2017年11月25日土曜日

責任の移行モデル


先週『「学びの責任」は誰にあるのか』(吉田新一郎訳、新評論)が取り上げられましたが、私も2年ほど前にこの本を読みました。そのとき、この本は多くの教師の役に立つに違いないと思った記憶があります。
    
    この本で紹介されている「責任の移行モデル」は確か、読みの指導の分野で功績のあるピアソンらによって開発された手法ですが、子供を「教師に教えてもらう存在」から「自立した学び手」に変えていくという点において、他の分野でも有効なことが示されています。
      今話題の「主体的、対話的な深い学び」も、掛け声だけはいいのですが、いざ日々の具体の授業の中でどう実現すればよいのか、様々な解説本や実践を紹介した本が次々に出版されても、「今一つピンとこない」と感じている先生方も少なくないと思います。
 

 
 そんな思いを抱いている方は、ぜひ本書を手に取ることをお薦めします。

この本の中で紹介されている「責任の移行モデル」の4段階はとても大切であるにもかかわらず、これまではそれぞれが有機的につながっていませんでした。

 その4段階とは次のことです。

①教師が焦点を絞った講義をしたり、見本を示したりする。(焦点を絞った指導)

②教師がサポートしながら生徒たちは練習する。(教師がガイドする指導)

③生徒たちが協力しながら問題解決や話し合いをする。(協働学習)

④生徒は個別に自分が分かっていることやできることを示す。(個別学習)


  この4つの段階がつながって行われれば、先ほどの「主体的、対話的で深い学び」が自ずと実現するものと思います。①の教師による講義もこれまでは、ほとんどこれが授業の中心という状況でしたが、肝心の内容が焦点化されていないことが問題でした。しかも、自分たちとは全くかかわりのないような話を突然持ち出されて、「はい、これを覚えましょう」では興味が湧くはずもありません。


  また、②から④に進むにつれて、子供たちが担う責任を徐々に重いものにしていくというのは、実に理にかなった話です。これまでは①②がなくて、③④に取り掛かるというようなことが当たり前に行われていたように思います。それではうまくいかないのは当然です。
    
    この本にはまだまだたくさん学べることがありますが、特に、若い先生方には、これからいろいろな場面でグループワークを効果的に行うために、第4章「協働学習」のところを読んでもらいたいと思います。グループワークに関係するところは、とても参考になります。話し合い活動に注目が集まりますが、形だけの話し合いでは時間の無駄ですから。

 

2017年11月19日日曜日

新刊紹介『「学びの責任」は誰にあるのか』


タイトル: 「責任の移行モデル」で授業が変わる
著者: ダグラス・フィッシャー(Douglas Fisher)&ナンシー・フレイ(Nancy Frey

「学ぶのは誰か」と問われれば、もちろん「子どもたち」ですが、実際の授業はそのようにデザインされていません。(それは、教科書ありきや指導案の存在からも明らかです!)
学ぶ側はもちろん、教える側も学び続けられる「教え方・学び方」はないかと模索しはじめ、5年以上の時間をかけて探しだしたものの一つ★が本書で紹介している「責任の移行モデル」(①焦点を絞った指導、②教師がガイドする指導、③協働学習、④個別学習)です。
これを分かりやすい図に表すと、図1-1になります。

注意していただきたいのは、これらは①から④と順番に行うのでも、常にクラス全員(研修会では受講者全員)を対象に同じ段階の活動をさせるのでもありません。たとえば、②番目の「教師がガイドする指導」をするためには、「①焦点を絞った指導」が終わっていることが前提となります。と同時に、クラスの大半の生徒(受講者)が「③協働学習」か「④個別学習」に取り組んでいることも前提となります。そうでないと、教師は少人数(二~六人)の生徒(受講者)たちを集めて、一〇~一五分の「教師がガイドする指導」を行うことはできませんから。

 しっかりと計画され、実施される指導は、生徒たちと指導する内容について把握していることを教師に要求します。★★また、継続的に生徒たちの内容理解を評価することも必要となります。★★★そして、相互に関連しあう授業によって、教師から生徒に責任の移行が徐々に、計画的に図られる必要もあります。まさに、これを実現する教え方として「責任の移行モデル」が存在します(図で表すと、図1-5のようになります)。この図では、四つの段階が相互に行ったり来たりしているところが強調されています。教師(講師)は、これら四つをうまく使いこなすことで、生徒(受講者)の学びを最大限にすることができるのです。

