2012年2月26日日曜日

PLCの評価基準表へのコメント

 吉田さんの前回の文章をもとに考えたいと思います。



『◆第1段階(一番低いレベル)は、ほとんどの学校が現在行っている校内研究・研修です。年間計画を立て、各担任や専科の教員が、年に1回は研究授業を行っているやり方です。年に数回は、指導主事を含めて外部講師を招聘し、指導を受けています。』



 これはその通りだと思います。以前、私も指導主事として管轄内の小中学校を訪問していましたが、3年目くらいからこれは何年続けてもあまり効果がないことがわかりました。でも、これが多くの学校での「教員の資質向上」策のすべてであろうと思います。


 ここから抜け出さなくてはいけません。



『◆第2段階は、相互の授業参観とインフォーマルなフィードバックのやり取りが中心に行われています。第1段階ではフォーマルな形式のやり取りが中心なのに対して(その分、得るものも少ない)、頻繁なインフォーマルなやり取りの方が格段に得るものも増えます。管理職による授業参観も頻繁に行われ、適切な授業改善のためのやり取りがこのレベルでも展開しています。★』



 現在私が勤務する学校では「相互参観授業」に取り組み始めていますが、まだまだ入口にとどまっている状況です。次年度はさらに推奨して、日常的にできるようなレベルにもっていきたいと思います。


 昨年は校内ネットワークのメールを利用して、テキストを決めて「オンラインの読書会」を半年やってみました。


最初の読書会は国語科教員と図書館司書職員と私を入れて5人でした。これはお互いによい学びがあり、授業改善にもつなげることができました。


次に学校全体でもやりましたが、これはあまり職員の反応はよくありませんでした。私の説明もよくなかったことと、忙しい時期に重なったことなどが原因であったように思います。私は20,30代の職員には個別に読むべき本を与えたり、課題を与えたりするようにしています。40代後半以上の人にはヒントは与えますが、どこまでやっているかチェックはしていません。残念ながらそこまでフォローする時間はありませんし、自分から変わろうとする人が本当に少ないからです。



 さて、次の段階です。


 新しい授業に関する情報を追究する人が以前よりも減っていると思います。学校の旅費などは限られていますから、身銭を切って研究会に参加するぐらいの意欲がほしいものです。


 前任校では、この旅費を学校として用意するために、各種団体の「研究助成」公募にたくさん応募しました。ある年は年間100万円近く集めることができて、職員を他県の公開研究会に大量に参加させることができました。そうでもしないとなかなか他県のいい学校を見る機会などありません。このあたりも管理職の工夫だと思います。



『◆第3段階は、第2段階に加え、学校内には存在しない教え方・学び方を積極的に収集し、それを授業で積極的に試している状態です。(第2段階までで陥りやすいのが、「ヘタな授業の真似し合い現象」です。同僚間で「こういう授業をやりたい!」と思えるようなものがない場合は、その情報を広く学校外に求める必要があります。圧倒的多数の教師は、この努力をしていません。教科書をカバーすることに追われて。生徒指導や部活動に追われて。その他の雑用に終われて。


でも、教師としての優先順位で一番高いのは、これしか考えられないと思います。


その時間と環境と情報を提供するのが管理職と教育委員会のスタッフの役割です。


★★間違っても、教師が達成感や充実感を味わえない研究や研修をやり続けることではありません。★★★)』



「時間と環境と情報を提供するのが管理職と教育委員会のスタッフの役割」であることは十分に肝に銘じておきたいと思います。


要するに、学校教育をよくするためにはこのあたりのことをわかっている校長がたくさん出てくればいいのです。教育改革はつまるところ「いい校長の養成」の問題です。



最終段階である、次の段階が実現できれば本当にやりがいのある職場になります。


そうすれば、精神疾患で休んだりする教員の数も減るのではないでしょうか。



『◆第4段階(目指しているレベル★★★★)は、第2、第3段階に加えて、すでに「こんな授業をやりたい!」というイメージが持てている教師が大半で、日々の授業(実践)を振り返り、それを次の授業に活かし続けている状態です。


