2014年11月30日日曜日

読む力をつける


『「読む力」はこうしてつける』(吉田新一郎・新評論2010)は、子どもたちに読む力・書く力をつけさせるには格好の本です。私も大学の授業で利用しています。

私の勤めている大学では、1年から4年まで週に1コマ「セミナー」という授業があります。

要は小中高でいう「学級活動」+「読み書きのリテラシー」の時間というとわかりやすいと思います。その「読み書きのリテラシー」の部分で、この本を利用しているのです。

 

この本の中に「第7章・質問する」という項目があります。

98ページには、「質問力の向上によってもたらされる効果」として、以下のように整理されています。

 

・質問することの価値を知っていて、読む前、読んでいる間、読んだあとに質問ができる。

・意味をはっきりさせるため、書いてあることを予想するため、書き手の意図や書き方を知るため、書いてあることを疑って見るためなど、様々な目的の質問ができる。

・質問をすることで理解が広がる(深まる)ことが分かる。したがって、記憶にも残りやすくなる。

・質問が、文章(ないし作者)とのやり取りを可能にする。

 (以下 略)

 

私の担当しているクラスの学生は小学校教諭や特別支援学校教諭を目指している者がほとんどですので、この「質問する」ことがいかに大切かを繰り返し学ばせたいと考えています。

105ページに「レッスン⑦詩を使った質問づくりの練習」がありますが、これを先日実施しました。詩は、この本でも紹介されている「世界は一冊の本」(長田弘・みすず書房2010)を使いました。

 

まず、朗読してから、学生たちに思いついた質問をワークシートに書かせます。

こんな質問が出てきました。

「権威をもたない尊厳とはどういうこと?」

「マヤの雨の神の閉じた二つの眼とは?」

「トンブクトゥってどこにあるの?」・・・・

 

「これはどんな意味なのか」、「もしかしたら、こんなことを作者は言いたいのでは」

など、いろいろと意見が出てきます。このあたりのやり取りが面白いですね。

この詩は、読み手に様々なことを考えさせてくれる、とても面白い詩だと思います。

 

この「読む力・・・」には、「読む力をつける」効果のある方法がたくさん紹介されています。特に、小学校の先生方に読んでいただきたい本です。

2014年11月23日日曜日

教育の情報化


先日ある小学校の公開研究会に参加してきました。

研究内容はICT教育、いわゆる情報教育です。


ICT教育は世界の潮流であることは間違いありません。ただ、これまでのアナログの部分で大切にされてきたものまで捨ててはいけないと思います。

たしかに、タブレットパソコンを子どもたちに持たせて学習させることで、たとえば子ども同士のコミュニケーションが活発に図られるようになったとか、お互いの考えを出し合い、それを練りあって、より高いレベルの思考にたどり着くことができたとか、成果はいろいろあります。


でも、それらの多くはアナログ時代にもできたことなのです。時間の短縮とか、実践後の記録保存などの点ではデジタルが優れていることはもちろんです。ただ、そのようなことよりも、たとえば、子どもたちが探究する「課題の質」「問いの質」はどうなのかということが優先されるべきでは?と考えてしまいます。

 

「デジタル社会の学びのかたち」(A・コリンズ&R・ハルバーソン著・稲垣 忠編訳、北大路書房)の冒頭の部分に「日本語版への序」という文章があるのですが、次のような内容です。

 

「新しいテクノロジは、これまでの学校のあり方に疑問を投げかけています。何世紀にもわたり、教育とは、専門家や知識、スキルに対するアクセスが制限されていること、つまり情報の欠如によって定義されてきました。」(同書・日本語版への序ⅲ)

 

まさにその通りです。これまでは学習者は勝手に知識にアクセスできず、必ず教師という先導者がいて初めて知識にふれることができたわけです。ですから、教師の教え方も当然「教授型」となるわけです。しかし、インターネットを始めとして、コンピュータの進化によって、様々な知識のデジタルアーカイブにだれもがアクセスできるようになった今、教師の手を経ずしてもだれにとっても手の届く存在になったわけです。

でも、学校はなかなか変われません。

 

「生徒たちは、自分自身の関心より、学校の教育内容は価値があるものだと信じることが求められています。」(同書・日本語版への序ⅳより)


「何のために学ぶのか」が納得できないまま、受験のために必要だからというような理由で多くの生徒は授業に向き合っています。

 

「一方、新たなテクノロジは、子どもたち自身の手で学習環境をつくり出すことを促します。」また、こうも述べています。


「一方で新しいメディア・テクノロジは、学習者一人ひとりのニーズ、目標、スタイルを支援します。」(同書・日本語版への序ⅳ・ⅴより)

 

 要するに、これまで教師主導の教授型授業の時代は、すべて教師のおぜん立てによる授業で済んだのかも知れませんが、コンピュータというテクノロジが入ってきたことにより、いやでも授業スタイルは学習者主体に変わらざるを得ないわけです。ただ、一つ危惧することがあります。

