2020年11月1日日曜日

新刊紹介『退屈な授業をぶっ飛ばせ-学びに熱中する教室』


多くのアメリカの高校生が、授業に退屈(Boredom)を感じているという。その現状を、本書の第1章の最後のページから、少し長くなるが引用しておきたい:

「UCLA名誉教授で、教育の機会均等が専門のジーニー・オークスは、個人の教育的ニーズに応えることを装って、低所得層の、非白人の家庭の子どもたちが、楽しくもなく、魅力もないクラスに割り振られる傾向があると、繰り返し主張している。一方で、学力上位クラスに割り振られた生徒たちには、知的に高度な考察や興味深い問題解決学習の機会が与えられている。低学力層のクラスでは、答えを書き写すだけだったり、同じような問いに繰り返し応えるだけの、単純な記憶や簡単な内容理解が求められる活動に限られていた。 

ファインは、この問題について教師たちと議論を続けてきた。そこで明らかになったことは、より主体的に学べる課題が与えられれば、低学力の生徒でもよく学べるという数多くの事例があるにも関わらず、学校や教師たちの多くは、来る日も来る日も、生徒たちに基礎基本を覚えるためのドリル的学習を課し続けているという事実であった。 

生徒たちは、これが終わったら、もっと楽しい学習に進むと繰り返し聞かされている。でも、そのような日は決して訪れない。

結局、生徒たちは、そのような学習を続けることに幻滅し、学ぶことをやめ、多くの場合、中途退学してしまうのである。ワクワクするような学びを一度も経験することなく。」


我が国も、まったく同じ状況ではないだろうか。学ぶことは、もっと楽しいことだったはずだ。ワクワクするような学びのある教室とはどのようなものだろうか。

21世紀を生きていく若者には、新しい学力が求められている。わが国でも、「総合的な学習の時間」の導入以降、自ら考え、自ら学ぶ児童生徒の育成が期待されたが、日本の学校教育はいまだ変革の途上だ。多くの学校では、今でも一斉授業が主流であり、教師が熱心に話し、生徒は真面目にそれを受け入れている。新しい学び方が求められていることは、認識しつつも、従来型の古い教え方を捨て去ることができていない。「主体的、対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」への関心も高まりつつあるが、部分的に討議や発表を取り入れる程度で、授業の本質的な変革には至っていないと思われる。

本書(Beat Boredom-Engaging tuned-out teenagers)は、そのような現状に一石を投じ、本格的な授業改革に踏み出したいと考える教師に、実践のアイディアと多くの示唆を提供してくれる貴重な一冊である。

本書には、ジャーナリストから教員に転じた筆者が、試行錯誤しながらその退屈さを打ち破り、生徒主体の授業をつくりあげていく様子が生き生きと描かれている。伝統的な授業や保守的な先輩教員との葛藤に揺れ動きながらも、生徒にとって本当に必要な学びとは何かを問う、映画のような教育ドキュメントとなっている。

本書で紹介されている事例は、著者が指導していた高校の政治経済、歴史、ジャーナリズムに留まらず、理科、数学、国語など多くの教科に及んでおり、教科統合的な授業づくりへのヒントも数多く散りばめられている。また、生徒の主体性を引き出す手法や考え方は、小中学校は言うに及ばず大学などでも応用が可能なものとなっている。

あらゆる校種、あらゆる教科において、主体的、対話的で深い学びを実現するためのエッセンスがちりばめられた一冊と言える。


◆書籍情報

マーサ・ラッシュ著(長崎政浩,吉田新一郎訳) (2020) 『退屈な授業をぶっ飛ばせ-学びに熱中する教室』新評論.

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