2021年12月5日日曜日

学校を協働の学びの場に

学校には「ハック」(意図的に手を加えて、より良いものにつくりかえること)すべきことがたくさんあります。★1

なかでも、ハッキングの必要度が高いものは「校内研修」ではないでしょうか。みなさん、これまでの校内研修で、主体的に、意欲的に、深く学んだという実感はありますか?それとも、押し付けられた、強制された、仕方なく「つきあった」程度の関わり方でしたか?

教員の学びについて研究している研究者は、「よい研修というのは本質的、意図的で、日常に根づいていて、体系的なもののはずである」★2 と述べています。参加する意味を感じられず、学校現場とはかけ離れた内容の、質の低い研修を押し付けられているというのが、実態なのだと思います。同書はさらに、「背景、経験、興味、環境、能力に関係なく、教師は既製品のように標準化された教員研修を押し付けられています。(略)教師は、工場で大量生産をおこなっているロボットのように扱われています。そこには、協働も、すぐれた実践の共有も、組織のビジョンや目標の達成もありません。」と実に手厳しい。

では、どのような学びの場が教師にとって必要なのか。同書の筆者らは、「個人的な「パッション・プロジェクト(★3 PLC便り 2021年5月2日)」や協働的な学びの機会こそが、教育界における未来の教員研修であると確信しています」と述べています。

ここに、新しい校内研修へのヒントがあると思います。一人ひとりにあったもので、意味があり、実践に応用できるものであること。そして、教員同士がともに学び、成長し、組織としてのビジョンや目標を確立できるような校内研修です。

そのような校内研修は、どうすれば実現するのでしょうか。本書での提案をもとに考えてみましょう。

◯学びに選択肢があるようにすること
誰かが決めて、誰かが実施するものを、受け入れるだけの学びでは、オーナーシップは生まれません。自分自身が選び、決定し、実行したものは、真の学びとなり、仲間と共有したり、発信したい情報となるはずです。

◯協働的な学びにシフトすること
教師が協働で学べる方法は様々です。エドキャンプ★4、同僚とのブッククラブ、TwitterなどのSNSやネットワークを通したやりとり、アイデアの交換など。アイデアや実践などを同僚と共有し、賞賛されたり、賛同してもらったときに、自分自身の仕事の価値を見出すものです。

◯教師のニーズを知る
教職員一人ひとりがもっているニーズ、目標、レディネスのレベルなどについて知っておくことは、一人ひとりに最適化された学びをサポートすることにつながりますし、教職員の協働的な学びの場を創設することにもつながるはずです。

◯研修の日常化
日常のあらゆる場面を学びの場であると「決める」ということです。「研修日」を決める必要はないはずです。日々の授業、日々の実践の中に、学ぶべきことは埋め込まれているはずです。職員会議だって、決定事項の伝達に使うのはもったいない。職員会議を教職員が成長する時間と位置づけににはどうすれば良いか考えてみませんか。

◯時間割に共通の空き時間を組み込む
時間は必要です。共に過ごす時間も必要です。多忙な教員の時間を調整するのは至難の技。なんとかして時間を確保しましょう。

◯全員の学びが記録できて、共有できるようにする
グーグル・ドキュメントのような共有可能な場所にチャートをつくるのは良いアイデアだと思います。誰でも、いつでも、どこからでも見ることも、修正することもできるのですから。次の3つの欄をつくることが推奨されています 1) 現在ある知識、現在実践していること 2) 目標(学びたいと思っているテーマなど) 3) 成果(学んだこと、研修の成果)

我が国では実に様々な研修が提供されています。国が提供するもの、都道府県や市町村の関係機関が提供する公的なもの、民間組織やNPOなどが提供するもの。それぞれに魅力的なものはあるのでしょうが、所詮は誰かがどこかで、学校や教室のことを知らずに計画しています。

そろそろ、それらの動きに「独立宣言」を突きつける時です。子どもたちや地域の近くにあって、もっともよく知った自分たちで、自分たちの主体的で専門的な学びの場を創っていきませんか。


★1 教育関係のハックシリーズはこんなにも多く出版されている。
https://www.shinhyoron.co.jp/wp/wp-content/uploads/20211108-books_that_create_new_lessons.pdf

★2 ジョー・サンフォリポ&トニー・シナシス(飯村寧史、長崎政浩、武内流加、吉田新一郎訳) (2021) 『学校のリーダーシップをハックするー変えるのはあなた』新評論 ハック9 協働して学ぶ.

★3 「パッション・プロジェクト –大人も情熱を注げるプロジェクト–」https://projectbetterschool.blogspot.com/2021/05/blog-post.html

★4 EdCamp Japan http://www.edcampjapan.org

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