2014年7月27日日曜日

一人ひとりの子どものニーズを満たすクラス/授業づくりのためのアイディア集



      子どもたちとの関係を毎日築き続ける ~ 義務教育だからといって、学校に来るのは当然と思わずに、来てくれることを感謝する。これまでよりもよく知ろうという気持ちで接する。
     いままでより少なく話す代わりに、より多く聞く
     「それはいいわね」や「よくできたわね」のレベルでほめるのではなく、より具体的にほめる ~ それをした人に向かってと同時に、他の人が真似したくなるように。
     名前で必ず呼ぶ ~ 教師の場合、互いに「先生」で呼び合うのはご法度!! 単に「私はあなたには興味がありませんよ」というメッセージを発信しているだけ。
     より多く知ろうと絶えず努力し、それを教える時に使うようにする
     間違い探しはやめる ~ 代わりに、いいとこ探しをする。
     リスクを犯して難しいことに挑戦することを奨励する ~ 教師の場合、「横並び思考ほど、非教育的である」ことを認識する!!
     教えている教科を子どもたちに売り込む(買ってもらえる)ように教える ~ 学ぶことが当然とは思わない。子どもたちが価値を見出してくれない限りは、単に教師にお付き合いする時間が続くだけだから。
     一人のためにクラス全体を怒ることはしない
     子どもたちが教える側にまわれるようにする
     子どもたちにクラスをリードする役割を提供する
     新たな発見を通して、子ども一人ひとりの見方を更新し続ける
     単にこなしているレベルではなく、コミットして取り組んでいる(自分が分かったり、できる)ことをみんなに見せられる機会を頻繁に提供する ~ これがないと、お付き合いレベルの学びで停滞する。


  (出典:Differentiation: From Planning to Practice, Grades 6-12 by Rick Wormeli、106ページ)

 あなたは、リストの中で、どの項目に一番ひっかかりましたか?
 全部ですか?

 日本の通常(指導案どおり)のクラス/授業では、子どもたちが輝ける、安心できる、成長できる環境・雰囲気ができていないんだな~、と思わせられてしまいました。そして、一斉授業をしている限りは、これらのほとんどは満たされないことも。なんといっても、教師ががんばり続けるのですから、関係を築き続けたり、聞いたり、子どもたち教えさせたりなど夢の話です!

 このリスト、そのまま管理職の学校経営(=教員との関係)に使えてしまいませんか? あるいは、教育行政と学校(の教師たち)との関係に。
 そのレベルから変わっていかないと、一人ひとりの教師に努力しろと言っても、リードする側の言行不一致を見透かされて、やれる教師は少数だし、たとえやれても、横並び意識が強すぎて、出る杭は打たれるになってしまいます。要するに、いまの悪循環に戻ってしまう!! 上のリストは、その「犯罪性」をも気づかせてくれるのではないでしょうか?

2014年7月20日日曜日

教師/リーダーにとって、一番大切な力は?



前回の続きだからではありませんが、まちがいなく「聴く力」です。
そして、ひょっとしたら一番欠けているのも。

教師(あるいは、リーダー)=教える/話す人(導く人)という「誤解」がいまも充満していますから、聴くことの重要性を意識できないで仕事をし続けている人が多いと思います。

私に最初に聴くこと大切さを認識させてくれたのは、『ワールド・スタディーズ』という本でした。この中に、「教えることは、問いかけること」とあったからです。問いかけたら(それは、「はい」か「いいえ」の表面的なレベルの浅い質問ではなく、じっくり考えることを促す深い質問です)、その後は聴くことを意味します。多くの場合、じっくり考えた後に、生徒同士が互いに考えを披露し合うだけの価値のある質問です。この本に出合う前までは、私も与えられた研修の期間中、ほとんど話していましたが、この本に出合った1986年以降は、話せなくなってしまいました。与えられたテーマに関連する2~3つの鍵となる質問を用意して(多くても、4~5つ)、投げかける形での研修に移行しました。

そして、その15年後に、再度聴くことの大切さを思い出させてくれたのは、ライティング・ワークショップの開発者の一人といわれているドナルド・マレーの本を読んだ時です。(特に、Learning by Teachingというタイトルの本だったと思います。)彼自身は、学校で教えたことも、研究者だったこともない、ジャーナリストだった人なのですが、その人が書くことを教え始めて、何よりも大切なことは「聴くこと」だと強調していたのです。要するに、カンファランスです。(日本の作文教育で、教師の役割を聴くことを捉えられている人は、何人いるでしょうか?)

