2024年8月4日日曜日

コミュニケーション力とパッション

コーチングの成否を握る重要な要素の一つがコミュニケーション力だと思います。

コーチングの基本的な考え方は、質問型コミュニケーション、すなわち、「聴く」「問いかける」「フィードバックを与える」という3つの基本的行為を使い、相手にとるべき行動を選択してもらうことだと言われています。

そのためには、(1) 答えは本人がもっているという確信をもつこと (2)コーチングの対象の強力な味方になること (3)コーチングの対象が選択して自発的な行動(アクション)を促すことが大切であると言われます。コーチングは、円滑な人間関係づくりと、意欲や新しい発想の引き出しを(コーチングに関わる両者に)可能にするものだと言えそうです。「批判する、責める、文句を言う、ガミガミ言う、脅す、罰する、ほうびで釣る」などの外的コントロールでは得られないものです。

間もなく出版予定の『インストラクショナル・コーチング』では、コミュニケーション力については、一章まるごと割さかれていて、筆者のジム・ナイト氏も、重視していることが分かります。★1  同書では、主に質問と傾聴の二つに分けて、詳しく論じられていますが、これ以外にも、コミュニケーションにとって重要な要素はたくさんあると思います。

その一つが、パッション(情熱)かもしれません。

人を説得し、動かすための3要素として、アリストテレスが、ロゴス(論理、納得感、思想)、エトス(信頼、徳、倫理観)、パトス(熱意、感情移入、共感)があげていることはよく知られています。人を説得するときに、もちろん論理的な説明は必要だし、信頼感も欠かせない、しかし、それらは、一部にしか過ぎない。人の説得においては、パトス、すなわち、感情がとても大きな役割を果たすと考えている人は多い。★3

感情と強く結びついたことは、忘れない。心に刻み込まれる。脳に「溶接される」と表現する人もいるほどです。

皆さんは最近、心が揺すぶられるような経験をしたことがありますか?

YOASOBIというユニットが大変人気です。岸田首相が訪米の際、バイデン大統領の公式晩餐会に招かれたことで多くの人が驚きました。小説をもとに音楽をつくるというコンセプトの、若者たちに圧倒的な支持を受けているユニットです。若いミュージシャンにありがちな奇抜さはなく、ごく普通の真面目な若者が、音楽と真摯に向き合っている姿がとても好感をもて、私は年甲斐もなく大ファンになりました。

この2人が、NHK18祭でやった HEART BEATという曲のパフォーマンスには、心が震えました。これは、YOASOBIの2人が、18歳世代の様々な想いを聞き、インスパイアされて制作した曲「HEART BEAT」。この曲を、1000人の18歳世代の若者たちとYOASOBIが創り出した一回限りの感動のパフォーマンスということです。とにかく、若者たちの表情を確かめながら、曲を楽しんでください。

https://www.youtube.com/watch?v=LX2nTwdOXRE

私が教えている若者たちも、この年代ですが、私は、この若者たちの心を、ここまで震わせることができただろうかと、心の底から自問しました。

できていないと思いました。今は、世界的なミュージシャンとなったYoasobiと同じことができないとは思うけれど、やはり、何か自分に欠けているものを、もう一度探そうするきっかけになりました。

ありがとう。


★1『インストラクショナル・コーチング』(ジム・ナイト著、図書文化、2024)まもなく発刊予定です。


★2  カーマイン・ガロ[井口耕二訳] (2019) 『伝え方大全』日経BP, p.63. 


★3  「YOASOBI 18祭」

アーティストと1000人の18歳世代が共演する一夜限りのステージ『NHK18祭(フェス)』。さまざまな悩みを抱えた若者が集まり、練習を重ねたパフォーマンスでひとつになる。「初めて全力で自分を表現できた」「涙が止まらなかった」「この体験は一生の宝物」。1000人の歌声とほとばしるエネルギーが心を打つ奇跡のステージの模様を届ける。

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