2014年12月28日日曜日

1年のふりかえり



自分は今年1年ちゃんと成長し続けていたかな?
自分が属している組織は成長していたかな?

後者は、自分以外の要素が大きいので、なかなか難しいかもしれません。★
実際は成長していないのに、いくらでも装うこともできそうですし。

しかし、前者に関しては、かなり明快に答えは出そうです。
自分が成長しているかどうかを自分に聞いてみれば、YesNoかは明らかですから。

あなたは大丈夫ですか?

いったい成長し続けるために何をしていますか?

本を読む。
人と話す。(それも、できるだけ学校以外の人と。)
情報として得た中でいいと判断したものは、ドンドン実践してみる。
それを振り返る。いい点は祝う(歓ぶ)
改善・修正して、さらに実践し続ける。
情報として発信する。(共有する。いい意味で、自慢する)

これは、実践に磨きをかける方法として紹介した図に似てますね。
(ということは、私が成長していないということ?? ぜひ私を助けると思って、他にされていることがある方は、pro.workshop@gmail.com宛で教えてください。)

これらをしっかりやり続けることが、自分が元気に成長し続けることはもちろん、組織が成長し続ける前提だと思います。


★ 組織全部を対象にするよりも、一人、二人の仲間からスタートすることこそが大切ではないでしょうか? それが続くコツでもありますし。 それで、『「学び」で組織は成長する』(光文社新書)を書きました。

2014年12月21日日曜日

教員研修を役立つものにする鍵は



子どもたちの学び方が一人ひとり違うように、教師の学び方も多様です。(そうだとすると、一律の講義を行ったところで、効果は期待できません!)
その前提に立った教員研修のポイントは、

     継続的な学びが大切 ~ 特に、教師に新しい手法を学んで、実践してもらいたいのであれば、長い時間が必要。ある調査では、50時間は最低でも必要という結果も出ているぐらい。
     実践に移す時のサポートが大切 ~ 教え方を変えることを意味するので、サポートが欠かせない。それもかなり手厚い。(日本の研修で、このことは考えられているでしょうか?)
     実践することの価値に納得してもらうためには、読んだり、話し合ったり、ロールプレイをしたり、見本を見たり(授業を観察したり)といった教師の主体的な学びが大切。受身である限りは、役に立たないことが約束されている!?

以上の3つのポイントを踏まえて、具体的に学校や教育委員会主催の教員研修をする際のカギは:

1)取り組んでもらう実践(学び)を一つか二つに絞る。あれもこれもでは、新しいことに取り組むことを不可能にするだけ。
2)多いとは言えない学校や教育委員会の資源をそれら一つか二つの実践の実現に集中する。サポート/フォローアップのない研修は、教師を混乱に陥れ無力感を味合わせるだけ。
3)紹介することではなく、サポート体制性こそを充実させる ~ 具体的には、コーチング、校長による観察・支援、継続的な学年ないし教科ミーティング、継続的な評価システムなど。しかし、何よりも強力なのは、教師同士が教え合うこと。子どもたちも、それをモデルにしてよりよく学べる。
4)フィードバックの仕組みを作って、実践をモニターできるようにする。子どもたちの学びに好影響を与えないものに時間をかけても無駄。そのためには評価・モニターの仕方も身につけ、それを絶えず改善に活かす方法を身につける必要もある。
5)変化には時間がかかることをわきまえる ~ 1~2回の「研修」では当然のこと、1年ぐらいでも自分のものにしてもらえると思わない! 継続的なサポートこそが鍵。

教師も、教育委員会も、保護者も、子どもたちの学びの(質と量の)改善を望んでいます。これまでしてきたような研修を続けても、それが実現しないことは、長年の経験がすでに証明済みです。ぜひ、上の前提と鍵★を踏まえて、研修(学校内での教師の学び)を役立つ形に転換していきましょう!!


★ かなりの部分、このブログで繰り返し紹介している「学びの原則」とオーバーラップすると思いませんか? まずは、教師がそれを体現した形の学びを自ら体験していないと、子どもたちに提供することは不可能です。

2014年12月14日日曜日

カリキュラムづくり


アメリカは一時よりも経済が回復しているようです。その一因となっているのが、シェールオイル、シェールガスの産出です。この掘削に利用しているのが、「水圧破砕」という工法で、水と砂、化学物質を高圧で地下のシェール(頁岩)層に注入して、その岩石の亀裂からオイルやガスを取り出すというやり方です。これによって、以前からの油田に加え、アメリカ全体の産油量が増加し、それによって石油精製を始めとして、化学産業が活気を呈してきているようです。

 

このような最近の話題を早速、学校の授業に取り入れているアメリカの教師たちがいます。

LDC(Literacy Design Collaborative )という民間団体があり、そこに所属する人たちが高校生向けの授業プランを作成し、Web上でも公開しています。

