週に何回か小学生と一緒に算数を学ぶ機会があります。そのなかで、算数は学んでいく上で大きなポイントがいくつかあることを改めて感じています。
まず、小学校1年生で学習する「繰り上がりのあるたし算」をやっていくのに必要な「たして10になる数」、たとえば3+□=10の□に入る数が何か、これがすぐに出てくると繰り上がりのあるたし算の計算がスムーズにいくわけです。ですから、1~9までの数字に何を足せば10になるのかをかけ算九九のように暗記できればその後の計算が楽になるということです。
それから、2年生で扱う「かけ算九九」があります。これができていないと小学校の後半及び中学校の数学が非常につらくなります。また、小学3,4年生で学習する小数も小数点の位置などをしっかり押さえておかないと先に進めません。また5,6年生で習う分数の四則計算も「通分」といった概念が理解できていないと正しく計算できません。
ただこのような計算技術が身につけばよいかというと、そうではなくて「計算の意味」を理解することもまた大切です。しかも子どもたちが自分で納得して、理解することがポイントです。そのために算数では、具体物の操作を通して理解するために様々な教具がこれまで開発されてきました。それによって、「具体」から「抽象」へと理解が進んでいくわけです。
そして最終的な目標と言うのは、「抽象的な概念・思考を学ぶ」ことになります。そして、小学校高学年以降の算数・数学は目に見える具体物への応用がなくても、抽象的な思考(想像力)を可能にする学問と言えるでしょう。このあたりのことについては、『数学にとって証明とは何か』(瀬山士郎・講談社ブルーバックス2019)が参考になります。この抽象的な思考力は人間の特長であり、人間の考え方の基礎となるものです。
たとえば「分数」を学ぶことは、その概念理解と、計算技術を学ぶことを通して、抽象的な経験をすることになります。また、数学の「証明」という分野もあらゆるものごとを論理的に判断する基礎力となります。算数・数学が嫌いという子どもたちも多いと思いますが、教師としてはこのような背景があることを理解して、指導に当たることが必要でしょう。
現在では計算技術を身につけることは、AIで最適化されたコンテンツ学習をICT利用によって学ぶことで充分可能です。そして、先ほども述べたように、大切なのは「計算の意味」を子どもたち自身が納得する形で理解することです。それは子どもたちの問いを出発点として、小グループでの学びを中核に据えた授業によって可能になると思います。
昔読んだ数学の本の中で、数学は中学→高校と進むにつれて、ちょうど山を登っていくように上に行くほど景色がよくなり、山の様子がよくわかると書いてあったことを思い出します。中学校での因数分解、平方根、二次方程式があまり興味を持てない内容だとしても、高校数学になるとそれらを活用した問題、さらには微分・積分に話が進むと一気に視界が開ける感じです。そんな面白さを子どもたちに味わってもらえるように、「計算技術」と「計算の意味」が納得できるような学びを大切にしたいものです。今、定期的に教えている小学生の子どもたちを見ていて日々そんなことを考えています。
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