 本書は、これら四つの要素を、異なる教科の例をふんだんに挙げながら分かりやすく解説しています。それによって、教師主導の「授業」=教師が教え込むことから脱却し、子ども主体の「学び」が可能になります。
これら四つの要素を、教師/講師を含めた大人たちが身につけることができれば、授業や研修が変わるので、生徒や受講者の学びの「質」「量」共に飛躍的に伸びることは間違いありません。★★★★


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★ 他に見つけ出したものには、①ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップ、②一人ひとりをいかす教え方・学び方、そして③PBL~学びの可能性をひらく授業づくりなどです。

★★ 教材研究をしっかりやった上で指導案にのっとった授業は、残念ながら、後者の「指導する内容」は押さえているかもしれませんが、前者の「生徒たちのこと」はほとんど押さえていません。

★★★ 「見取り」という言葉はだいぶ前から存在していますが、その実態はほとんど伴っていない状態が続いています。見取りを実現する方法が「形成的評価」で、図5にしっかり明記されているだけでなく、四つの要素を詳しく説明している第2~5章の各章では、この項目を立てて具体的な方法が紹介されています。

★★★★ 教員研修の場合、「講義」だけで、身についたり、できるようになったりするはずはありません(焦点が絞られていないと、「退屈度」は増すばかりです!)。そして、たとえ内容のある「演習」(=③協働学習)を踏まえたとしても、④個別学習がないかぎり、難しいです。加えて、対象によっては、②教師がガイドする指導も欠かせません。何せ、身につけてしまっている負の習慣を「アンラーンする(学び直す)」必要性が子どもたちのレベルではありませんから。
こうしたことをうまくバランスさせるために何よりも重要なのが、「形成的評価」です。それによって、①~④の何を教師と生徒がすべきなのかが分かることで、「指導と評価の一体化」が実現するからです。逆に、継続的に形成的評価が行われていないと、事前に講師が決めたレールの上を(たとえ、それが効果的ではなくても)進む選択しかないことを意味しますから、結果的に残るのは教えた気になった講師(プラス何を得てほしいと淡い期待を抱いていて講師を呼んだ企画者)の満足感だけという悲しい状態が続くだけです。
  この偉大なる研修における「負の習慣をアンラーンする」ことこそ、授業レベルでの負の習慣をアンラーンする前提にないと、授業自体が変わるとは思えません。毎回の研修で、②~④なしで、ほとんど①だけの、まずい授業の見本を示され続けるのですから。日本の教員研修に携わっている人たちの中に、この事実を理解できている人は、残念ながらまだ一人もいないと思います。

2017年11月12日日曜日

PBLおもしろかった!! 新しいアイディアが生まれました!

 本は、『PBL〜学びの可能性をひらく授業づくり〜』(リンダ・トープ&サラ・セージ著、北大路書房、2017年9月)です。

 「この本の構成は、本当に読みやすかったです。最初で概観を示し、少しずつ詳細へと螺旋的に書かれていく感じは、理解が深まりました。一読して、最初の12章をもう一度読むと、さらに理解が深まっていることがよく分かり、この本の読み物としてすばらしさも感じています。
 PBLは、教師のインストラクショナル・デザインの力が試されると思いました。スタンダード(指導要領)・子どもの実態・地域の材という集合の中で、問題としてよいものを見つけ出す力は、教師のアイディアと創造力でしょう。しかし、こういうことがやりたくて僕は教師になったわけですから、腕がなるといえます!! のびのびと実践し、経験を積みたいです」と、メールをくれた横浜市の冨田先生が、読みながら付けたメモをベースに感想も送ってくれたので、紹介しますPは、ページ数です。)

● PBL3つの特徴
・学習者は、問題をはらむ状況の中で、利害関係者として問題を解決する。
・教師は、学習者が自分と問題とのつながりを感じながら学べるように、適切な方法を用いて包括的な問題を中心に据えてカリキュラムを編成する。
・教師は、学びの環境を整え、学習者の思考をコーチし、探究活動をガイドして、深い理解へと促す。(P18

