ」に持ってきます。

    最初は毎朝少なくとも5分間のサークルから始めて、生徒が徐々に慣れてきたら時間を増やしていきましょう。

    サークルで発言したくない場合は、常にパスをできることを伝えてください。関係修復のアプローチは、常に「尊重し合うこと」を基本にしていることを忘れないでください。

 

もしあなたがこれから初めてサークルに取り組むには、以下のステップ(本書P.48P.50)を使ってみてください。また、改めて始める人にとってもサークル実践の質を振り返るよい規準となるはずです。

 

    安心安全なスペースを作る。

お互いの顔が見えるように内側を向いて輪になって座ります。このサークルでは何かを判断したり評価したりする場ではありません。生徒の思い込みや主観的な発言から自由になり、身体的な安全が守られ、安心できる場でもあります。もし守れない場合は、サークルに参加することができません。この約束はとても効果的です。

 

    「期待」を根付かせる★★ 

話し手が何か手に持てる「話し手のしるし」を用意します。これがあることで、みんな同時に話すことが防げます。さらに、事実(出来事も感情も含まれる)だけを話すように徹底します。その際、「私は〜の時、〜ように感じます。なぜなら〜だからです」といったように、肯定的な「私メッセージ」の話型を使います。

 

    コミュニケーションを促進する

素直な気持ちを明らかにしたり前向きな話し合いには、励まして一緒に参加するみんなに感謝を伝えていきます。肯定する事は積極的に取り組もうとする意欲につながります。

 

    共感を促進する

共感が大切であるという意識を育むために、生徒が共感を示したときは取り上げて認めます。自分の気持ちや相手の気持ちを認識することで感情リテラシーが向上しサークルの中で共感の輪を広げるのに役立ちます。これは生徒が他の場で共感を使うときの練習にもなります。

 

    サークルを終わりにする

サークルの最後には、何が話し合われたのかについて要約します。計画とステップが決まっていればそのことについても説明します。

 



サークルは子どもたちが協力し意見を出し合って、問題に向き合う機会が提供できるとてもパワフルなツールです。一日を前向きにスタートするためにも使いますし、問題解決に向けて前向きなコミュニケーションを図る力も高めることになります。

 

しかしサークルの成果はすぐに現れるものでもありませんし、決して労力のかからないものでもありません。実際に行ってみるとわかりますが、明らかに問題解決のサークルを行う回数が減っていきます。子どもたちがこのプロセスから学び、不必要な問題行動を起こさないようになるということです。

 

人と一緒に生活することでトラブルは絶えませんが、自分たちなりの規範をつくり、守り維持して、さらにはよりよいものへ変えていく、誰もが納得できるものに磨いていけることを知っています。そして、ルールとともに、話し合う技術、自分の主張だけでなく、相手の話をしっかりと分かろう聴き取ろうとする気持ちが育ってくることも知っています。

 

コロナ禍のこの一年間のうちの半分以上はサークルになることなく終わってしまいました。

年度末の学級じまいには、子どもたちが一人一言、語る場面があるかと思います。ぜひサークルでやってみませんか? 換気をしながらマスク越しではありますが、サークルでは、話す人だけではなく、話を聞いている他の子の様子も見られ、安心してその場にいることができます。コロナに負けずに来年度に向けても、ぜひ計画してみてください。

 

 

★教室の中のマインドフルネスには、6秒間かけて息をゆっくり吸って吐く。教室の中を見回して「ありがたい」とか「すばらしい」と思える気づきを共有する。日々の生活の中で感謝したいことを1つずつ発表してもらうなどがあります。

 

★★本書では「期待」となっていますが、日本では「話し合いのルール」といったニュアンスでしょうか。しかし「期待」と「ルール」の違いは大きすぎます! この違いに興味のある方は、本書ハック4「ルールを期待に置き換える」を読んでください。この転換できないと、ひょっとしたら教育自体が変わらない可能性すらあります。

2021年3月7日日曜日

あなたは、誰の先生?

 そう問いかけるのは、『悩みや不安を抱えた生徒』(現在翻訳中)の著者です。

 著者いわく、そういう生徒はドンドン増えていると!

 そうなると、教師は自分がいったい誰の教師かを問う必要が出てきます。

 「生徒の教師」か? それとも、「学校の教師」か? さらには、「自分自身優先の教師」か? 「保護者の教師」という人はほとんどいませんが、多少は「文科省ないし教育委員会の教師」はいるでしょうか?

 あなたは、誰の教師ですか?

