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2026年4月5日日曜日

ジャーナリングを始めませんか

新年度が始まりました。あれもやりたい、これにもトライしたい。とてもポジティブな空気に満ちているでしょうか。それとも、新しいスタートに強い不安を抱えて、おしつぶされそうになっているでしょうか。

一喜一憂しても仕方がないと思いつつも、日々起こりうる出来事、多様な子どもたち、難しい保護者への対応などなど、数多くの物事に出会い、意思決定をし、前に進んでいく。教職という仕事は、実に幅が広く、人間的で、複雑。もちろん、そこに他の仕事では得られない、達成感やよろこびもあるのですが。

様々な思いの中でスタートしたであろう新年度。この一年間を、より良いものにするために、ジャーナリングに取り組んでみませんか。★1

なぜ、ジャーナリングをお勧めするかというと、多忙な日常の中で、気づけなかったこと、見逃していたこと、新しい発見などをもたらしてくれる、とても良い方法だからです。

私の2025年12月のジャーナルのエントリーです。

「この授業も3サイクル目に入りました。昨年、大改革を行った後半戦です。今年はさらに内容を精選して、よくなったと感じています。いや、むしろ、自分自身の「肩の力が抜けた」ことで、学生諸君がエンパワーされたと言った方が良いのかもしれません。学生MC(その日の授業リーダー)を4名毎回置いているのですが、彼ら彼女らの最後のリポートには本当に感心します。「おー、こんなことに気づいているのか」と思うことは一度や二度ではありません。長らく教員やってきて、ほぼ終着点が近づいたところで、気づくのですね。」

続けて、2026年1月。

「昨年も繰り返し書きましたが、捨てることで、内容が充実していくということ。Less is moreという言葉がありますが、まさにそれ。無駄を削ぎ落とすことで、本質的なところが充実してくるということ。色々な角度から見てもらいたいと思って、事例をたくさん用意して、これまでは、それらを見せていた。でも、少し「くどい」気がしていた。

今年は、それらを毎回削ぎ落としていった。毎回、一瞬、逡巡する。せっかく、集めた事例やモデルなのに!と。しかし、削ぎ落とすことで、伝えたいことが焦点化できていったような気がする。教師が必要だと思うこととと、それを全て受け入れられるかどうかということは、別物のようです。」

さらに、2026年2月。

「僕自身が関与を下げたことによる、学生たちの主体的な動きの実現。主体性、エイジェンシーなど、学習者に学びの権限を委譲することについて、理屈では分かっていて、その大切さを、ことあるごとに語っていたに、自分自身が満足にできていなかったことを悟った。どうしても、手放す勇気がなかったのかもしれないですね。いやむしろ、自分自身が主役でいたかったのかもしれません。」


学習者に学びの権限を委譲することの大切さについては、ずっと前から気づいていたし、認識はしていたんだけど、実際、教室の中では、それが真に実現できていたとは言えなかった。

そして、それは長年の私自身の問題意識でもありました。そのような問題意識を、ずっと持ち続け、ジャーナルの中で、自問し、行動を変えることで、やっと、自分の描いていたものに近づいていった実感があった。

これは日々流れている、実践や思考、感情を少しづつでも、書き留めていったことによって、もたらされた気づきではないかと思います。

私が取り組んできたジャーナリングの進め方を紹介しておきます。2015年に、7−8名のグループで、ブログを使ったジャーナリングを始めました。Googleのフリーのサービスである、Bloggerを使って、各自が個人のBlogをもち、そこに日々の授業実践について、ジャーナルを書いていきます。学習者の固有名を使った方が、生き生きと語りやすいということで、非公開のブログにしています。

特に、記入する内容や形式は定めていないので、各自が書きやすい方法で、自由に書くようにしています。形式や報告よりも、自分の経験や振り返りを書くことを重視したいからです。

私は、[Procedure]としてその日の流れを数行で記し、その後に[Reflection]として、感じたこと、気づいたことを書くようにしています。その際、できるだけ、学生たちの様子が分かるように(自分が後から思い起こせるように)、写真やビデオを掲載するようにしています。