● 構造化されていない問題と、子どもたちが担う役割(立場)の重要さ
・問題をはらんだシナリオの中で、学習者に利害関係者の役割を与える
・学習者が、構造化されていない問題をはらんだ状況に浸る
・構造化されていない問題は、その不完全な状況そのものがもつ力で、彼らに「知っていること」と「知るべきこと」を明確に区別する作業に取り組ませる。(P23P25)

最初、PBLとかつて私が取り組んでいた問題解決的な社会科の違いについて考えながら読んでいました。
 まず、PBLは構造化されていない、問題をはらむ状況そのものを扱うのに対し、私の問題解決的学習はかなり私が構造化し、子どもが消化吸収しやすいようにしていました。問題解決的学習は、国語や算数のように、完全に系統立って単元の授業計画を配列させていませんでしたが、私自身が子どもたちの学習の舵取りをして、学びやすいように経路を選択していました。PBLは、役割をつかって問題の利害関係者となり、その立場で自分の意志で探究していくので、その学びの責任や自由度はとても高いです。
「役割」というのは、キーワードだと思いました。一つの資料や問題記述を見ても、その役割(立場)によって見方・考え方は大きく違うことを学習に利用しています。子どもたちは、子ども(学び手)の立場以外にも、いろいろな社会的な立場に立って学習を探究するので、多様な立場からの考える力を育むだけでなく、立場を生かして学習を楽しむことができます。立場を変えれば、同じものを見ても全く違うものになるという学習経験は、これから社会に出て実際の問題を解決する子どもたちにとって、本当に大切です。
 一般的な学習だったら、次は農民の立場で、次は武士の立場でと、画一的に教師の指示の下に行われていくことはありますが、PBLでは、小グループがそれぞれ異なる立場を担いながら、同時に学習を展開し、学習のフィールドで役割になった遊ぶ感じがすごく楽しそうです。

●問題記述
・与えられた問題を解決する過程で学習者に「今の段階で取り組むべき問題を具体的に記述したもの」(問題記述)を書き表すようにさせています。
何度も繰り返して問題記述を書き改めてきたことで明確になった本質的な課題と、それが満たすべき条件に照らし合わせて、これらの解決策を評価します。(意思決定マトリックス) (P27
・コーチとしての教師の仕事は、簡単な問題記述で満足させず、タマネギの皮をむき続けさせることなのです。(P48)
・問題記述では、「〜という条件の下で、どうしたら私たちは〜できるだろうか?」という問いかけのひな形を使うことがよくあります。(P53)
・自分たちの手で現実の問題を明確にしていかなければならないのです。(P85)

 そして、この問題記述の考え方が、私には抜け落ちていたと感じました。
 ワークショップで「選書」や「問い・テーマ選び」など、学習プロセスとして簡単には表現するものの、本を選んだり、問いを作ったりすることは非常に難しいし、さらにそれが授業ではできても、日常生活の中でまったく役に立たないというのは、よく見られることです。
 日常生活は、目の前の状況を問題として捉えようとするプロセスから入って、問題解決がスタートします。どのように問題を捉えるかというところから始まるのです。それに対し、授業場面では出来上がった問題が提示されます。問題を捉えるというプロセスが抜け落ちていて、そこに現実に存在する問題(←これが、構造化されていない問題)のような複雑さはありません。
 選書で言えば、いつも児童書コーナーでその子の学年相当の本がきれいに並べられているようなもので、本当の選書力は、雑然とした情報の山から読みたい本を検索するところから始まるでしょう。「問い・テーマ選び」でも、子どもたちの様子を見ていたら分かるように、問いやテーマを発見することこそ、本質的な学びの肝であり、それができればほぼ探究的な学習は自立的に進んでいく確証を得たようなものです。けれど、本当の「問い・テーマ」は、複雑な現実社会の中で試行錯誤して、すこしずつ具体化していくもの。授業のように、黒板の一番上に学習問題が出ることなどないのです。
 目の前の状況を問題として捉えるという学習プロセスをしっかり授業の中に取り込んで、子どもたちに日常生活で生きる問題解決能力を身につけるのがPBL。目の前に食材が置かれるように問題が運ばれてくるのがわたしたちの学校の授業のように感じます。問題解決的学習は子どもから問いを生むという表現が使われますが、教室全体で一つの学習問題を追っていくために、一人ひとりが問題を捉える力や具体化する力を養えるとは思えません。けれども、PBLでは厳しくも、資料や立場から「知っていること」「知りたいこと」「思いついたこと」で複雑な現状を整理し、問題記述を一人ひとりが作成することを通じて、目の前の問題を具体化する(=学習問題をつくる)という学習プロセスを踏みます。最初の問題作りを丁寧に、そしてしっかり子どもたちに委ねて探究へと進ませるところが、私にとっては驚きでした。子どもにとって、日常生活の困った状況から問題を明確にすることこそ、本当に役立つ力です。

