2021年11月27日土曜日

私立大学の生き残り戦略

 

 9月末に日本私立学校振興・共済事業団から衝撃の発表がなされました。それは、今年度の大学入学定員充足率が調査開始以来、初めて100%を割り込んだというものでした。つまり、本格的な大学全入時代に突入したということで、定員割れの4年制私立大学も全体のほぼ半数にあたる277(前年度から93校増加)になりました。

 18歳人口が1992年の205万人をピークとして年々減り続け、2021年は114万人になっています。このまま減り続けると、2040年には88万人になるようです。

 そのことは、私立大学一般入試における志願者数にも大きな影響を与えています。

 1990年は志願者数では、上位3校は早稲田大159,514、日大156,627、明治大111,494でした。それが2021年度の上位3校は、近畿大135,979、千葉工業大108,707、明治大99,470となりました。上位校の顔ぶれが変わったことも変化の一つですが、志願者数全体も減ってきています。かつては、一人で何校も受験をするのが当たり前でしたが、コロナ禍ということもあり受験生も志願する大学の数を絞ってきているようです。また、地方在住の受験生は地元の大学を選ぶことも増えてきているようです。(せっかく東京に出てきても、授業がほとんどオンラインではやり切りないという話をよく聞きました。)

 こうなると定員割れをしている私立大学は経営的にも厳しくなってきます。そのためここ数年生き残りをかけて、様々な取り組みをスタートさせている私立大学が多くなってきています。

 1124日付の日本経済新聞に「講義は遠隔 地域で学ぶ」と題して次のような記事が掲載されていました。

 講義はオンラインで実施し、地域を巡りながら学んでもらう大学が誕生している。学生はその土地で暮らしながら様々なプロジェクトに参加。地域ニーズを発掘・創造し社会課題の解決を探る。

 この大学は文部科学省の大学設置基準に準拠していないため、大学卒業資格は取得できません。しかし、大卒の資格を必要とする学生には、別な大学の「すべてネットで完結する通信教育課程(新潟産業大学)」が受講できるようになっているそうです。この大学は、今年4月に「アスノオト」(東京都千代田区)が運営する4年生の「さとのば大学」です。大学には、キャンパスはなく、地域を1年ごとに巡り、現地で暮らしながらその地域の人々と一緒にプロジェクトに参加して学ぶようです。講義はすべてオンラインで行い、平日午前中はオンライン講義を受け、午後は学習した内容を基にして、地域のプロジェクトに参加するとのこと。初年度にかかる費用は80万円前後で、国立大学と同程度のイメージのようです。卒業後はまちづくりのコンサルの会社への就職や地域おこし協力隊への参加など、地方創生にかかわる仕事を想定しているようです。

 大学もそれぞれの立地や経営資源などの強みを活かして、対面とオンラインの有機的な組合せなどによって、これまでの経験値に捕らわれることなく、学びのあり方を追究してほしいものです。少子化で、しかも言葉通りの「大学全入時代」にあたって、このピンチをチャンスに変える大学が多くなることを期待したいものです。

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