2020年5月10日日曜日

遊びが宿題に欠かせないわけ


緊急事態宣言の延長が決まり、さらにもう一月。休校はこれで3ヶ月目に入ろうとしています。その間の学習について、3月は年度のまとめ学習でなんとかしのぎ、4月はこれまでの復習プリント送付。焦り始めた学校がオンライン授業に乗り出しました。そして、5月。このまま中途半端な宿題の課題を推し進めることはできず、いよいよ文科省も新年度の教科書を使った家庭学習を推奨し始めました

現状ではオンライン授業や宿題を一方的に送らざるを得ません。家庭の様子や子どもたちの学びの様子をキャッチしたくとも、その手段がありません。あったとしても、職員室にある電話2台と事務室の電話1台で計3台を全学年で利用する惨状。このような状態では、子どもの気持ちを引き取りながら、何のために子どもたちはその学習をするのか、大切なことが抜け落ちてしまっています。

子どもたちにとって、この時期だからこそ、本当に必要な学びとは一体何なのでしょうか? この休校中の課題は、全員が同じ宿題(教科書の自学)をやるべきなのでしょうか? 休校が続く中では、宿題を使って子どもの生活を全て学校が管理しようとしがちです。今、やることは、新学習指導要領の教科書をカバーすることだけではありません。子どもにとって本当に意味のある宿題を提案し、よりよく成長できるようにすることです。子どもらしく育つことを保障してあげることです。子どもの不安を、学びを通して癒やしてあげることです。

最近の取り組みをふりかえって、学校から出されている宿題について考えてみましょう。『遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる』★★の巻末に、おもしろいエキササイズがありました。紙と鉛筆を用意して、今の学校から出されている宿題をイメージしてみて、ぜひやってみてください。

“「遊び、学び、勉強の3つのサークル(輪)を描き、それらの大きさや相互関係を図で示してください。」ピーター・グレイ著・吉田新一郎訳『遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる』P.313

このイラストは16年以上前の中学生のものです。今と比べてみると、よくなっていますか? 理想から遠いものとなっていませんか? きっと、驚くほど「遊び」が抜け落ちてしまっているのではないでしょうか。「子どもたちのために」と思って出される宿題。ここは少しこらえてみて、バランスをとってみませんか。ここでの「学び」は子どもたちが自発的に取り組むもの、「勉強」は一方的にやらされているもの、では子どもにとって「遊び」とはなんでしょうか? 遊びには人を育てるパワーがあります。子どもの遊びを保障し、家庭学習に遊びを推奨していくことです。

遊びには、以下のようなものがあります。

1.遊びは、自己選択的で、自主的である。
2.遊びは、結果よりもその過程が大事にされる活動である。
3.遊びの形や規則は、物理的に制約を受けるのではなく、参加者のアイディアとして生まれ出るものである。
4.遊びは想像的で、文字通りにするのではなく、「本当の」ないし「真面目な」生活とはいくらか意識的に解放されたところで行われるものである。
5.遊びは、能動的で、注意を怠らず、しかもストレスのない状態で行われるものである。
ピーター・グレイ著・吉田新一郎訳『遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる』P183より

今こそ、この子どもたちの自己選択的で、自主的な遊びを宿題の中に入れるときです。ドリル学習のみの宿題はもってのほか。このことについては、先月のPLC便りで紹介した「創造的休暇」にその例が挙げられています。★★

いくつかの方法がとても効果的です。あらためて遊びの具体例として挙げてみます。

遊びの宿題例
    自分が学びたいと思っていることに好奇心に夢中になろう。
    動画、歌、美術作品、ツリーハウス、車の改造、アニメや漫画、衣服、料理レシピ、豪華な食事やデザートなど、好きなものをものづくりしよう。
    自然の中で観察記録をしよう。観察する植物を決めて、毎日、最低でも20分からその場所で観察します。見たこと、聞いたこと、感じたこと、嗅いだことなど、観察したことを日記に書いてみよう。

他にも『宿題をハックする』には、遊びを学びに関連付ける例として、遊びをベースにした学校外での活動を子どもにリストアップしてもらう実践も紹介されています。★★★★ 子どもたちに課さなければならない宿題があることは重々承知です。「つまんなーい」と声が聞こえてきそうな宿題に別れを告げ、子どもたちが好奇心を発揮して学習に夢中になるような、遊び宿題を開発してみませんか? 

「遊びこそ、学びの理想型です」アルベルト・アインシュタイン

子どもたちは、遊びと学習、社会性、感情面、身体面の成長を関連付けながら成長し
ます。遊びは宿題に欠かせません。ぜひ、この休校中の遊び宿題の取り組みで、よかったことがあったらメールで pro.workshop@gmail.comまでお知らせください。



    新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業等に伴い 学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)
<家庭学習の内容の例
    教育委員会や学校作成のプリントを活用した学習 ・NHK Eテレ等のテレビ放送を活用した学習
    委員会や教科書発行者などの民間事業者等かが提供する ICT 教材や動画を活用した学習
    文部科学省ホームページ「子供の学び応援サイト」1に掲載されている教材や動 画等を活用した学習
    パソコンやタブレット端末等による個別学習かが可能なシステムを活用した学習
    一定のテーマについてインターネットを活用して調べまとめる学習
    テレビ会議システム等を活用した教師による同時双方向型のオンライン指導を通じた学習

★★ ピーター・グレイ著・吉田新一郎訳遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる』新評論 P.313


★★★ オンライン学習だけがすべてじゃない! 子どもに創造的休暇を!

★★★★ スター・サックシュタイン+コニー・ハミルトン著 高瀬裕人・吉田新一郎訳『宿題をハックする』新評論 P.114参照

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