教師たちが絶えず学び続けている(=ワクワクする他所の授業実践に関する情報を恒常的に入手し、自分や同僚の実践を振り返ったりする)ことを通して、刻々と、授業改善が行われていることが、教師たち自身はもちろんのこと、生徒たち、管理職、親も認識できる状態です。つまりは、2月12日に紹介した図が行われている状態です。・・・』


 


学校の主体性・自律性が発揮されてこそ、本来の「学びの場」となります。


経済不況や国の借金問題から、公務員バッシング、さらには点数化された学力のみに目を奪われた学力向上キャンペーンと、この5年ぐらいは様々な施策に現場が翻弄されてきたというのが実感です。それによって問題が解決されたかというと大いに疑問です。


やはり、学校が自律的に動けることが一番大切なのだろうと思います。

2012年2月19日日曜日

PLCの評価基準表 ・ その1

いよいよ教師が学び続ける学校(PLC)づくりのための要素と具体的な方法を紹介して行きます。
 今回は、そのシリーズの第1弾です。

 昨年末アンケートで、自分の学校のPLC度を評価していただいたわけですが、その時点ではまだ評価の視点を提示していませんでした。皆さんがどのように評価するのか見てみたかったからです。(この分野は、日本においては未開拓の分野です。このことの重要性がまったくと言っていいほど認識されていません。)

 今回は、PLC(=教師が学び続ける学校)を構成すると思われる要素を5つにまとめました。
 以下の5つの視点で、自分の学校のPLC度を評価すると100点満点で何点になりますか?(各項目、それぞれ20点として)

① 子どもたちの学びに焦点を当てて授業がされている度合いはどれくらいか?
② 教職員がいくつかのチームに分かれて、相互に協力し合いながら常時学び続けているか?
③ 教職員は、常に好奇心とオープンさをもって、ベストの学び方・教え方を探究し続けているか?
④ 授業改善の方法として、研究と実践に割いている度合いはどれくらいか?
⑤ 結果志向の度合いはどれくらいか?

 上の各項目を3段階ないし4段階に区切って評価できる形にすると、「評価基準表」ができあがります。
「評価基準表(ルーブリック)」と言われて、ピンときますか?
 それは、評価をガラス張りにするだけでなく、単に教師による評価ではなく、生徒たちの自己評価や修正・改善まで可能にする手段です。指導案に書く評価規準とは、威力が比べものになりません。
 もちろん、人事評価や学校評価にも使えます。逆に使わないと、単なるABCなどの記号だけでは、何をどうすることが改善につながるのか皆目わからないままが続くだけです。

 上の5つの項目については一つずつ詳しく書いていく必要がありますが、簡単には説明できないので、順番にいきます。
 今回は、④の授業改善の方法として「研究ないし研修」として取り組まれていることと、「実践」として取り組まれていることの度合いについてです。
 4段階で紹介します。(通常は名前の通り「表」の形になっているので、「評価基準表」といいますが、ここでは各段階を箇条書きの形で以下に示します。)

◆第1段階(一番低いレベル)は、ほとんどの学校が現在行っている校内研究・研修です。年間計画を立て、各担任や専科の教員が、年に1回は研究授業を行っているやり方です。年に数回は、指導主事を含めて外部講師を招聘し、指導を受けています。

◆第2段階は、相互の授業参観とインフォーマルなフィードバックのやり取りが中心に行われています。第1段階ではフォーマルな形式のやり取りが中心なのに対して(その分、得るものも少ない)、頻繁なインフォーマルなやり取りの方が格段に得るものも増えます。管理職による授業参観も頻繁に行われ、適切な授業改善のためのやり取りがこのレベルでも展開しています。★