ジャーナルを書くことの意義については、メンタルヘルスのため、思考の整理・生産性の向上、自己理解・自己成長、生活の質の向上、振り返りと今後の計画などが挙げられています。

私は、ジャーナルを書くために、立ち止まって、考える。その時間を取れることが最大のメリットだと感じています。通常であれば、やり過ごしたり、流れていくだけの出来事について、じっくりと向き合うことになる。向き合い、考えをめぐらさなければ、書けませんから。

なお、このブログは、メンバーのみが閲覧可能で、お互いがジャーナルを読み合い、コメントを記入し合うようにしています。当初は、ピア・メンター的な役割をお互いに果たし合おうと話していたのですが、そこはうまくいきませんでした。メンターやコーチとして、仲間に関わる余裕も知識もなかったことが原因だろうと思います。

しかし、一言でも、反応があることは、重要でした。もちろん、返信を期待して書いているわけではありませんが、自分のエントリーに対して、何らかの反応があることは、このような取り組みが継続されるためには、とても重要な意味を持つと思います。

10年以上続けてきて実感することは、これらの思索が、蓄積され、いつでも読み返せるということです。「時間をかけて蓄積してきたジャーナルを読み返すことで、その中に何らかのパターンのようなものがあることに気づき始めました。折に触れて、読み返すことで、読み返すプロセスこそが、ジャーナルを書くことそのものよりも重要であると気づいたのです。」★2

私たちのジャーナリングの実践では、ジャーナリングの蓄積を振り返りにつなげる工夫をしています。月に1回、1ヶ月間のジャーナリングを振り返る、全員の集約版ブログを準備しています。メンバーは、1ヶ月分のジャーナルを読み返し、次の質問に対する自分なりの、振り返りを書きます。

---Blog Journaling 毎月の振り返り質問---
1.この間、心が動いたことは? 嬉しかったこと、悲しかったことは? 人に伝えたいことは?

2. 実践のハイライトは何でしたか? 特に、よかったことや成功したことです。  うまくいった要因は何だと思いますか?

3. うまくいかなったことはどのようなことでしたか。児童・生徒が動かなかった時や自分らしさを発揮できなかった時です。  それらに共通することは考えられますか? パターン/傾向のようなものです。

その他、何でも気づいたこと、思ったことは
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日々のジャーナルは、気軽に書いたとしても、月に一回の、この振り返りの質問に答えるときに、いつも筆が止まる(立ち止まる)と皆さん言います。

日記をつけたり、マメに手紙を書いたりするわけではない私ですが、書き続けることで、実に多くの学びも気づきも生まれたと思っています。

多忙な、学校の仕事の中で、バーンアウトしてしまっている人も多いと思います。でも、それを超えるには、一歩踏み出して、自分に良い負荷をかけるしかない。その一つの方法がジャーナルを書くことだと思います。

まずは、しばらく続けてみませんか?

★1 吉田新一郎(2006)『「学び」で組織は成長する』光文社新書,pp31-42 などに紹介されています。

★2.Thomas Farrell(2013)Reflective Writing for Language Teachers, equinox, p.85から。

2018年10月7日日曜日

書くことの力 ー 一人でのジャーナリングから仲間との豊かな学びへー

もうかれこれ5年近く、授業についてのジャーナルを書いています。ジャーナリングとは、日記のようなものですが、自分自身が経験していることについて、個人的な反応、疑問、気持ち、知識などを記録するものをいいます(吉田,2006他)。ジャーナルを書くことで、自分自身の実践を振り返ることができ、改善につながるヒントが得られると言われています(Richards & Farrell, 2005)。