でも、このことは書くことを教える時だけでなく、すでに読むことを教える時に最も効果的であるがことは証明されていますし、算数・数学、社会、理科など他教科を教える時にも効果的であることが証明されつつあります。

なぜでしょうか?

誰が学ぶ際の主役であるかをわきまえた方法だからなのではないでしょうか。(他に、理由が考えられますか?)それに対して、教師やリーダーが一生懸命にがんばって話し続ける/教え続ける授業や学校運営は、主役が誰なのかを見失っている授業/学校運営としか言いようがありません。

聴く力を身につけることは大切なことですが、いい投げかけ/問いかけができるようにすることも同じレベルで大切です。
そのための練習として最適なのは、これまでに何度もこのブログで紹介してきた「大切な友だち」です。小学校の中学年ですら、練習で見事にやれてしまいますから、大人ができないはずはありません。ぜひ、聴く力と問いかけ力を磨いてください。

2014年7月13日日曜日

聞くことの大切さ


教師たちは「聴くこと」が大切であると生徒には言いますが、自分自身がしばしば生徒の声を聴こうとしていないことがあります。

これによってクラスにはどんなことが起きるのでしょうか。

 

教師が、生徒から正解を引き出すことだけに熱心であると言うことは、生徒たちには「あなたたちの考えに私は興味がありません」というシグナルを送ることです。結果として、生徒は「自分の本当の考えや理解していることを話すことよりも、教師の頭の中にあることを推測する」ようになります。いわゆる「正解当てゲーム」が授業のなかで進行することになります。

 

前回、「質問すること」の大切さを話題にしましたが、「浅い質問」「深い質問」という区別で言うと、「表面的な浅い質問」や「Yes or No」で答えられるような質問が授業時間のほとんどを占めることになるわけです。これでは、「思考力・判断力」など養うことができません。


そこで、「質問」の質を問うと同時に、教師が児童生徒の発言を「聴く」ということが重要になるわけです。児童生徒に発問しながら、子どもたちに考える時間を十分に与えずに、すぐに答えを要求してはいないでしょうか。だれしも、「沈黙の時間」を嫌う傾向がありますが、ここはじっくりと子どもたちに考える時間を与えることが大切です。

 

最近、このブログのパートナーの薦めで、質問に関することや「考えること」に関する本を読んでいますが、読めば読むほど、「よい問いを作るにはどうすればよいのか」ということや、「子どもたちの思考をどう高めていくか」ということが授業づくり(学びの場)の中心であること、さらにはそれらが「よく学べるようにするにはどうしたらいいか」ということに分かちがたく結びついてくるのだと痛感しています。そこに、もちろん「聴くこと」が密接に結びついてくるということなのです。

 

そして、この「聴くこと」が学校のなかで大切にされれば、教師や子どもたちの関係が確実によい方向に変わります。そうなれば、教師も子どもも、人として尊重され、信頼関係で結ばれるような共同体に近づくことができるのだと思います。

2014年7月6日日曜日

質問について


「テストだけでは測れない!」(吉田新一郎・NHK生活人新書)の136ページに「質問に関する質問」という項目があります。

 

まず、「①平均的な教師は教師をしている間(約40年間)にどのくらいの数の質問をすると思いますか?」とあります。正解は、次の137ページに掲載されているとおりです。

「平均的な教師は一時間の授業で43.6もの質問をしているそうです。従って、教師をしている間にする質問の数は、少なく見積もっても100~200万になります。・・・」
 

この話を大学での授業のなかで取り上げました。


教師の質問が1時間の授業のなかで43にもなること、つまり小学校の45分の授業では1分ごとに1つの質問をしていることに、学生はびっくりします。そんなに多くの質問をしているわけですから、子どもたちに考えさせる「深い質問」がほとんどできないことは学生たちも実感できるようです。

 

「Yes」「No」で答えられるような単純な質問(浅い質問)が多くなっている教室が実際多いのですが、これを変えていくことが求められています。そのためには、質問(発問)をどうしていくかを授業の構想段階で考える必要があります。学生たちは、授業プランづくりの大切さをここで納得します。

 

さきほどの質問の最後にこのような質問があります。

「教師の質問の仕方は、何を表すと思いますか?」

この答えは、「教育に対する考え方、捉え方、あるいは生徒たちに対する期待」です。


学生にこの質問をすると、ときどきこの「教育に対する考え方」に近い答えを述べる学生がいます。そんなときは、「なかなかいいセンスしているね」とほめることにしています。「生徒に対する期待」と答えた学生は今のところ一人もいませんが、「これはとても大事なことなんだよ」と説明することにしています。

 

質問を大切にする教師が一人でも増えることを期待したいと思います。