◆第3段階は、第2段階に加え、学校内には存在しない教え方・学び方を積極的に収集し、それを授業で積極的に試している状態です。(第2段階までで陥りやすいのが、「ヘタな授業の真似し合い現象」です。同僚間で「こういう授業をやりたい!」と思えるようなものがない場合は、その情報を広く学校外に求める必要があります。圧倒的多数の教師は、この努力をしていません。教科書をカバーすることに追われて。生徒指導や部活動に追われて。その他の雑用に終われて。
でも、教師としての優先順位で一番高いのは、これしか考えられないと思います。その時間と環境と情報を提供するのが管理職と教育委員会のスタッフの役割です。★★間違っても、教師が達成感や充実感を味わえない研究や研修をやり続けることではありません。★★★)

◆第4段階(目指しているレベル★★★★)は、第2、第3段階に加えて、すでに「こんな授業をやりたい!」というイメージが持てている教師が大半で、日々の授業(実践)を振り返り、それを次の授業に活かし続けている状態です。
教師たちが絶えず学び続けている(=ワクワクする他所の授業実践に関する情報を恒常的に入手し、自分や同僚の実践を振り返ったりする)ことを通して、刻々と、授業改善が行われていることが、教師たち自身はもちろんのこと、生徒たち、管理職、親も認識できる状態です。つまりは、2月12日に紹介した図が行われている状態です。
生徒たちが、主体的に学習に取り組み、各教科が好きになり、各教科で身につけるべき知識やスキルを確実に自分たちのものにしている状態です。さらに言えば、「自立した教師たち」が「自立した学び手たち」である生徒たちと、自分たちの授業を一緒に作り出している状態です。そこには、教科書をカバーすることに追われるような状況は欠片もありません。

 「評価基準表」と「実践にどれだけこだわるか」の大切さの両方を理解していただけたでしょうか。

 私は、20年前にほとんどの学校や教育センターで、第1段階しか行われていないことに唖然としてしまいました。「こんなので、学べるはずがない!」と。
 それから約10年間、より効果的な方法を探し求める中で見つけたのが、以下に紹介する方法です。それらのほとんどが日本では見つけられなかったことが、カタカナ文字が多い理由です。
 第1段階から第4段階までで具体的に使える方法を、『効果10倍の学びの技法 ~ シンプルな方法で学校が変わる』(PHP新書)=太字『学びで組織は成長する』(光文社新書)=斜体文字から紹介します。(太字+斜体は、両方で紹介されています。)


 <以下は、メルマガの続き>


第1段階
研究協議を、より学びのあるものに(「大切な友だち」という方法)
ワークショップ

第2段階
ジャーナル
・ シャドーイング
相互コーチング
・ メンタリング


第3段階
学習サークル
・ ブッククラブ

他校訪問
お役立ち情報誌
週間ジャーナル
プロジェクト・チームアクション・リサーチ

第4段階 ~ 2月12日の実践を磨き続ける図が展開している状態
ジャーナルのブログ化とそれへの相互フィードバック
メーリングリスト
・ 自己開発計画+チーム改善計画
・ アクション・ラーニング


 基本的に、従来の「研究」や「研修」の居場所はほとんどない、ということです。いまのままの研究や研修に時間を割くことは、時間とエネルギーの無駄づかいです。大切なのは、イベント的にすることではなく、継続的にすることだからです。ぜひ、より効果的な方法を活用して、教師の学びを作り出してください。それも、押し付けでやらせるのではなく、進んでやりたくなる方法を一緒にしたり、紹介する形で。

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★ 第2段階の項目は、当初、「第1段階に加えて」相互観察や相互コーチングやメンタリングを、と書いたのですが、第1段階のやり方を続けることはどう考えても効果があるとは思えないので、削除しました。

★★ この重要な役割の認識が極めて薄く、しかも方法を持ち合わせないことが、私に『校長先生という仕事』を書かせました。

★★★ 相変わらず校内研修、センター研修の主流を成しているのは、誰が決めたのかも今となってはわからないスケジュールにその年の担当者が脈絡のないテーマを並べ、講師を探すようなことをしていますから、一貫性がまったくありません。「私たちは、計画通りにやりました」と言えるためにしているだけです。教師は、それに大人しく従うだけ。これが、教師たちが教室に戻った時に、子どもたちを対象にした授業や時間割の悪いモデルになり続けています。脈絡のないものをひたすら我慢して大人しくやり過ごすのが、研究であり、研修であり、授業であるという。

★★★★ 目指しているレベルを含めて、第2段階以上は、質的にも量的にもこれで満足というものはありません。回数も、負担のない程度に多くです。理想は「日々」ですが、ここでは「刻々」としました。それに対して、第1段階は、回数を最初から限定しています。学びに回数などあるはずがないのに。

2012年2月14日火曜日

指導者が変わらなければ!!

