校内研究/研修を含めて、教員研修のことを英語圏では、一般的に、Professional Developmentと言っています。直訳すると「プロとして成長し続ける」ですから、まさに理想のタイトルです。(いか、PDで略す)
でも、その現状はどうか?
ちょっと古いですが、「現状は厳しい」ことがわかる論文を見つけました。
‘Professional
Development: A Great Way to Avoid Change’, by Peter Cole (2004)
その論文に書かれているポイントは、以下の10点です。
1. PDとして行われているもののほとんどは、誰も成長させていない。
2. PDとして捉えるものを、もっと広げなければならない。
3. 教師に改善を求めるのであれば、PDよりも「プロとしての学び」の方がいいのでは。
4. 教師の学びの場は、学校である。
5. 「プロとしての学び」を得るための効果的な方法を知らないし、排除している。
6. 学校のリーダーは、学校の中で教職員がプロとして学び続けられる文化をつくり、維持する責任がある。
7. 学びや学校を変える単位は、個人ではなく、チームである。
8. 個々の教師の成長(学びの)プランは、教師自身の腹づもり(意思)を中心に据えるべきである。
9. 個々の教師が改善・成長・学びを実現するために、必要なサポートを何かを明らかにする必要がある。
10. 個々の教師の成長(学びの)プランは、具体的かつ実現可能なものでなければならない。
以上を読まれて、どのような感想を持たれましたか?
日本が現時点で抱えている教員研修/校内研究・研修、そして教師の成長が図れない状況と極めて似ていると思われたでしょうか? そして、それを突破する切り口は見えたでしょうか?
それでは、ちょっと長くなりますが、以下に私のコメントを項目毎に付けていきます。
1. PDとして行われているもののほとんどは、誰も成長させていない。
まったくその通りです。今のままを続けることは、先生たちに失礼です。そして、その究極的な受益者である子どもたち(や親たちや社会)にも。教員研修/PDを企画する立場にある人は、教師を対象と設定せずに、子どもたちや親たちを対象に設定してみたらいいと思うぐらいです。そこまで伝わらなければ、無駄であることが一層明確になりますから。
2. PDとして捉えるものを、もっと広げなければならない。
従来からしていることを、同じようにやるだけでは効果はあがりません。授業は変わりません。(それは、誰もが薄々は気づいていることです。それとも、すでにハッキリ気づいていますか? では、やめましょう! そして、変えましょう!)具体的な広げ方については、『「学び」で組織は成長する』(光文社新書)を参考にしてください。
3. 教師に改善を求めるのであれば、PDよりも「プロとしての学び」の方がいいのでは。
名称で改善が図れるのであれば、何を使ってもいいです。(確かに「学び」の方が、どこでも起こりえるし、多様な方法も気づかせてくれるかもしれません。)
「情報の伝達」的な内容と、「主体的な学び」的なものを明確に分けることは大切だと思います。現状では、伝達研修が主流で、主体的な学びはほんのわずかです。(あるかな?)
4. 教師の学びの場は、学校である。
まったくです。基本的に学校以外の研修は、時間と税金の無駄遣いなので即刻やめるべきです。★(無駄な理由は、下の9に書いてあります。)かと言って、現状で学校で行われている校内研究/研修が機能しているかというと、そうではありません。そのためにも、5以降がとても大切です。
5. 「プロとしての学び」を得るための効果的な方法を知らないし、排除している。
効果的な方法として、『「学び」で組織は成長する』『効果10倍の教える技術』『効果10倍の学びの技法』『テストだけでは測れない!』『いい学校の選び方』『ペアレント・プロジェクト』『会議の技法』などが参考になります。他に、参考になる本がありましたら、ぜひ教えてください。
6. 学校のリーダーは、学校の中で教職員がプロとして学び続けられる文化をつくり、維持する責任がある。
まったくその通りなのですが、それができている管理職は何%いるでしょうか? ちなみに、「リーダー」は管理職のみを指しておらず、教務主任や学年や教科等のリーダーなど学校のミドル・リーダーも含んでいます。その人たちに、ここで書かれている責任を果たすのに一番参考になる本は『校長先生という仕事』かもしれません。このために書かれたような本ですから。学校のリーダーたちは、「学びのリーダー」として自分が興奮する情報を適度に(選択肢のある形で)教師たちに提供し続ける存在です。(しかし、その情報が決定的に少なすぎるのが日本の現状でもあります!★★)さらには、実践し続ける存在です。
あなたは、どのような学校(職場)であれば、学び続けたいと思いますか? どのような要素が大切だと思いますか?