私のジャーナリングは、一人でやっているのではありません。英語の授業に、ライティング・ワークショップ、リーディング・ワークショップを応用できないかと考えている仲間と協働でやっている、ブログを使ったオンラインでのジャーナリングです。各自のブログに、授業についてジャーナルを書き、それに対して仲間がコメントを書き込んでいくという流れで進めています。ブログは非公開にしてあり、メンバー以外は読むことができません。また、月1回、一歩後ろに引いて自分たちの実践を眺めるために、ジャーナリングの活動自体の振り返りも行なっています(*振り返りの質問)。さらに、年に2回オフライン・ミーティングを開催しており、オンラインで語りつくせなかったところや今後の進め方について直接話し合う機会をもっています。

書き続けることは、決して楽ではありません。時々、スキップしていまいます。しかし、私たちの仲間が共通して感じていることは、書かなければ得られなかったこと、書き続けなければ得られなかったことがあるということです。ブログでのジャーナリングなしには、今の実践は考えられないとまで思っています。ある調査によれば、ジャーナリングが有効だと感じたのは教師は96%で、ジャーナルを書くことを楽しめなかったとする教師はたったの4%だったそうです(Richards & Farrell, 2005,p.70)。

実践をして、書く。たったこれだけのシンプルな活動ですが、書くという行為の中に、深い思索や省察を生み出す力があるようです。

仲間との実践を踏まえて、ジャーナルを書くことのメリットを考えてみます:

1 授業について深く考えざるをえなくなる。(授業の後に書くことがなければ、すべてはそのまま流れてしまっていったはずです。ジャーナルを書くためには、自分自身の実践を振り返り、そこから何か意味を見出す必要があります。)

2 記録が残る。(ジャーナルを書いていなければ、忘れ去られてしまった大切な気づき、発見、そして、失敗がたくさんあったはずです。「書いておいてよかった!」と思うことがよくあります。)

3 無意識のパターンに気づく。(長く続けていると、繰り返し出てくるパターンや無意識の習慣が浮き彫りになります。そこには、改善や成長のチャンンスがあります。)

4 グッド・プラクティスが浮き彫りになってくる。(これも一定期間続けることのメリットです。授業というものは、複雑な要素がからみあったものですが、長期間のジャーナルには良いものが残っていきます。)

5 仲間のコメントで、気付くことができたり、勇気付けられる。(一人で気づくことができないことはたくさんあります。反応をもらえるだけでうれしいものです。)

6 自分自身の感情や浮き沈みを自覚できる。(心がおどるような変化がない時や書く気持ちがわかない時があります。それが、自分自身の状態を自覚する機会にもなります。)
 
今は、日記帳やノートを準備しなくても、パソコンやスマートフォンを使えば、気軽にものを書ける時代になりました。仲間との共有も簡単にできます。今、この時を記録していくことは、教師として成長するための大切な第一歩となるはずです。

ジャーナリングを意味のあるものにするためには、以下のことを念頭においておくと良いと言われています:

1  目的を決める。
2  読み手を決める。(自分だけ、仲間と、メンターと)
3  時間を決める。(いつ書くか、どれだけ時間をかけるか)
4  定期的に読み直す。(何か浮かび上がってくることはないか?)
5  一定の期間をおいて振り返る。(目的を達したか、うまくいったことは何か、新しい学びはあったか、仲間と共有できることはあるか)(Richards & Farrell, 2005,p.75-76)。

さあ、まずは、1ヶ月。ぜひ、挑戦してみてください。


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*<月間の振り返り質問>
1.この間、一番心が動いたことは? 嬉しかったこと、悲しかったことは?人に一番伝えたいことは? 
2.ブログを書くことでプラスになったと思えること、得られたことは?
3.他の人のブログを読むことでプラスになったと思えること、得られたことは?
4.自分の変化は?自分についての発見は?
5.困ったことは? 改善が必要な点は?
その他何でも気づいたこと、思ったことは?
<中長期に振り返るための設問>
1 チーム・ブログとして機能していたか否か? その理由は?
2 今からのブログを書くことについて、達成可能と思える自分の目標は?
3 振り返り質問事項の修正点は?


[参考文献]
吉田新一郎(2006)『「学び」で組織は成長する』光文社新書
Jack Richards and Thomas Farrell (2005) Professional Development for Language Teachers, Cambridge.