スーパーマーケット見学をしている3年生の様子がTVで流れていました。店長さんがスーパーの仕組みを説明し始めると、子どもたち全員がそれぞれの端末を一気に構えピロリロリン!と録画を始め、誰もノートにメモをとっている子がいません。
GIGAスクール構想ってこういうことだったっけ? 何か大きな違和感を感じ、その後もずっと、子ども時代にしかできないこと、大切にしたい学びとは一体何なのかを考えてしまいました。
さて、夏休みが近づいてきます。小学校では夏の課題に、アサガオやヒマワリ、ホウセンカ、マリーゴールドなどの観察が課題に出されます。このままでは夏の課題は、一人一台の端末で写真を数枚撮って終わり、なんて起こりかねません。
これで本当に学びとなっているのでしょうか。記憶に残っているのでしょうか。記憶するには、学習者が意図的に焦点を当てたり、思い出したりしなければ、決して覚えられません。記録だけでは記憶されないのです。
ジョン・ミューア・ロウズ(著)・杉本裕代・吉田新一郎(訳)『見て・考えて・描く 自然探求ノート ネイチャー・ジャーナリング』(築地書館)は、このデバイス病にかかってしまっている子どもたちに、改めて観察することの意味を教えてくれる本となってくれるはずです。
“興味を惹かれる行動を目撃したら、立ち止まって、そこで起こっていること(それぞれの段階の詳細を含めて)をすぐに言葉にしてみましょう。そうすると、見たものをジャーナルとして仕上げるまで、しっかり記憶に留めておけます。(本書より)”
博物学の基礎は、正確なメモを取りながら、丁寧かつ具体的に観察することです。注目すべきものに意識を向けずにいると、ただぼんやりと眺めながら歩き回ってしまいます。ここでは、この本で紹介されている「観察を深める、きっかけづくりの効果的な3フレーズ」を紹介します。
①「あれ? 気付いたことは……」
ここで、気付いたこと全てを口に出してみます。観察していることを、口にだして言うのです。声に出すことで、記憶のひだに織り込まれ、考えをより明確にすることできるのです。何も省略せずに、見たモノはそのまま言葉にします。構造、動き、色、相互の関係など、近く、遠くへと視点も変えてみます。詰まったら「あれ?」と声に出して言ってみることで、アイディアが飛び出すまで観察の対象へと注意をはらってみましょう。
②「おや? 不思議だな……」
③「そういえば、連想するのは……」
観察対象から思い起こさせるものを、全て声に出して言います。発想を押さえつけずに自由にしましょう。対象が記憶を刺激し、過去の経験や忘れていた知識の断片を思い出してあり、姿形から何かを思い出すかも知れません。個々の部分をみてから、個々を組み立てひとつのまとまりとして捉えてみます。この連想によってより疑問を育ててくれることとなるでしょう。
慣れたらこの順番にこだわる必要はありませんし、この3つの質問をグループでわいわいがやがや行うのも楽しいものです。この声に出す方法はとてもユニークで、かつ強力なツールです。この作業が観察したことや考えたことを、すでに習得していることやこの正解の枠組みや知識に関連付けられ、自分の経験をより鮮明な記憶として刻むことができるのです。ここにiPadなどの端末で写真を記録することとの大きな意味が異なってきます。
この本は一見すると、ネイチャー・ジャーナルの初心者向けの丁寧な書き方ガイドとも読むことができます。しかし、この本のよさは、五感を使って体くぐらせることで、疑問や好奇心といった自然へのセンスオブワンダーの芽を育てようと、子どもが本来もっている力を解放してくれるところです。
さて、夏休み、一度、デバイスを脇に置いて、ノートと鉛筆をもって自然に繰り出してみませんか。そこには驚くほど豊かな世界が待っているはずです。
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