2022年7月12日火曜日

新刊案内『あなたの授業力はどのくらい?』

  訳者の一人・雲財寛さん(東海大学児童教育学部)の「訳者まえがき」から、ジェフ・マーシャル著『あなたの授業力はどのくらい? デキる教師の七つの指標』(教育開発研究所)の内容を紹介します。

 私は育成ゲームが好きなのですが、育成ゲームにおいて重要なのは「能力値」の振り分け方です。ゲームによって異なりますが、たとえば、ある野球選手を育成するゲームでは、各選手に「(打球の)弾道」、「ミート(ポイントの広さ)」、「パワー」、「走力」、「肩力」、「守備力」、「捕球」など、野球のプレーに関わる観点ごとの「能力値」が設けられていて、これらの値によって「能力」が決まります。選手育成においては、たとえば「筋トレをすると『パワー』が上がる」というように、それぞれの能力に関連した練習をすることで、特定の観点の「能力値」を上げることができるのです。ただ、期間の制限(練習回数の制限)があるため、すべての能力値を上げるのは極めて難しいことになります。つまり、これらの能力値をどのように振り分けていくのかがプレイヤーに委ねられているのです。もし打撃に特化した選手を育成したいのなら、弾道、ミート、パワーの能力値を重点的に上げることになりますし、守備に特化した選手を育成したいのなら、肩力、守備力、捕球の能力値を重点的に上げることになります。このように、育成ゲームでは自分が設定した目標(育てたい選手像)に沿って能力値の振り分け方を考えていくわけです。

 では、野球ではなく「教師の専門性」で考えた場合はどうなるでしょうか。教師の専門性の内実は「パワー」や「走力」などにあたるものが何なのか、自覚しづらく、また簡単に表すことのできない複雑な概念であり、さらにゲームの「能力値」のように簡単に数値化できるものではありません。

 本書は、このような複雑な概念である教師の専門性を「七つの指標」という観点から整理し、それぞれの指標について解説している本です。七つの指標は本書に何度も登場しますが、以下に示してみます。

指標①――学んでいることとのつながりが明確で、生徒が夢中で取り組める学習の流れをつくる

指標②――生徒中心の学習方法と、リソースやテクノロジーを一体化させる

指標③――失敗が受け入れられ、尊重されていると感じる、よく組織された学習環境をつくる

指標④――やりがいのある、深い学びをもたらす学習経験をつくる

指標⑤――対話的で、よく考えることを大切にした、意味のある学びをつくる

指標⑥――創造的で問題解決を志向する文化をつくる

指標⑦――指導と学習をガイドするモニタリング<進行中の行為についての理解状況を診断すること>、評価、フィードバックを行う

 本書はこれらの指標ごとに章が構成されています。本書の特徴は次の三点です。

 第一に、「七つの指標」という具体的な観点を示したことです。これら七つの観点は独立した観点ではなく相互に関連しあっており、教師の専門性において何が重要なのかを端的に整理しています。これらの指標は著者の実証研究に基づく知見であることから、一定の妥当性が保証されているといえます。

 第二に、七つの指標に基づき、教師の自己点検のためのニーズ・アセスメントを開発したことです。このニーズ・アセスメントを使えば、自身の強みと弱みを把握することができます。何が得意なのか、何が課題なのか、自身の専門性を振り返るための枠組みを提供してくれます。つまり、このニーズ・アセスメントは育成ゲームにおける能力値にあたるものを把握する手段といえるでしょう。(本を購入された方は、オンライン・サイトにアクセスでき、このアセスメントおよび次の「レベル表」もダウンロードすることができます。)

 第三に、それぞれの指標について、表の形式で「レベル」を示してあることです。レベルは三段階(改善する必要がある、うまくやれている、模範的である)が設定されています。このレベル表によって、「自分がそれぞれの観点において今どの段階にいるのか」が把握でき、「次の段階に進むためにはどうしたらいいのか」を理解することができます。

◆割引情報

・本体価格2400円でご提供します(消費税分をサービスします/送料も1冊から無料です)

・教育開発研究所への直接ご注文に限ります(書店は不可)。

 下記リンクよりご注文ください。その際、「PLC便りを見ました」とお書き添えください。

https://www.kyouiku-kaihatu.co.jp/bookstore/products/detail/558

※今年9月いっぱいまでのご注文まで。


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