プロ野球と教育の類似性について、スポーツ誌「Number」で、以下のような記事を見つけました。★

ダルビッシュ流出はNPBの危機!?
MLBスカウトが語る日本球界の病巣。


主な見出しだけを掲げると、以下のようなものです。(上をクリックすると、全文が読めます。)

旧態依然の指導法が日本人選手の進化を鈍らせる!?
「日本の現場を見ていると、このままじゃダメだと思う」
中学野球の指導法を改革すること。
指導者が変わらなければ、日本球界は変わらない。
日本スポーツ界の指導者全員が世界に目を向ける時代。


上に書かれていることとまったく同じことを、学校教育の現場および教育センター等の教員研修の場で、私は90年代の初頭に感じてしまいました。教師たちのイキイキとした姿に出会えなかったのです。
そして、先のアンケートで過去20年間、何も変わっていないことも、証明されました。

教師一人ひとりは、いい人たちです。研修で短時間しか接しませんが、それはつくづく感じます。そのいい人たちが、元気になれない、イキイキできない仕組みというか、制度の中に置かれています。子どもたちは、その先生たちに日々接し、教わります。

何が問題かというと、仕組みであり、制度です。一人ひとりの先生はそれを変えられませんが★★、上のプロ野球界と同じで、指導者(学校教育で言えば、学校の管理職と教育委員会の管理職および指導主事)が変われば、今の仕組みや制度の中でもいくらでも変えられることはあります。

学校や大学教育に比べると、プロ野球の方がはるかにましと言えます。すでに、それなりの交流はありますから。野茂に始まり、その後イチロー、長谷川、佐々木、松井・・・そして今年のダルビッシュとすでに何人も海を渡っていますから。
教育は、鎖国状態が、いまだに続いています。(国をあげて「国際化・情報化」を80年代から言い続けているのにです。)

ぜひ、目を世界に向けてください。
フィンランドだけではありません。
他の北欧諸国に。★★★
オランダに。イタリアに。
カナダに。
オーストラリアに。ニュージーランドに。
シンガポールにも。
そして、いろいろな革新の芽を生み出し続けているアメリカにも。



★ 類似しているのは、教育とプロ野球だけではありません。福祉、環境、政治等、ほとんどの分野で同じことが言える気がします。でも、サッカーのように世界に通じるのを示しつつある分野もないわけではありません。(サッカーは、ドイツ人のクラマーさんを1960年に招聘したところから始まっています。)

★★ もちろん、仕組みや制度は変えられませんが、自分の実践は変えられます。自分のクラスの中でやろうと思えば、いくらでもやることはあります! しかし、情報が提供されませんし、情報を自ら収集する人は極めて少ないので、旧態依然とした教師主導の授業をやり続けることになります。ほとんどの研修や研究では、そのためのモデルを見せられ続けます。

★★★ 北欧が先進的なことに取り組める最大の理由は、英語で情報収集をしているからです。そして、小回りの効く国の規模だからです。一番大きなスウェーデンでさえ、神奈川県と同規模です。はっきりいって日本の規模で何かをしようとする限り、改善は期待できません。学校や教育委員会のレベルで、新しいことに果敢に挑戦しない限りは。

2012年2月12日日曜日

アンケートの結果発表

お待たせしました。
 以前、このメルマガで尋ねたアンケートの結果を発表します。
 (しかし、読者の結果ではありません。あまりにも回答が少なくて、分析できません。)
 ある教育委員会の会議に参加していた小中学校の管理職に協力してもらいました。教育委員会が主催していたこともあって、ほぼ全員の12人が回答してくれました。
 質問項目は、PLC便りに関連するもの以外はほぼ同じです。

 今回焦点を絞るのは、以下の2つの質問です。(あなたは、どのように答えますか?

