2022年7月24日日曜日

あなたの周りに、不安を抱えた生徒や同僚はいませんか?

 訳者の小岩井僚さん(東京都の私立中高一貫校で国語を教えている)の「訳者まえがき」から、クリスティーン・ラヴィシー-ワインスタイン著『不安な心に寄り添う――教師も生徒も安心できる学校づくり』(新評論)の内容を紹介します。


 

 みなさんは、どのような生徒といつも一緒にいるのでしょうか。

・朝になると急にお腹が痛くなってしまう生徒。

・課題がなかなか提出できない生徒。

・休み時間は活発なのに、授業の直前になると急に「調子が悪い」と言って授業を抜けてしまう生徒。

・課題が出ると、「完璧にしなければ……」と思って、必要以上に質問をしてくる生徒。

・テストの点数が想像よりも悪くて次の日に欠席してしまう生徒。

 

多様な生徒と日々向きあい、なんとか彼らが学校でうまく過ごすことができるようにと頭を悩ませているのではないでしょうか。

 本書の原書を読みはじめた数日後に行われた会議において、あるクラス担任から生徒の情報共有が行われました。それは以下のようなものです。

「保護者からの連絡では、夜には明日は学校に行くと言うけれど、朝になると起きてくることができないということです。学校に行かなければならないということは生徒も分かっているようなのですが……

この教師も、その場にいた同僚たちも、そして保護者もどのように対応していいのか分からず、会議は報告という形で終わりました。私たちは何をすることができるのだろうか、という疑問が残ったまま、前に進めずにいたことがずっと私の頭に残ったままとなりました。

 そんな状況において、期限までにレポートなどの課題が提出できない生徒に対して、「提出しないと成績がつかないよ」と、半ば脅迫ともいえるような形で提出を促すような場面にもよく出くわしていました。教師の間では、「なんで出さないんだろうか? とりあえず出せばいいだけなのに」という会話がなされています。結果的には、この疑問に対しても教師はうまく答えを出すことができず、対処方法もはっきりと分からずにその場をやり過ごしていることが多かったと思います。

 そんな折に読んだ本書が、このような疑問に対する答えを考えるためのヒントを与えてくれたのです。

 原著者であるラヴィシー-ワインスタイン氏は、「教師として、不安という病が学校に存在するという事実を認識するだけでなく、何か行動を起こさなければならないのです。そして、不安に向きあうための方法を手に入れなければなりません」と語り、以下に述べる問いに対して答えを出すとともに、不安を抱えている生徒をサポートするために何ができるのかを教師に伝えることが本書を執筆した目的なのだと言っています。

・教師は生徒が不安を抱えている場面に何度も直面しているはずですが、的確にそれを見極めているでしょうか?

・生徒が不安を感じている場面に対して、どのように対処すればいいのかについて教師は理解しているでしょうか?

・不安はどのような形で現れるのでしょうか?

・どのようにすれば、不安を抱えている生徒の状態を、悪化させることなくサポートできるのでしょうか?

・どのようにすれば不安を抱える生徒のために声を上げ、彼らが不安を克服し、充実した学校生活が送れるようにサポートできるのでしょうか?

 

 これまで、学校における成功は、よい成績を取らせることであったり、よい進学先(偏差値の高い学校)に生徒を送りだすことであったりしてきました。これらは、現在においても、よい学校かどうかを測る指標になっています。そのためでしょう、多くの学校において、教師はよい成績を取らせることや教えるべき内容をカバーすることに意識が向いています。

しかしながら、現在の学校においては、教師が考えるべきことは生徒の学習面だけではなくなっています。アメリカのある調査では、2019年の調査において、「70パーセントの生徒がメンタルヘルスを重要な問題であると回答している」という結果を出しています。これは、イジメなどの回答よりも高い割合なのです。

本書において原著者は、「生徒が重要な課題であると考えていることに対して何ができるのかと考えられなければ、教師として失格なのだ」と述べています。さらに、「生徒は、不安が何なのかをまだ理解できないときに、自分の声となる人を必要としており、それこそが学校の教職員が担わなければならない役割なのだ」としています。そのためには、必ずしも不安を抱えてきた経験をもつ必要はなく、不安を抱える生徒が何を必要としているのかを知ろうとする姿勢が必要だ、と本書を通して訴えています。

 朝になかなか起きられない生徒や、授業の課題提出ができない生徒に対して、単に時間の管理スキルが身についていないだけという考え方があるかもしれませんが、ひょっとしたら不安を抱えていたのかもしれません。

これまで、何らかの問題を抱えた生徒と出会うと、多くの場合、その生徒と関係する教師が集まって、教師自らの経験からその理由を推測して対処しようとしてきました。しかし、現在の学校が向きあわなければならないことは、学校でこれまで経験してきた課題から大きく変化しているのです。つまり、これまでの教師の経験だけでは見えないものが増えてきているということです。そのなかでもっとも重要なものが、生徒のメンタルヘルスであり、生徒の抱える不安なのです。

 本書では、原著者が経験してきた、実際の「不安の物語」が描かれています。そして、そのような場面に出合ったときにヒントとなる、「不安」との向きあい方が述べられています。原著者の願いは、より多くの人に「生徒の不安が小さくなるように、不安との闘いに参加」してもらうことです。多くの生徒がより良い学びを経験し、人として成長できるようにサポートしていきたいものです。

 

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