7. 学びや学校を変える単位は、個人ではなく、チームである。
これもまったくです。悉皆研修も、校内研修も、あまりにも個人中心で、チームが無視され続けています。下の9とも関係しますが、一人だけで自分の学び(ましてや、学校レベルのこと)を変えられるような人はほとんどいません。サポートし合う仲間がいることが何よりも大切です。『「学び」で組織は成長する』には、二人やチームでやれることが、個人でやれることや学校全体でできることと同じレベルで紹介されています。
8. 個々の教師の成長(学びの)プランは、教師自身の腹づもり(意思)を中心に据えるべきである。
この辺は人事考課とも関係してきますね。(ちなみに、人事考課制度が導入されてから、もうしばらく経ちますが、機能していると言えますか? 構造的に、教師と生徒たちの間で毎学期行われている成績のやり取りと同じなのですが、気づかれていましたか? その意味では、両方とも対象の学び/成長を実現する方法なのですが、現状では誰にとっても「時間の無駄」が続いているだけなのではないでしょうか?)目標を明らかにした上での計画づくり(人事考課や子どもの成績はその結果!)には、ここに書いてあるように、教師自身が何を大切にしたいのかが鍵です。(成績の場合は、子ども自身が何を大切にしたいか、が!)
その際、選択できることが大切です。押し付けられたもので全力を出せる人など、そうはいませんから。
9. 個々の教師が改善・成長・学びを実現するために、必要なサポートを何かを明らかにする必要がある。
日本の悉皆研修および校内研究/研修に欠如しているのが「サポート」や「フォローアップ」という考え方です。これは、長年の一斉指導の弊害でしょうか? それは、「一度教えたことは分かって当たり前。分からないのは、聞いていないのが悪い」という発想です。しかし、一度や二度聞いただけでできるようになったり、変われるようになる人などほとんどいません。何回(何十回!)ものサポートやフォローアップが必要です。何か改善したければ、変えたければ、その仕組みこそが大切だということです。それに対して、一度理論や正論を言うことは、10分の1ぐらいのウェートしかありません。
10. 個々の教師の成長(学びの)プランは、具体的かつ実現可能なものでなければならない。
これは、上記の何冊かの本で紹介しているSMARTな計画を立てることそのものです。
イベント的な「研修」は、何十回、何百回やったところで、何も変えません。通常の授業(仕事)と学びを一体化させない限りは。つまり、日々の授業(仕事)がよくなることと、教師の学びが継続して行われ続けることの一体化です。★★★(実はこれは、教師と生徒の間で行われる「指導と評価の一体化」と同じ構造でもあります! 授業が終わった後に、評価していては「時すでに遅し」ですから、子どもの学びも、教師の授業も変わることはありません。単なる儀式として評価しているだけが続きます。) そのための方法を見つけて、実践しない限りは、学校も、授業も、子どもたちの学びも変わりません。★★★★
以上のような教師の学びを始めているある学校の取り組みを紹介します。日本ではなくて、イギリスの例ですが。https://www.huntingtonlearninghub.com/
★ 免許更新制を言い出した政治家(安倍さん?)も、それを実現した官僚も、学びはどうつくられるのかという原則をお知りでないようです(教師対象の研修と子どもたち対象の授業の構造は同じですから、授業に対するイメージも持ち合わせていないことをさらけ出してしまっています!)。表面的に「自分たちは仕事をちゃんとやっていますよ」というジェスチャーを示せるためにしているだけでした。その被害を被っているのは、学校現場。しかも、間違った教員研修=学びのイメージを広げています! それにしても、それにお付き合いしているマスコミや大学は、いったい何なんでしょうか?
★★ 教員研修や教師の学びに関する情報および教育全般に関する情報は、日本語で得られるものと英語で得られるもので、1対100以上の差があります。こと教員研修に関しては、日本ではほぼ存在しないも同然なのですが、英語ではおもしろい価値ある本や雑誌がすごい数出ています。このニーズの大きな違いに驚くばかりです。これは当然、授業の質に反映されるわけです。
★★★ それは、研修/PDを、やりたくもないのに「やらされるもの」から、「進んでやらないわけにはいかないもの(やりたくてやりたくて仕方がないもの)」への転換を意味します。評価も、そういうもの(=楽しいもの)にすることは可能です。必ずしも効果的とは言えない、テストの呪縛から解放されれば。
★★★★ 『テストだけでは測れない!』や『読書家の時間』が参考になります。
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