以上は、ある小学校の先生とのやり取りの中で、彼が書いていたことです。
本当に「知識の積み上げが必要な教科(小学校段階では、算国理社を指しています)」はあるのか、という(とてつもなく重要な)部分については、次回以降に取っておくことにして、今回は
従来の一斉指導知識注入の授業か、それとも探究的な学習かの、二者択一ではなくて、この間に存在するより現実的な選択肢を紹介します。
それにピッタリの本があります。『教育のプロがするメル選択する学び―教師の指導も、生徒の意欲も向上!』マイク・エンダーソン著です。
その第1章「選択する学びの主要な効果」を読むと、選択肢を提供することが、生徒の学びのレベルを引き上げる最も効果的な方法の一つであることや、なぜ生徒の内発的動機づけを高め、それがどのようにして生徒の学びに好影響を与えるのか理解できます。
エンダーソン氏はまず、選択肢を提供することで、二つの大きな課題を克服できると主張しています。その二つの課題とは、①「生徒を均一化して捉えること」と②「生徒の無関心」です。
① どんなクラスやグループをつくろうが、生徒たちの知識とスキルの差は存在し続けます。そのための対処法は、生徒に「適切なチャレンジを見いだす」ことです。それは、ロシアの心理学者の、レヴ・ヴィゴツキーが「発達の最近接領域(Zone of Proximal Development=ZPD)と名づけたものです。下の表に、わかりやすく示されています。
図化すると、次のようになります。(図の出典は、http://lifenavi-coach.com/archives/72991859.html)
表でも図でも、真ん中ある時が、適切なチャレンジでよく学べ、かつ楽しいということです。(一方で、それ以外の部分は、簡単だったり、難しすぎたりして、やる気をなくし、苦痛です!★)
・生徒はより深く豊かな学びに取り組む。
・これまで以上に、課題に集中しているところを見せてくれる。
・生徒の感情と社会性(SEL)の能力が高まる。★★
・協働的な学習の雰囲気が生まれる。
・教師は教えることがより楽しくなる。
これだけの大きな効果があるのですから、「選択する学び」を使わない手はありません! 第2章以降は、それを実現するための具体的な方法が丁寧に紹介されています。生徒が選択する授業は、一つの授業の中でわずか5分間でできるものから、1学期間を使ってするものまで極めて多様です(表1を参照)。短いものから徐々に延ばしていってください。
★「一斉指導知識注入」型の授業の最大の欠陥は、「生徒を均一化して捉え」てしまうことで、どの生徒が「学ぶことが難しすぎる」状態や「学ぶことが簡単すぎる」状態にいるのかを無視してしまうことといえるかもしれません。また、「学ぶことは適度の難しさ」の状態にあったとしても、仲間や教師のサポートが得られないのでは、「一人でできる」ようにはなりにくいという問題を抱えたままになってしまいます。ZPDについては、https://wwletter.blogspot.com/search?q=ZPDをご覧ください。
また、一斉授業からの転換を後押しする(それも、生徒に選択を提供するという形で)『一斉授業をハックする―生徒の主体的な学びをもたらす学習センター(仮題)』の刊行を今年12月か、来年1月に予定しています。これは、教室内に(生徒の人数にもよりますが)最低でも4つぐらいの学習コーナーを設置して、生徒がその中から自分が学びたい場所を選んで学習するアプローチです。モンテッソーリ教育をはじめ、幼児教育では当たり前に実践されている方法を、中高でも実践できるように応用した本です。
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