2011年11月6日日曜日

校長という仕事

先日、中学校校長会の全国規模の大会に参加してきました。


 全国津々浦々から、2,300人の参加者がありました。



 そこで、感じたことをいくつか書きます。


 一つは、同じ日本といっても、地域によってその学校の実情はかなり違います。初日の分科会での話ですが、50代の職員が多い学校のある校長は、その50代をどうやる気にさせるかということで、苦慮していました。また、若手教員が半数以上を占める学校の校長は若手の育成をどうすればいいのか苦労していました。


 ここに、今日の日本の公立中学校の置かれている現状が端的に表されています。


 この数年、団塊の世代の大量退職で多くの新規採用職員が配置されているのが、都市部の現状です。反対に、過疎地域では、まだ大量退職には時間があり、50代の職員が多いということです。私の勤務する県は、後者のに該当します。


 私の現任校でも、50代の職員が全体の職員数の4割を占めています。


 ベテラン揃いで、経験は豊富ですから、何をやっても卒なくこなすことはできます。ただ、それが本当に子どもの心を動かすような活動になっているのか、子どもの心に火をつけるようなことができているのか、というと疑問なところがあります。


若手には、若手のよさがあります。子どもの心をつかむとか、一体感を作り出すとかは若い教員の得意な分野です。ただ、指導法やプロジェクトの進め方などは当然ながら力量不足な点が見られます。ですから、若手がベテランからよいところを学び取り、ベテランのよさをうまく若手に伝えていくようなOJTができればいいと思います。 


 このベテランから若手への指導技術の伝承は、「メンタリング行動」そのものでもあります。以前、メンタリングについて研究しましたが、企業などでもかなり多く取り入れられている研修スタイルです。昔は、学校内に宿直室があり、そこで夜遅くまで先輩から後輩への指導する場面があったようですが、今日の学校はそのような機会を意図的に作り出す必要に迫られているようです。


私自身、教師になって田舎の中学校に赴任しました。20代の同僚は1人しかいませんでした。後は、すべて40代以上の人ばかり。最初はよく先輩たちから叱られることが多かったことを覚えています。でも、実によく面倒を見ていただきました。その恩返しは、私自身が今の後輩たちにしなければなりません。



 (メルマガの続き)



 もう一つ今回の大会に参加して感じたことは、学校経営に関するノウハウを組織として蓄積できていないということです。前回も書きましたが、アメリカの校長会はそのあたりの情報提供が実に丁寧です。会員の職務や活動をサポートするという点では、彼我の差は大きいと思います。まだわが国の場合は、学校経営ではなくて「管理」の色彩が強い印象を受けます。


 だからこそ、「学びの論理」で動く、PLCの存在意義があるのだと思います。特に中学校の場合は、緊急事態のときは別としても、やはり「学びの充実」が学校をよくする最良の手段です。


 ここで、問題になるのは中学校の場合は「部活動」があるということです。部活動の生徒育成への貢献度は大きなものがあり、これによって荒れていた学校を建て直したという事例は枚挙の暇もないくらいです。ですから、決して「部活動」の意義を否定するものではありませんが、それだけでは足りないのだということを改めて言いたいと思います。



「教室での学び」が十分に行われてこそ、部活動も生きてくるのです。よく車の両輪と言いますが、まさにその通りなのです。どちらが不十分であってもいけない。そんな関係なのです。欧米の場合は、「部活動」はありませんから、教師がそれに労力を振り向けなくても済みます。しかし、わが国の場合は、教師のボランティアによってその多くが成立している「部活動」に、かなりの時間とエネルギーを割かれることになります。教員の資質向上論もこの問題を抜きにして語られているから、現実味のない話になってしまうのです。



 今や全国各地で見られるようになった「コミュニティスクール」が本当に「地域にある学校」を標榜するならば、その運営協議会のような組織が中核となって、「部活動」運営を担うような形がいいと思います。そこにも地域の人材や教員のボランティアが指導者として配置されるような「部活動」になれば、システムとしては一番すっきりとした形です。
 そのような方向をしっかりと見据えて、部活動のあり方が改善されるといいと思います。


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