●学習サイクル
PBLの単元のテンプレート (P48)
・問題との出合い:蚊の問題に出合うための「指示書」
教師の環境の工夫
教師が活動目標を提示したり、問いを立てたりしない。子どもが「指示書」から「知っていること」「知るべきこと」「思いついたこと」を整理し、問題記述を作る。(P52)
・重要だと思って選んだ「知るべきこと」が共通する学習者同士で3〜5人のグループ(専門家グループ)をつくり、協働して活動するのがよくあるやり方です。そして情報収集が完結した時点で、それぞれの専門家グループからひとりずつ集まって新しいグループを作り、収集した情報を新しいグループ内で共有するのです。「ジグソー」
 問題記述の後に専門家グループ。最初から専門家グループではない!!(P55)
・問題に出合う・知っていること、知るべきこと、思いついたことを特定する・問題を定義する(テーマ・問いを立てるプロセス)情報を集め、共有する (P67)

 学習サイクルについても、かなり今までと違う視点が入っていると思いました。最初の問題記述を作ってから、ジグソーをうまく使って、グループ学習でしかも一人ひとりが学びの責任を感じられるような学習デザインがされています。グループ学習で、友達に頼りすぎて依存的な学習になる子の課題や、支援を得られないで孤立化してしまう課題を、うまく解決へと導いています。そして、問題記述に立ち返らせることで、問題をより具体化していくというのも、学習の目標や問題解決から逸れないための自己評価の方法として機能していますし、学習が深まれば深まるほど問題記述が具体化し、カンファランスの材料や学習の指標になるという点にも、なるほどという思いでした。問題記述に立ち返るというのが、ポイントです。

●評価がやる気を引き出す
・各グループがそれぞれ解決策を発表して、それぞれのグループの発表の後で生徒たちが審査委員会の委員と質疑応答する
・評価は、教師と生徒が一緒に作成したルーブリックによってなされることが多い。(P59)
・学習者とは、自分の努力の結果を知りたくなる存在です。自分たちの取り組みをきちんと考察し評価してくれる人がいると信じられるとき、彼らは情熱と厳しさをもって任務を引き受けるのです。(P87)

2017年11月5日日曜日

小中連携を推進するための鍵


 30年以上も前のことになりますが、ある中学校の職員室での会話です。
「今年入学してきた1年生は小学校でどんな教育・指導をされてきたんだろうか!?まったく生活面の指導ができていないよ。困ったものだ。」

 続いて、別のある小学校の職員室での会話です。
「小学校ではあんなにいい子だったA君が、中学校にいったらあんな不良になるなんて、どうしたのかしら!?」 

 このような発言は、小学校と中学校でなされている教育・指導の実態を知らない、あるいは理解しようとしない状況から生まれてきます。また、どちらも子どもの発達・成長や思春期の特徴についての無理解、友人やクラスの仲間、教師、家族その他様々な環境との相互作用によって起こる子どもたちの思考・感情・行動の変化に対する無理解、学習面と心理・社会面、進路面、健康面との相互影響関係についての無理解などからくるものです。 

 8月6日の「学級担任制と小学校教育と9月3日の「教科担任制と中学校教育では、それぞれ小学校教育と中学校教育の特徴・良さや課題およびそれを解決・改善するための方策について提案しました。今回は、これらの内容と関連する小学校教育と中学校教育の間にある大きな溝を埋めて、子どもたちが安心して学べるようにするための「小中連携」について考えてみました。 

「中1ギャップ」の解消、および教師が義務教育9年間を見通して子どもの発達・成長にかかわることなどを主な目的として、15年ほど前から多くの地域で「小中連携」や「小中一貫教育」が行われています。そのため、さすがに最初に紹介したような発言はほとんどなくなったと思います。 

