今「心の健康」はどの職場でも問題になっていることです。
職場での人間関係に起因するストレス、その他様々な要因があるかと思いますが、学校においても同様です。
保護者の対応一つとってみても、難しいことがあります。
これから教員になる人は、コミュニケーション能力に長けている人が向いていることは間違いありません。ここしばらく、教員採用試験が難しくなっていたために、筆記試験に強い人がどうしても合格する比率が高かったように思います。
筆記試験に強い人のすべてがそうだとは言いませんが、他人とのコミュニケーションが案外下手な人が試験に合格して教員になり、いざ現場に配属されて、実は教師に向いていなかったという理由で退職していくケースが見られます。
私が管理職になってから、中途で退職した職員が2名いました。
1人は、地元の大学の大学院を修了して、教員になった人です。しかし、採用されてから1年半後に、学級経営に行き詰って精神的に追い込まれた状態になりました。12月の最後の日の朝、突然「今日限りで辞めます」というFAXが学校に送られてきました。
それまで特に悩んでいる様子もなかったので、最初は何が原因なのかわかりませんでした。その日、校長と私(副校長)はすぐ本人の自宅に駆けつけて、翻意を促しました。しかし、本人の決意は固く、説得は不調に終わりました。悩みの原因が学級の生徒とうまくいかないことにあることをそのとき初めて知りました。自分の経験談なども語りましたが、効果はありませんでした。相談も持ちかけてもらえなかった不甲斐ない管理職であったことを深く反省しました。日ごろから、職員の動向には気を配っていたつもりが、全く何もわかっていなかったのです。
もう1人は、経験10年の中堅教員でした。
その人は、まじめそのものの性格で、能力も高いのですが、自分に対する要求レベルもまたかなり高いものがありました。私から見れば、十分に働いていると思えるのですが、その人の満足レベルには達していないことが度々あったようです。そのような性格が要因だと思いますが、前任校で精神疾患になり、数ヶ月休むことになりました。その後、私の勤務する学校へ異動してきたのですが、また1年半後におかしくなりました。最初の1年は学級担任からはずしていたのですが、次の年は組織の事情もあり、学級担任を任せることにしました。その数ヵ月後です。生徒との関係がうまくいかず、休むようになりました。
何とか仕事を続けられるようにサポートしましたが、結局だめでした。そればかりか、本人は自殺をしかねない精神状態になっていました。何とかそれは食い止めましたが、その年度の終わりで退職することになりました。このときは、私は校長になっていましたが、自分の無力さを再び思い知らされることになりました。
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この2人のケースで言えることは、2人とも、とてもまじめな性格な人であるということです。
まじめさはもちろん教員として大切な資質ですが、それにも増して必要なのは周囲の人とのコミュニケーション力です。どちらのケースも周囲の人たちはかなり本人をサポートしていたと思うのですが、それがうまく通じていなかったようです。
今、精神疾患によって休職される教員がどこでも増えているようですが、メンタルヘルスは大切な問題です。
すべての職員がいきいきと働くことのできる職場づくり。この理想に向かって、管理職は職場のマネジメントをやりたいものです。
「ラーニング・リーダーシップ入門」(牛尾奈緒美他・日本経済新聞出版社)によると、「昨今のメンタル不全の急増は、やりがいや仕事量の問題に加えて、職場の雰囲気や人間関係が原因になっていることが多いそうです。」とのことです。
人はどんなときに最もいきいきと、仕事に向き合うことができるのでしょうか。
「自分のやりたい仕事が進められる」「成果が表れて、それが周囲から認められる」「仕事に対して達成感を感じることができる」など、様々なケースがあると思いますが、上司や同僚から「認められる」「満足感がある」ことは「いきいきと仕事をする」上で大切な要素であると思います。
現在ほとんどの都道府県で「教員評価」が実施されており、その際に定期的な面談の機会が設定されていますが、この定期面談以外にも、折に触れて管理職は部下に対して、「賞賛」などの「その人の仕事ぶりを認めてあげる」ことが必要です。
最後に、校長自身の心の健康も大切です。
それには、近隣小中学校の校長、あるいは知り合いの校長との情報交換、本音で話のできる人が傍にいるといいですね。校内では相談できないこともあります。そんなときに、気軽にアドバイスをもらえるような人とのつながりがあることがとてもいいと思います。
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