2022年7月30日土曜日

歴史から学ぶこと

 

ここのところ近世(近世をどこからどこまでと定義するのもいろいろな意見があります)に光が当たることが増えています。

 ドイツ出身の経済学者アンドレ・グンダー・フランクの著書『リオリエントーアジア時代のグローバル・エコノミー』(藤原書店2000)によると、1400年ごろから1800年ごろまでの4世紀にわたり、世界経済の中心は東アジア、特に中国であり、西洋は東洋にぶら下がる周辺部だったと主張しました。これは私たち一般人の感覚からすると、少し意外な感じがするのではないでしょうか。おそらく、ヨーロッパを中心とする西洋が大航海時代を含めて、東洋を支配してきたのではないかと思われる方が多いでしょう。

それが、近年の世界経済の状況から世界のものづくり工場はアジア、特に東アジアであり、世界経済の中心は西洋から東洋に移行しつつあるのではないかと。しかし、フランクの考え方によれば、世界の中心はもともと西洋ではなく東洋であり、世界史的に見れば東洋は勃興してきたのではなく、元に戻りつつある『再興』なのだということになります。これは実に大きな視点の転換です。これまでは西洋中心の世界観でものを見てきた人間にとっては(私もその中の一人です)、驚きの見方です。さらに言えば、西洋(進んでいる)VS東洋(遅れている)いう明治以来のものの見方がよかったのかということも言えるわけです。同様に、アジア・太平洋戦争以後の欧米礼賛論にも通じることです。 

峯陽一『2100年の世界地図』(岩波新書2019)には、2100年までには世界人口が100億人を超え、そのうちアジアとアフリカが8割以上を占めるという予測が紹介されています。アフリカが経済的にこれからどうなるかは、見通しとしてはあまり明るくないと思いますが、アジアが人口でも経済でも世界の中心になることは間違いないようです。また、ジェンダーの視点を歴史教育に取り込むことで、従来とは異なる地平が見えてくるものと思います。

このように見てくると、私たちが学校教育で培った歴史観を大きく転換させる必要があることがわかります。この4月から高校1年生の必修科目となった「歴史総合」は学習指導要領に記されているように、「歴史の学び方を修得し、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察、構想する科目」です。この授業を通して、歴史が単なる過去の出来事の羅列を暗記する科目とならずに、現在の私たちの生き方そのものを照射するような価値観を獲得できる授業となることを期待したいものです。

それには、多くの高校の社会科担当の先生方が、このブログに紹介されているような「生徒自らの問いをベースとして授業が進む」「学ぶ内容を選択できる」「決して試験のためにある授業ではない」などを念頭において授業をすることが重要です。

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