1)Professional Learning Community(=プロの教師集団として学び続けているコミュニティとしての学校) として自校/自分が属する組織を採点すると100点満点で何点ぐらいですか?
2)PLCということで、すでに実施していること/やろうと考えていること:


1)の回答には、最低が40点、最高が80点でした。
 内訳は、上記の2人以外に、50点が4人、70点も4人、75点が2人で、計12人です。

2)の具体的にしていること/やろうと考えていることとしては、
    ①授業研究 2人
    ②相互授業参観+話し合い 2人
    ③校内研修の充実 4人
    ④授業改善
    ⑤わかる授業
    ⑥民間研究・私立校から学ぶ
    ⑦自己研修
 が書かれていました。
 ①と②は、両方あわせて「授業研究」と捉えられると思いますし、④と⑤もこれに含められると思いますから、6人があげていることになります。
 ③の中には、「学習集団として学級の質を高める研修」「全職員が同じ方向を向いた校内研修に取り組む」「週一回の若手との学級経験研修、アンダー40の職員の学習会(不定期)」が含まれますし、⑥と⑦も広義の「校内研修」に含められますから、こちらも6人です。
 要するには、12人全員が「授業研究」と「校内研修」をあげたことになるわけです。

 さて、これらの回答に対して、どのような感想・印象を持たれましたか?


 私の感想を書きます。
 まず何よりも、12人だけの回答というよりも、全国の学校の状況をとてもよく表している、です。
1)については、高すぎる。
2)は、方法があまりにも少なすぎる。
  というか、効果的でない方法に固執しすぎている、です。

 1)の点数をあえて言えば、10点に届く学校は存在しないと思います。
 これ(=やるべきことをほとんどやれていないという現状)は、逆に言えば、すべての学校がすごいポテンシャル(潜在能力)をもっていることを意味します。それだけ伸びしろが大きいということですから。なお、この点数については評価基準(=具体的な点数の上げ方)が示されないと納得できないという方もいると思うので、後日紹介したいと思っています。

 2)の状況は、PLC便りの第1号で紹介した学校が抱える課題(特に、②と④を参照)が、20年経ってもそのままであることを明らかにしてくれています。

 いま「学力向上」が叫ばれ、そのことで多くの人が振り回されています。
 残念ながら、テストをより頻繁にすることや、テストの結果を分析することでは、学力向上にはつながらないのに、そうした無駄な時間と労力を注ぎ込んでいる人が少なくありません。

 学力向上(というよりは、子どもたちの「学びの質と量を向上」)する最も確実な方法は、PLCを実現することです。それ以外の方法はないと言ってもいいぐらいです。教師が学び続けていないで、子どもたちの学びの質と量がよくなるはずがありませんから。

 その際、求められているのは、「研究」や「研修」ではありません。「日々の実践」です。
 イベントとして行われる研究や研修では、授業の改善が図られないことは、過去数十年の経験から明らかなのではないでしょうか。(「機能していないことをさらにがんばっても、よくならない」と言ったのは、確かアインシュタインのように記憶しています。がんばるなら、視点を変えない限り、方法を変えない限り!!)
 授業は、日々の実践の改善でしかよくなりません。わかりやすい図に示すと以下のような感じです。(画面をクリックすると拡大します。この中には、「研究」「研修」という言葉を一切使っていません。) 

2012年2月5日日曜日

人材育成

 人材育成は教育の世界だけでなく、今やどこでもその重要性が高まっていると言えます。


 今、私は地区校長会の研修担当をしています。


 2年後のある大会での研究発表が予定されているので、それを目標に共同研究をしています。与えられたテーマは「創造力と使命感に満ちた教職員の育成」です。



 「創造力」については吉田さんの著書(「効果10倍の<教える>技術」PHP新書 p.181)でも紹介されているジョアン・ダルトンの言葉を参考にすることにしました。


 「創造力は末広がりの思考と、批判的思考力に深く結びついている。」(ジョアン・ダルトン「Adventures in thinkingJoan Dalton & Thomas Nelson 1985)


