2025年12月21日日曜日

教師の授業、考え方、あり方を変える研修方法としてのコーチング

 このブログもはじめてから14年が経ちます。

 その目的は、教師のメインの仕事である授業を飛躍的に改善することであり続けています。それを実現するための教員研修(教師の学び)関連の書き込みで主だったものを挙げると、次のようなものがあります。

https://projectbetterschool.blogspot.com/2024/10/blog-post_27.html

https://projectbetterschool.blogspot.com/2012/05/blog-post_20.html

https://projectbetterschool.blogspot.com/2016/03/blog-post_20.html

https://projectbetterschool.blogspot.com/2016/07/blog-post_10.html

https://projectbetterschool.blogspot.com/2015/03/blog-post.html(特に、表の一番右)

https://projectbetterschool.blogspot.com/2012/03/plc_18.html(特に、「学びの原則」)

これら以外の他の記事に興味をもたれた方は、左上の検索欄に「教員研修」や「教師の学び」を入力して検索すると、たくさんの記事を読めます。

 

 教員研修が機能していないという視点で、機能する22の方法を紹介したのが『「学び」で組織は成長する』(光文社新書、2006年)という本でした。しかし、残念ながら、教員研修はそれから20年間、従来の校内研とセンター研修に固執し続けて、教師の学びが確保されているとは言えない状態が続いています。

 時期が熟すのをこれ以上待てないので、22の方法の一つとして紹介していたコーチングに特化した2冊の本を出すことにしました。1冊目は、すでに出版されている『教師のためのアート・オブ・コーチング』https://www.amazon.co.jp/dp/4571102089/refで、2冊目は来年の2月末に出る予定の『インストラクショナル・コーチング』https://x.gd/P7NeI です。

 それら2つの特徴をまとめたのが、下の表です。


 この表から2つのアプローチの違いは、理解できましたか?

 

●『インストラクショナル・コーチング』

 『インストラクショナル・コーチング』は、学級経営も含めて授業(教え方)★で改善したい点を特定し、それを自分のものにするために必要な知識やスキルを学び、実践をしながら新しい知識やスキルが自分のものになるようにすること(インパクト・サイクルを回すこと)が中心です。

 したがって、https://projectbetterschool.blogspot.com/2015/11/blog-post_29.html

の2つ目の表の一番下の段の「サポート」を確実に実現している方法なわけです。コーチの手厚いサポートによって、教師の8~9割は使いこなせるようになりますから。その際、新しい知識やスキルを達成可能なSMART目標(Specific 具体的で、Measurable 測定可能で、 Achievable 達成可能で、Relevant 関連性あり、Time-bound 期間を設定した目標)ないしPEERS目標(Powerful 効果的か、Easy取り組めそうか、Emotionally compellingどうしても達成したいと思えるか、Reachable達成可能か、Student-focused 生徒中心かのすべてを満たしている目標)を設定することが大切にされています(『インストラクショナル・コーチング』の135~6ページを参照)。この目標設定が、極めてあいまいになっているのが日本の教員研修の大きな特徴の一つです。

 授業改善を実現する一つの効果的かつ達成可能な目標(知識・スキルの獲得)を設定することで、教師は6~9週間という比較的短期間のうちに成功体験をもつことができます。そして、それが次のサイクルを回す大きな動機づけにもなるわけです。生徒にとってはもちろん、自分にとってもいいことは、ドンドン繰り返したいですから。

 平等・選択・声・対話・振り返り・実践・互恵性の七つの原則は、それを見るだけでは当たり前のことが書かれていると思いがちですが、設定した目標を実現するために、コーチと教師が協働し、信頼に基づき、そして共に成長できるパートナー関係を築くための不可欠かつ決定的な要因なので、たとえコーチングを受けなくとも、『インストラクショナル・コーチング』を読んで自分が実践できるものにしてください。なぜなら、他の教師のコーチにならなくとも、教師として生徒とのパートナー関係を築く際にそのまま使えるからです(使わなければ、いい授業/生徒が夢中で取り組む授業は難しいでしょう!)。

 すでに紹介した「パートナーシップの原則」と「インパクト・サイクル」の他にもインストラクショナル・コーチングが成功する要因として、インストラクショナル・プレイブックhttps://projectbetterschool.blogspot.com/2024/07/blog-post.htmlの存在や、データ重視の進め方があります。

 

●『教師のためのアート・オブ・コーチング』

 『教師のためのアート・オブ・コーチング』の目的は、もちろん『インストラクショナル・コーチング』と同じように教師や管理職の行動を変えることなのですが、それを実現する方法として対象者の信念、価値観、感情、あり方を扱うところに特徴があります(トランスメーショナル(変革)コーチングという名称を使っているぐらいです!)。そのために、コーチと対象である教師ないし管理職は、心理的安全性と信頼関係を構築するためによく聴き、よく問いかけるだけでなく、ほどほどに自己開示もします。

 「年間サイクル」は、1年間に一つのサイクルを回すのではなく、ミーティング(毎週ないし少なくても隔週)毎に回している感じです。

 そして、行動の変容は、ミーティングとミーティングの間でコーチと合意したことを具体的な授業改善や行動に移し、次のミーティングでそれを振り返り、さらに修正改善した実行に移すというプロセスを繰り返す形で、小さなステップ(成功)を積み重ねることで、変容が現実の場に根づいていくのです。

 本書の他の特徴(成功の理由)については、https://note.com/coachingletter/m/ma24c24afc5bd の12月10号をご覧ください。

 『教師のためのアート・オブ・コーチング』は、欧米では過去10年ぐらいの間に教育書で最も売れた本の一冊です。昨年、その改訂版が『Arise』というタイトルで出ましたが、10年間の蓄積を踏まえて、ほとんど別な本(というか、さらにレベルアップした内容)になっているので、初版をまだ読んでいない日本の読者にとっては、改訂版から読み始めるのは荷が重いのではないかと判断して、比較的理解しやすく、かつとっつきやすい初版の方を訳しました。

 また、原書のタイトルには「教師のための」はありません。著者は、教育関係者以外の読者も読めるように、コーチングの基本を網羅的に押さえながら、これ一冊があればコーチングができると思ってもらえるように書いています。それが、400ページの大部な本になっている理由です。

 

コーチング便り

 なお、この「PLC便り」の姉妹ブログとして、4つ目の教育ブログ★★の「コーチング便り」https://note.com/coachingletter/m/ma24c24afc5bdを先月からスタートしていますので、そちらも是非ご覧ください。

 

 今回の記事からも、「サイクルを回す」ことが学びを確保するための鍵になっていることが分かります。逆に言えば、サイクルになっていないと、学びを得にくいのだと思います。それは、教師対象の研修にも、生徒対象の授業にも、等しく言えます。

https://projectbetterschool.blogspot.com/2025/09/responsive-teaching.html

https://projectbetterschool.blogspot.com/2012/06/blog-post_17.html

https://projectbetterschool.blogspot.com/2023/01/blog-post_15.html(教科書や指導案/書は、必然的に直線になってしまい、サイクルにならない?!)

 

★欧米では、学級経営と授業とを日本ほど明確に分ける傾向がありません。分けることによるメリットって何でしょうか? そして、デメリットは?

★★ 残り2つは、WW&RW便り:http://wwletter.blogspot.com/ と  SEL便り:         https://selnewsletter.blogspot.com/  です。

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