2024年8月18日日曜日

初任者とともに学校を変える

今年の5月。ある記事に目が留まった。それは昨年度採用された東京都新採用教教職員のうち、4.9%にあたる169名が離職したといった内容の記事であった(https://www.yomiuri.co.jp/national/20240424-OYT1T50229/)。

私は小学校教諭として自校の初任者校内指導教諭という立場にある。この立場になって今年度で3年目だ。毎年、1~3人の初任者が着任し、共に働いている。もちろん、この3年間でやめた教員はいない。しかし、周りの学校の様子を聞くと、実は多くの学校で記事にあるような状態が起きている。「5月の大型連休を迎えられなかった。」「休みがちだったが、遂に来られなくなってしまった。」そんな話を聞くたびに、私がどれだけ恵まれているかを実感する。

レベッカ・ピーターソンというある年の最優秀教師に選ばれた教師が「初任者教諭に向けてのアドバイス」として書いた記事を読んだ(https://www.edutopia.org/article/advice-new-teachers-teacher-year)。そこには以下の4点を実行することでなりたい教師を目指すことができると述べられている。

① 日々の振り返りをする。

よかったことやよりよくなるための手立てを出来る限り創り出せる手段(ブログ、メールでのやりとり、SNS等)を使って。

② 見通しをもって、積極的に手立てを打っていく。

何を学ばせたいのかを明確にした上でその過程を組み立てる。その上で、考えた手立てを積極的に実践し、①のように振り返りをする。

③ 協力し合う態度をもつ。

 自分と同じように子どもを教えたり、子どもと喜び合ったり、尊厳や思いやりをもった教師たちと協力し合うこと。一人で仕事を抱えるのではなく、仲間たちと仕事や感情的な負担を分け合うこと。これができると成長はより進む。

④ 我慢する。

 自分自身にも生徒たちにも忍耐強くいること。常に学び続ける。すぐに何か成功をおさめようとするのではなく、忍耐強く少しずつ自身の働き方をよくしていく。それが自分のスタイルを築き上げることにつながる。

どれも魅力的なアドバイス。その中で、私が特に注目しているのは③である。この記事では初任者に仲間を見つけることを提言している。だが、学校の体制として「初任者がよき仲間、先輩を見つけられる仕組み」を構築したらどうだろうか。その取り組みの一例が「メンターメンティー研修」である。初任者であるメンティーが先輩教諭であるメンターから様々な学びを見出していく仕組みである。私は大学院派遣教諭として大学院で学んでいた際、横浜市で進められていたこの研修制度に出会った。それからの4年間、自校でもメンターメンティー研修を充実させるべく、実践を続けてきた。

様々な成果と課題がある中で、一つ言えることがある。それは『初任者を育てることは学校を育てること』ということだ。この4年間メンターメンティー研修の充実を図る中で、若手教諭たちは様々な先輩から学び、自分なりに実践し、それを後輩の初任者教諭に還元するようになった。学校としてそのような風土が出来上がってくると自然と学び合う・支え合う教職員の関係が醸成される。この雰囲気は間違いなく子どもたちにも伝わり、よりよい学びや個性を輝かせる子どもたちの育成につながっていく。『「輝く職員室」が「輝く教室(子どもたち)」をつくる』。私はこの言葉を信じ、初任者と向き合いながら、学校組織がよりよいものとなるように全力を傾注していく。

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 以上は、埼玉で初任者校内指導教諭をしている田所昂先生が書いてくれました。過去4年間、メンターメンティー研修をかなり計画的に行うことで、指導役の彼がいなくてもメンティー経験者たちがメンターになって動かせるまでになっているそうです。(横浜市のこの制度はもっと長いのに、そうなっているところはほとんど聞きません!★)これから、現場での具体的な取り組みを紹介してもらいます。

★制度があるから、うまくいくのではなく、大切なのは当事者が制度を理解し、自分のものにし、それを年度を超えた視点で磨きをかけていくことです。その出発点になっているのは、『「教師力」向上の鍵 「メンターチーム」が教師を育てる、学校を変える!』横浜市教育委員会著です。「横浜市 メンター」や「横浜市 メンターチーム」で検索すると、ネットでも情報が得られます。メンターとメンティーの両者の成長が見られる事例をご存じの方は、ぜひPLC便り=pro.workshop@gmail.com宛にお知らせください。

3 件のコメント:

  1. 横浜市で教員をするものです。横浜市のメンターチーム制度は、今もなお、初任者の育成制度として市教委が特色として挙げていますが問題も見られます。その運営が休憩時間に設定されていることが多い、メンティーがメンターを選べない、初任研の指導案検討と協議に充てられることがほとんどである、などです。そもそもメンティーチームではなく、メンターチームという名前であることから誰を中心とする協同のチームなのかの視点の誤りも伺えます。わたしもこの時勢に教職を目指して入ってこられた初任者の方と学校を変えていこうとすることには賛成です。しかし、横浜市のメンターチーム制度を奨励することは内側にいるものの感覚として賛成できかねます。

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  2. unknownさん、早速のコメントをありがとうございました。
    横浜市を含めて教育行政サイドの方が、これを読んでいることを期待したいです!
    せっかく従来にはない試みをスタートさせたのですから(他でも、似たような制度は結構あります!)、メンター中心からメンティー(初任者や若手)中心のやり方に方向転換することを含めて、教育委員会はメンティー(初任者や若手)をサポートする制度を改めてほしいです。
    もちろん、サポートが必要なのは初任者や若手に限定されず、年数に関係なく、管理職になってさえ、サポートが必要な人はたくさんいるのが現状ですから、そういうニーズに応える制度も求められています。

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  3. unknownさん
    コメントありがとうございました。私も横浜市の事例に初めて触れたとき、その着眼点のすばらしさとともに、unknownさんが挙げてられている問題点も感じました。私の市でもメンターメンティー研修が昔よりも進められるようになりましたが、名前だけ形だけのことがまだまだ多いです。私は自校でそういった問題点の一つひとつを少しずつ解消しようと取り組みを続けています。この場でも少しずつその試行錯誤の様子を発信できればと考えています。またご意見いただければ幸いです。

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