 そして、この創造力は具体的には「臨機応変の対応力、自主性、寛容さ、情報を共有する姿勢、自信などの形で表れる」と説明されています。



 これまでは「正解主義」で閉じていた学校にあっては、その構成員である教師も「前例主義」で行動していました。しかし、変化の激しい時代にあっては、「前例主義」は通用しなくなっています。


 そこで、教職員の「創造力」を育むためにも、校長には前例主義でなく、その学校の実態をよくつかんで、新たな発想で取り組めることを積極的に取り入れていくことが求められます。「自主性」なども学校行事のプロジェクトを実行していくなかで、育てられるものと思います。


 また、「臨機応変の対応力」も「危機管理」に関連して育てられるでしょう。


 


 次にもう一つのテーマである「使命感」を考えます。


 先行研究をさがしたところ、京都市総合教育センター発行の平成14年度研究紀要が参考になりました。


 なかでも「教員自らが力量を高めるための研修のあり方」を先行研究として参考にしました。


それによると、「教育者としての使命感」は「自主的に様々な研修会に参加しようとする意欲」「教材研究を徹底してやろうという追究の態度」「子どもたちのことには最後までかかわろうという責任感」「子どもの指導に情熱をもって取り組む態度」の4つの観点でとらえられています。


 つまり、「教育者としての使命感」を「意欲」「追究」「責任感」「情熱」の4つの観点から見ていこうというものです。「意欲」「追究」の2点については、「研究授業/授業研究」という研修のなかである程度、育てていくことができると思われます。


また、「意欲」⇔「目標の明確化」「自信」「責任感」「自発的欲求」という双方向の関係もあります。これらの項目は互いに関係しており、簡単ではありませんが、育成の方向性は見えてくると思います。


ある人の指摘によると『「使命感」の基礎にあるものは、「自信」である』という考え方もあります。そうなると、仕事に自信をもてるような職員を育てるには、「やる気をおこす職場風土」をつくることが求められるということにもなります。


このあたりは、日々の仕事のなかで、いわゆるOJTが大切だということになります。


「やる気をおこす職場風土」は以前にもふれたように様々な方略があります。ビジョンの明確化やそれを実現するための手立て、組織体制づくりなど、すでに広く紹介されているやり方をうまく取り入れていけば実現可能なことです。


そして忘れてはならないのは、学校では校長の「学びのリーダー」としての強い自覚が必要だということです。


私の経験から言うと、これまでの学校経営には校長の「学びのリーダー」という視点が弱かったように思います。また、現在でもどちらかというと管理的な面、特に服務監督とか人事管理ばかりが強調される傾向があります。教職員の不祥事などによってどうしても「管理」が前面に出てしまうのですが、「学び」が疎かにされると学校は必ず「荒れ」の現象を迎えることになります。



今週はうれしい発見が一つありました。


今年度の「学校評価」アンケート結果が出たのですが、そのなかで「自分は今の学校が好きである」と「学校生活は毎日楽しい」の2項目が2年連続で肯定的回答の割合が増えたことです。


「学校が好き」は2年前が82.1%だったのが、昨年は89.5%、今年は90.5%となりました。「学校は毎日楽しい」は2年前が85.8%、昨年が86.8%、今年が90.7%でした。


どちらも昨年と今年で5ポイント以上の上昇です。


この2年間私がやってきたことの効果の裏付けとなるデータです。(自己満足かもしれませんが)


ただそれで満足するのではなく、否定的な回答をしている生徒の数をさらに減らしたいと思います。



このような成果があると、それが自分の仕事の自信につながります。さらに次の仕事への意欲がわいてくるということで、「やる気をおこす職場風土」が作られていくのでしょう。