 小中連携の取り組みとしてよく行われているのが、小学校6年生が年に2~3回中学校での学校生活を体験する取り組み「体験入学」です。6年生が中学校で、国語や社会、数学、理科、英語、技術などの授業を体験したり、生徒会による全校集会に中学生と一緒に参加したり、部活動の体験をしたりします。これらの取り組みは、小学校6年生の子どもたちの中学校生活に対するレディネスを高めるためのものです。 

 これらのほかに、さらに、中学校に入学する子どもたち一人一人の学習面や生活・行動面、身体・健康面、運動能力などの情報が、小学校から中学校に伝達されます。★ 

 本質的な意味での小中連携とは、小学校教育と中学校教育を担っている教師同士が互いに対する敬意をもって、お互いの教育実践を理解し、子どもの自己実現を図るための基盤となる信頼に満ちた学級経営と、強みやレディネス、興味関心、学習スタイルなど、一人一人の違いに応じられる授業・学習指導を構築するための連携・協同を実現することではないでしょうか。 

それを実現するために中学校区レベルでできる具体的な取り組みは、次の3つです。 

1.特別支援教育のニーズのある生徒を含め、学習面や生活面において気になる生徒については、中学校に入学してから少なくとも1年間は、「フォローアップ」の情報交換・学校生活適応のための支援の機会を定期的にもつ(夏休みを含めて年に2~3回程度)。★★ 

2.夏休みを利用して、教科や総合的な学習、特別活動などにおいて「質問づくり」を生かした子どもの発想や疑問に基づく単元開発、または「「違い」を力に変える学び方・教え方」による一人一人の違いに応じられる単元開発、あるいは「責任の移行モデル」で学習を進めるための単元開発を協同で行う。★★★ 

3.夏休みを利用して、特別支援教育のニーズのある生徒を含め、学習面や生活面において気になる生徒について、子ども一人一人の興味関心、レディネス、学習スタイル、強み・自助資源、援助資源などに基づいて「個別の指導計画」や「チーム援助計画」を協同で作成する。 

 1は、義務教育9年間の子どもたち一人一人の発達・成長のために学区の小中学校の教師が力を合わせるという意味で、この「フォローアップ」は重要です。 


3の取り組みを行う上で参考になるのが『石隈・田村式援助シートによる子ども参加型チーム援助』[図書文化]です。今までのチーム援助計画の作成に「当事者」である子ども本人の思い・願い・要望を取り入れて、子どもと一緒に学習や生活について考えていく画期的なものです。 

 これらの取り組みを通して、学校種の垣根を越えた教師同士の新たなコミュニティができ、様々な学びが生まれるはずです。ぜひチャレンジしてみてください。 



★  これらを参考にしながら中学校で新入生のクラス編成をします。最近は、子ども理解ができている小学校の先生方にクラス編成をしてもらったり、中学校でクラス編成した案を小学校の先生に確認してもらったりしています。私の勤務してきた地域では、小学校6年生一人一人に関する情報収集は、中学校3年生の学級担任が小学校6年生の学級担任から聞き取りをして行います。さらに、特別支援学級の学級担任同士、養護教諭同士による情報交換を行います。 

★★  参加メンバーは、小学校6年生のときの学級担任と中学校1年生の学級担任(特別支援学級の担任も含みます)+生徒指導主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、スクールカウンセラー、管理職です。 

★★★  具体的な進め方は、以下のとおりです。

(1)小学校の教員と中学校の教員が4~5人程度のグループをつくり(ほとんどの中学校区では小学校の教員の方が人数は多くなります)、単元開発する教科などを一つ選択します(小学校の教科でも中学校の教科でもかまいません)。

(2)(1)で選択した教科などで2学期あるいは3学期に学習する単元の中から、①「質問づくり」または②「「違い」を力に変える学び方・教え方」、あるいは③「「責任」の移行モデル」を基にして行う単元を選びます。

(3)(2)で選んだ単元について、単元の目標を考え、それを達成するために①~③のどのアプローチが適しているかを検討し、アプローチの仕方を決定します。

(4)(3)で決定したアプローチ方法に基づいて、単元の具体的な学習の流れ・学習活動についてグループで話し合い、単元の学習指導計画を作成します。

※実際には、(2)と(3)については、単元とアプローチ方法の両方を一緒に考えながら同時進行で選択・決定してよいと思います。