 もし、この新しいテクノロジを基礎・基本の定着と称して、ドリル型の授業で知識を詰め込むために使うのだとすると、何も変わらないことになります。

 このあたりのことを同書は次のように分析します。

 

「多くの教育現場で説明責任のプレッシャーの増すなかで、スキルの練習と、必要とされる学習内容をカバーすることに、労力の大半が費やされています。伝統的なスキルと内容理解を測定することばかりが強調されているところで、イノべーティブな授業実践が広がることはないでしょう。」

 

 この分析もその通りでしょう。かつて、アメリカのラリー・キューバンという教育社会学者が1990年代のアメリカでのコンピュータ教育の実態調査を行って、結局はコンピュータという技術革新が教室の学びを変えることはなかったと結論付けています。

 

 今のICT教育がこの轍を踏まないようにするには、このブログで取り上げている「学び」を実現することです。方向性が見えたら、あとは実践あるのみです。

 

2014年11月16日日曜日

教員研修=授業 !?



Never Underestimate Your Teachers(教師を見くびっちゃいけない)』というタイトルの本をいま読んでいます。
その中では、教師を4段階に分けています。
(ちなみに、日本の教員研修で横行している「学校一丸となって」と年次研修に代表される「ライフステージ」というのは実態に裏づけられたものではなく、単なる習慣と役所得意の年功序列=管理主義に則っているだけにすぎません。単純に、やらされる側を考えて行うよりも、やらせる側の「都合」にすぎません。★しかし実態は、この本にも書いてありますが、30年たっても新米レベルの教師もいますし、逆に数年でベテランのような実践ができる教師もいます。)

4段階よりも細かく分けられるかもしれませんが、①身につけるスキルと②よくなり続けたいという意思・意欲の2つを軸に、4分割できるということで、そうしているようです。

このことから明らかなのは、同じ学校や年代の教師を集めてみんな同じことをしても、抱えている課題やニーズは違うので、意味はありません。同じ講義を聞いても効果的ではありませんし、みんなで指導案づくりをしたり、授業の見合いっこや研究協議も時間の無駄です。聞けるもの/見えるもの/学べるものが違いますから。

何が大切かというと、教師それぞれの課題やニーズや興味・関心に見合った「differentiated, deliberate, and developmentalな(個別化した、意図的で、成長段階に即した)」練習とサポートです。
このような教員研修を体験したことのある教師は、いったいどのくらいいるでしょうか?それが決定的に少ないので、子どもたちを対象に「個別化した、意図的で、成長段階に即した」授業を行なえる教師も極めて少ない状態が続いています。教員研修と授業は、まさに「入れ子」状態にあります。★
最初から授業を変えることは容易ではありませんから、教員研修のやられ方を転換する必要があります。学校や教育委員会/教育センターで、研修のやり方を改善したい方はpro.workshop@gmail.comへぜひ連絡ください。

ちなみに、練習して身につける際の参考文献として、『才能を伸ばすシンプルな本』ダニエル・コイル著が紹介されていました。要するには、もって生まれた資質とは関係なく、一生懸命に練習と仕事をすれば、誰でも才能は磨ける、というのです。もし読まれた方は、ぜひ感想をお聞かせください。


★ このご都合主義と「入れ子」状態は、教育界で結構多く見られます。たとえば、学年や教科や教科書等で当たり前のように教える授業は、教える側(というよりも、管理する側)の都合でしかなく、教えられる側(というよりは、学ぶ側)のことは考えていませんから、よく学べることを期待するのは難しいといわざるを得ません。さらに言えば、その教科や教えられること自体が嫌いにならない方がおかしなぐらいです。
皆さんも、同じような感想を「研修」にもっていませんか?

2014年11月9日日曜日

いい先生がもっている11の習慣


 教えることに情熱的に取り組んでいる先生は、誰にとってもありがたい存在です。他の先生たちのインスピレーションとなる先生ですし、多くの子どもたちが教えてほしいと思う先生ですから。あなたは、そのような先生ですか? あなたの周りにそのような先生はいますか? 
そのような先生はどのような習慣をもっているのでしょうか?

1.教えることを楽しんでいる ~ あなたが教えることを楽しめていなかったら、子どもたちは学ぶことを楽しむことは困難!

2.違いを生み出している ~ 安心・安全と思えるだけでなく、特別と思えるクラス/授業を提供する。

3.プラスのエネルギーで充満させている ~ 笑顔も大切!

4.個人レベルで子どもたちをよく知っている ~ 知ることで、接点が持てる/広がる/よりよく教えられる。保護者をよく知ることも大切!

