2012年3月18日日曜日

PLCの評価基準表 ・その3

今回は、5つあったPLCの評価規準の項目の1番目の「子どもたちの学びに焦点を当てて授業がされている度合いはどれくらいか?」の評価基準表です。(1回目2回目も大切なもの満載でしたが、今回がすべての基本と言えるかもしれません。)先週に引き続いて、表の形にしていますが、A(初歩的な段階)とD(目指すべき段階)だけで、間のBとCは省いています。 (表をクリックすると、拡大で見られます。)



 A段階で授業が行われる限りは、残念ながら子どもたちの学びの質と量は極めて低いレベルが継続されます。それに対して、D段階まで行くと子どもたちは解放されたように(指導要領や教科書の枠をはるかに越えて!)学びの質と量を獲得し始めます。
 それを妨げるのも、実現するのも、教師次第です。
 そして、その教師の転換を図れるのは、管理職や教育委員会の指導主事のサポート次第です。
 逆に言えば、教育に関わるすべての人は、選択をもっているし、実際選択をしているということです。その事実を意識しない限りは、今していること(=A ?)が続くことが約束されています。

 最後の項目の「学びの原則」は、スペースの都合で表には含められませんでした。私がこれに出会ったのは、90年代の終わりごろです。★認知心理学や人の学びをつかさどっている脳がどう機能しているのかという研究が明らかにしてくれつつあることをまとめたものが「学びの原則」です。(従って、私が言い出したことではありません。認知心理学者や脳の研究者が言っていることです。)

    <以下、メルマガの続き>

 すでに、私が書いた本や訳した本の中では何回も紹介しているので★★、ご覧になった方もいるかと思いますが、もう一度確認してみてください。以下の9つの項目で、あなたが納得できる項目(○)、賛同しかねる項目(×)、どちらとも言いかねる項目(?)をつけながら。

学びの原則

(1) 人は皆、常に学んでいる。ただし、各自の学び方やスピード、もっている能力が違う(動機も違う)だけ →マルチ能力も含めた、多様な教え方が求められる。

(2) 安心して学べること(人は頭だけでなく、心やからだを使って学ぶ)。さらにいえば、楽しいほうがよく学べる →人間関係を含めた、サポーティブな環境や雰囲気づくりの大切さ。

(3) 積極的に参加できること →聞かせるだけでなく、生徒たちにこそ主体的に動いたり、考えてもらったり、体験することが大切(知識は伝えるものではなく、生徒たち自らがつくりだすもの。技能・態度も同じ。そのためには教師の刺激的な投げかけが効果的)。

(4) 意味のある内容/中身を扱うこと(身近に感じられること) →人は白紙の状態から学ぶのではなく、それまでの体験や知識を踏まえて学ぶ。

(5) 選択できること →与えられたものをこなすよりも、自分が選んだものの方がよく学べる(生徒たちは、何を、どう学び、どう評価するかの選択まで参加できるし、実際にそうした時の方がよく学べる。換言すれば、生徒たちを信じて、学びの責任を与える。その際、高い期待を生徒たちに示し、容易にできる選択だけでなく、努力すればできるレベルのものも提示する)。

(6) 十分な時間があること →たくさんのことを短時間でカバーするだけではよく学べない。身につくまで練習できることが大切。

(7) 協力し合えること →競争させたり、バラバラで学ばせるより、相互にやり取りした方がよく学べる(今日、何人かでできたことは、明日、一人でできる)。ただし、一人、二人、チーム、全体での学びのバランスは大切。

(8) 振り返りとフィードバックがあること →自分自身で頻繁に振り返ることと教師や他の生徒からのフィードバックがあるとよく学べる。

(9) 互いに讃え合うこと、教える機会が提供されること →よく学べた時は、祝う、誉める。他の人に教えるチャンスが与えられると(例えば、マルチ能力のように多様な表現の仕方があると)、よりよく学べるし、さらに意欲がわく。


 これら9項目は、上の表(=「子どもたちの学びに焦点を当てて授業がされている度合いはどれくらいか?」の評価基準表)の項目とオーバーラップする部分がほとんどだということに気づかれましたか?



★ 特にインパクトを受けたのは、Human Brain & Human Learning, by Leslie Hartでした。

★★ これほど大切なものはないと思っているので、繰り返し紹介しています。単に知識として理解するのではなく、実践しないと意味のないリストですが。

0 件のコメント:

コメントを投稿