    このプランの面白いところは、シェールオイルやガスの採掘に関して、賛否両論があるにもかかわらず、それらを含めて、生徒たちに議論させようというところです。もちろん、推進派と反対派の両方の考え方、科学的な根拠などを提示しながら、ち密に計算したワークシートを利用して、生徒たちの主体的な活動を促すような活動計画です。

    その一部には、「映画の台本を作る」という学習活動があります。そこでは、生徒のためにサンプルが提示されています。その部分を以下に紹介します。

    スティーブ・ツリーマン(環境保護グループの科学者)とトム•ドリラー(ガス会社の科学者)は、ホワイトハウスのバラ園でオバマ大統領と会談している。どちらの科学者も彼らの前にたくさんの論文を広げている。ツリーマン博士の情熱的で要点を押さえた話をオバマ大統領が熱心に聞いている。

 
   ツリーマン博士: それが私たちの水に害を与えるので、安全ではありません。水圧破砕の井戸の近くから取水したサンプルは、水圧破砕の井戸のない地域よりもその中に17倍以上のメタンを含んでいました。
   
   ドリラー博士: しかし、スティーブ、水圧破砕がその地域で始まる前は、このメタンが存在しなかったことや細菌の正常な代謝機能の結果自然にできるものではないからです。
   
  ツリーマン博士: (大統領に向かって体を傾けながら)大統領、深いシェールガスからのメタンの同位体と、細菌によるメタンの同位体を比較する試験によって、水中のメタンが細菌からのものではなく、もっと深いところからのものであったことが証明されました。・・・

(Literacy Design Collaborative :Hydrofracking__Pam_Meyer20140102-2-zl3jhzより)
  
   賛否両論がある科学的な話題を取り上げるのは、容易ではありませんが、生徒にとってはとてもリアルタイムで面白いテーマだと思います。

 STS(Science Technology Society)教育がしばらく前に話題になりましたが、そのときの先駆者たちもアメリカの教師でした。サイエンスはまさに現代社会と密接に関連しており、そのリアルな話題を可能な限り授業の中で、取り上げていくのは「教室の中だけで完結する」これまでの学びを広げ、面白くしていくしかけの一つだと思います。ただ、それには十分に考えられた授業プラン、カリキュラムが必要です。年間に一つでも、そのようなオリジナルのプランを作って、子どもたちと追究してみてはどうでしょうか。

そのような教師が増えて、交流の輪が広がっていくことが教育改革の一番の近道のような気がします。

 

2014年12月7日日曜日

教科横断型の授業


  先月10日に「世界教育戦争」(アマンダ・リプリー/ 北 和丈訳・中央公論新社)という本が発売されました。原題は「The Smartest Kids In The World」です。
   この本には、3名のアメリカ人高校生がそれぞれフィンランド、韓国、ポーランドに留学する話が紹介されています。

    113ページに次のような文章があります。エリックと言う高校生(高校はすでに卒業しているが、大学に入る前に海外留学をしたくて交換留学生になる)が韓国に留学するのです。

 
「面白いことに、エリックが韓国で本当に楽しいと思えた唯一の授業が数学だった。

~(中略)~

  受けていた授業は、表向きには幾何学ということになっていた。幾何学を習って高校を卒業しているエリックには、理解できない内容はほとんどなかった。ところが、韓国の生徒たちが幾何学を学んでいる方法そのものは、エリック自身が経験してきたのとはまったく異質のものだったのである。

 先生の話は、三角法や微積分などいろいろな分野をまたぎつつ、あたかも幾何学が数学という大きな宇宙に浮かぶ太陽系の一つにすぎないと言わんばかりの筋立てで進んでいった。異なる分野を組み合わせることで現実世界の問題を解決することができる数学は、もはやきれいに分類された科目としての数学とは別物だ。」

 
   韓国の数学教師がすべてこのような教科横断型というか、学際的なアプローチのしかたで数学を教えているとは思いませんが、このような実践をしている教師がいることは事実のようです。エリックもアメリカで受けた教育の中で、このような体験をしたことがなかったようですので、アメリカでも少なからず教科書をベースにした知識注入型の授業があることも事実のようです。

 
    以前からわが国でも教科横断とか、教科統合の話はありますが、なかなか現実には前に進みません。「総合的な学習の時間」は、唯一それが公式にできる場であったわけですが、どうもスキル獲得とか、別な方向に逸れていきました。

「教科縦割り主義」は教える側の都合が優先されてきたとも言えるわけで、子どもたちの側からすれば、つながりの見える形で学んだほうが、より面白く学べるわけです。

『「読む力」はこうしてつける』(吉田新一郎・新評論2010)は、こうした教科縦割り主義を打破するヒントがたくさん紹介されている本です。この本を手掛かりに、多くの子どもたちが意欲的に学べる実践が各地で展開されることを期待したいものです。