5.自分のベストを出して教えている ~ 子どもたちにそれを言うなら、自分がモデルを示していないと。

6.常に事前に計画している ~ 後手後手に回るとロスが多くなる。常に先取りして余裕を持って行動する。ひらめいたアイディアをメモし、どんどん計画に反映して実践していく。

7.オープン・マインドでいる ~ 誰も完璧じゃない。改善する余地は常にある。自分が見えないものを他人は見てくれるので、聞く耳は大切。フィードバックを活かす工夫を。

8.ベストにあわせた基準を設定している ~ 達成したい到達点がイメージできるかどうかは意欲につながるし、サポートの仕方も左右する。

9.アイディアを探し続けている ~ すべて自分でつくり出す必要はない。世界には似たような課題や目的をもって動いている人がいる!! あらゆるところから情報を得る努力を怠らない。

10.変化を受け入れている/つくり出ている ~ 計画通りにはいかないもの。柔軟に対応することが大切。特に教えるときは。子どもと接する時は。新しい校長や同僚と接する時は。

11.常に振り返っている ~ いい教師は、自分のしたこと(特に、授業)を振り返り、何はよかったか、何はよくなかったか(失敗ではなく、成長の過程!)を明らかにして、改善点を常に修正し続ける。


そういえば、いい学校のつくり方を書いた『いい学校の選び方』(中公新書、2004年)でも「いい教師」の特徴を紹介していました(199~201ページ)。

 子どもたちがもっている「いい授業」のイメージ(127~131ページ)や、私の「いい学校」のイメージ(5~14ページ)や「いい学校」がもっている特徴(30~35ページ)も紹介していました。ぜひ、比較してみてください。本が入手困難な方は、資料=リストを請求してください(pro.workshop@gmail.com)。


2014年11月2日日曜日

『読書家の時間』の読み合いから



『読書家の時間』という本を生活科の観点からA先生とブッククラブをしました。以下は、最後の章を読んだ後に、A先生が書いてくれたことでした。

10章を読んで》
・「主体的に学ぶ」
私もさせてあげられていないです。
私はそもそも先生の講義のような授業や、センター試験やテストでの点数がそのまま成績という学校が嫌いです。
自分が嫌だったから教師を目指したはずなのに、「分からないから」「時間がないから」と、何かにつけ自分に理由をつけながら、自分が体験したような、古典的で、教科書を中心とした、一対多の授業をしていました。
この本に書いてある実践ができたら、それが変わるのかな、と、今ドキドキしています。

・「その子らしさ」
そこを見てあげたい、伸ばしたいという気持ちが出てきました。
私はこのインタビューを答える先生の子ども側の気持ちに近い気がしました。
というか、わたしが小、中、高と抱いてきた気持ちです。
先生達は何をみているんだと。
私は正直、真面目に授業に向き合ったことが、ありません。
クラス全体がそうだったからです。
今で言う荒れているクラスというのかもしれません。
授業は先生がずーっと話をしているイメージです。
 みんな授業は聞いていないのに、態度はほとんど同じなのに、出てきた成績は全く違います。
テストの点がいつもいい子は良い成績です。何も考えを深めたりもせず、単語を覚えたらAです。
変なの、という印象だけが残って、何か違う!と思って今に至ります。

この実践(=リーディング・ワークショップ)を通して、今までの疑問がすっと解決できるような気持ちが出てきました


まだ2年目の先生ですが、とても正直に書いてくれています。
自分自身の根元の部分を呼び起こしたり、転換させてくれる経験が求められていると思います。
それには、いい本や同僚との出会いがきっかけになると思いますが、本当に活かせるようになるためには、継続的な関わりやサポートが欠かせないとも。(残念ながら、センター研修や校内研究には、この点が弱いというか考慮されていないので、変わらない/変われない状態が続くんだと思います。) 


ちなみに、私が同じ本の第1~2章から読み取れたことは以下の内容でした。(数字は、ページ数)

どのように生活科に活かせるかという観点で読みました。

1 読む力  生活する力/生きる力
  読み手  生活者

2 生活科関連の絵本を使ったブッククラブはやれるでしょう。

4 生活者ノート

5 本に夢中になる代わりに、生活科では何に夢中になってほしいですか?

6~7 教師は生活者のモデルを示す!!

10 早速、夏の間に生活者図書コーナーをつくる!! 遊びの本も含めて

11 生活者としての教師の体験大公開   15も同じ

12 読書家の時間の20分間ひたすら読む代わりに、何をしますか?

13 生活者ノートを書く

14 生活者関連の本探し/情報探し = 図書館探検

16 長期休暇中に家でやれること?

17 生活者として実践していること/したいこと

18 2人で生活者を楽しもう!!

19 生活科用のアンケートは作れますか?

27 生活科タイム中のマナーづくり

34 図書コーナーづくり

46 保護者や地域の大人や学校のスタッフに生活者のモデルを話してもらう

と、かなりアイディアが出ましたが、やりたいの/やれそうなのありますか?
すでにやれていることも結構ありますか?
これらを子どもたち対象に試しながら、教師自身が体験していくことが、子どもたちがよく学べる授業をつくっていく前提のような気がします。生活科への応用の場合だけでなく、すべての教科で。