「リーダーシップ」ということばで、ネット検索をかけると、驚くほど多くの結果が返ってくるようです。やはり、世界中の人にとって、重要なテーマであるのでしょう。今、我々が望んでこなかったようなリーダーたちが、世界を席巻しているようで、やや暗澹たる気持ちにならないでもありません。
学校における教員の業務は、多様化、複雑化しています。次々に新しい課題が生まれ、その多忙さは半端ではありません。教員の働き方改革は待ったなしの状況であり★1、休職する教員の数も増加の一歩をたどりっています。★2
一つの解決策として、メンタリングの導入があります。職場の中で、同僚同士のメンタリングが成果あげている例も少しづつでてきているようです。★3 今後は教員のサポートを専門的に担う「インストラクショナル・コーチ」が学校にとって欠かせない存在になると思っています。★4
教師を導くリーダーに必要なアプローチとして、増幅型リーダーという考え方があります。★5
増幅型リーダーは、周りの人の知性、エネルギー、能力を向上させ、人々を以前よりも何倍も効果的な存在にする人のことを指します。また、増幅型リーダーは、聞き上手であり、相手の強みを見抜き、他者のアイデアに対してもオープンで、相手のニーズや利益に応じた行動を取れる人です。
一方、その対極にあるのが、消耗型リーダーと言われる人たちです。消耗型のリーダーは、人々の自信、エネルギー、モチベーション、自己効力感を減少させます。また、自分が話すことが多く、相手の強みよりも、弱点を見抜き、人のアイディアには否定的です。
やっかいなのが、「無自覚の消耗型リーダー」という存在でしょう。最善を尽くしてくれる、善意のリーダーではあるのですが、その姿勢自体がメンバーを消耗させてしまうのです。「無自覚の消耗型リーダー」の特徴は次のようなものです:
- メンバーを無言にしてしまうほどリーダーが多くのアイデアを出してしまう。
- 常にエネルギッシュで周りの人を疲れさせてしまう。
- 苦労している人を手助けしてしまって、依存心や反感を無意識に生んでしまう。
- ものごとを急に進めようとしすぎる。
- あまりに楽観的すぎて、課題を矮小化。努力で解決できると思い込んでしまう。
日本社会、日本の学校には、この「無自覚の消耗型リーダー」の方が多いのかもしれません。学校には、真面目で、献身的、時に、滅私奉公的でな人が多いように感じるからです。
これは、教員の子どもたちへのアプローチともパラレルの関係にありそうです。教員の無自覚な「配慮」や「やさしさ」が、子どもたちが自分の足でしっかり立って、前を進むことを阻害しているとは言えないでしょうか。
人を真に生かし、成長させるリーダーシップとはどのようなものなのか、考え続けたいですね。
★1 「教員の働き方改革が必要な理由 教育専門メディアが解説」 https://www.kyobun.co.jp/article/2024083099
★2 「うつ病などで休職した教員 初の7000人超 過去最多 文科省調査」 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241220/k10014673801000.html
★3 熊本県教育センターの報告書 他多数 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sankou/__icsFiles/afieldfile/2018/10/05/1408491_02.pdf
★4 「学校の危機を救うインストラクショナル・コーチング」PLC便り2024年6月2日 https://projectbetterschool.blogspot.com/2024/06/blog-post.html
★5 Wiseman, L., with McKeown, G. (2010). Multipliers: How the best leaders make everyone smarter. New York: HarperBusiness. /関美和 訳(2015)『メンバーの才能を開花させる技法』海と月社 →『インストラクショナル・コーチング』(ジム・ナイト著、図書文化社、まもなくハ発刊予定) の第3章で紹介されています。
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