 

 「生徒の教師」は、「生徒のための教師」というか「生徒との接点がもてる教師」というか「生徒に受け入れられる教師」というか「生徒一人ひとりを理解したうえで対応/授業ができる教師」★です。

 それに対して、「学校の教師」ないし「自分自身優先の教師」は、「生徒よりも教師自身ないし学校の都合優先の教師」というか「生徒との接点を大事にしない教師」というか「生徒に受け入れられることを気にせず、生徒が自分に合わせることを強要する教師」というか「生徒一人ひとりを理解することは考えず、一つの指導案で教えていればよく、それに合わせられないのは生徒に問題があると責任転嫁をはばからない教師」です。

 実際の教師は、100%の生徒の教師と、100%学校の教師や自分自身優先の教師の間に存在していうと思います。

 

 前者の視点、つまり「生徒の教師」の発想から生まれているのが、

・成績をハックする

・宿題をハックする

・教科書をハックする

・「学校」をハックする

・生徒指導をハックする

・読む文化をハックする

・学校図書館をハックする

・子育てをハックする

の「ハック・シリーズ」の本です。

 いま学校で当たり前のように行われていることで良しとせずに、生徒のために常にベターを目指す発想です。(それに対して、「学校の教師」や「自分自身優先の教師」からは、いま学校で行われていることを改善したり、修正したり、より良くしようとする発想および行動はなかなか出てきません。あるのは、偉大なる前例踏襲主義です。)

 

 いま「ハック・シリーズ」には、スピンオフが出てきています。

 すでに翻訳が終わり、編集・校正段階に入った『静かな子も大切にする』や『挫折ポイント』そして上で紹介した『悩みや不安を抱えた生徒』などです。

 これらは、生徒たちを一律に捉えるのではなくて、多様な子たちがいることを前提にしたところから生まれました。たとえば、内向的というか、あまり発言することのない(しかし、元気に発言する生徒たちと同じか、それ以上によく考えている可能性がある)静かな子たちが教室の中には半分ぐらいいます。しかし、私たちはよく発言してくれる生徒との共演(静かな子たちを観客にしたまま!?)で授業を進めていくことに慣れ過ぎています。いったい、発言しない静かな子たちとどのように授業をつくり出せるのでしょうか? 考えたことはありますか?

 あるいは、生徒が努力をあきらめる、学ぶことから挫折する理由は一様ではありません。やる気の研究はそれなりに行われてきましたが(実践は、どうでしょうか??)、これまで省みられてこなかった「あきらめや挫折」に焦点を当てて研究し、そして実践した結果をまとめたのが『挫折ポイント』です。今まで見えていなかったことが、いろいろと見えてくる本です!

 このように、視点を変えられると、ハック(改良・改善)できることがたくさんあります。

 あなたは「誰の先生」ですか?

 どんなことをハック(改良・改善)したいですか?

 時間割? 教科の存在?(世の中は教科で動いていません。教科で動いているのは学校の中だけです!) 就労時間? 教員研修(教師の学び★★)? 人事?

 

★これを実現するためには、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップのアプローチhttps://sites.google.com/site/writingworkshopjp/teachers/osusume (それが、他教科に応用されたものとして、『だれもが科学者になれる!』や、今月出る予定の『歴史をする―生徒をいかす教え方・学び方とその評価』https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784794811776 や夏前には出る予定の『社会科ワークショップ―自立した学び手を育てる教え方・学び方』などがあります)と、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784762829598 で紹介されているアプローチが効果的です!!

★★以下は、『「おさるのジョージ」を教室で実現』の100~101ページからの引用です。生徒を教師に置き換えると、そのまま教員研修に言えてしまうのではないでしょうか? 授業と研修の両方で、「ボタンの掛け違え」が起こり続けています!!

学ぼうとする動機が内側からではなく外側からもたらされる場合、生徒の焦点は他人を喜ばせることに集中してしまいます(同僚や私が「学校ごっこ」と呼ぶものです)。それは、学習プロセスや活動自体に生徒をあまり関与させることなく、権力者によって提示された問題に対して正しい答えを得るという学習結果に焦点を当てるパフォーマンスとなっています・・・・たとえば、過大にストレスを感じたり、退屈だったりすると、生徒が内容を理解したり、覚えたりする可能性がかなり低くなります。学業の課題全体に子どもが興味を失ってしまうと、それらをすることによって得られるものはほとんどないと言ってもよいでしょう。[参考文献152]・・・・ 一方、学ぶ動機が学習者の内側からもたらされている場合、生徒の情熱と取り組みはほぼ無限に膨らんでいくことになります。