あなたにとって「教育の真の目的」とは何ですか? そう問われたら、多くの人が少し構えてしまうかもしれません。真面目な先生たちは、教育基本法や学習指導要領を見直し始めてしまうかもしれません。
では、少し質問を変えて・・・あなたが目の前の生徒(あるいは親だとしたら自分の子ども)にこうなってほしいと願う姿はどんなものですか? これなら、すぐに言えるという人が多いでしょう。「学ぶ楽しさを知っている」「人の意見に耳を傾け、よく考え、自分で決めることができる」「思いやりをもっていて、他者の立場に立つことができる」など、私もさまざまな姿を思い浮かべます。
『一人ひとりを大切にする学校』の第1章は、著者のデニス・リトキーが30年以上、自分の(彼が校長を務めたのは一つではなく、三つの)学校に登校する生徒を見つめ続け、彼らにこうなってほしいと願う姿のリストアップで始まります。どれも、「その通り!」「私もこう思って学校で働いている!」と頷けるものばかりです。しかしながら、私たちの学校は一人ひとりの生徒がこういった「教育の真の目的」を達成するための場になっているでしょうか?★
衝撃的なエピソードが紹介されています。1999年、アメリカのある州の教育委員会が生徒の評価項目から「独創性」と「自発性」を取り除いてしまったというのです。これを読んで、かつて教育学の講義で、授業の目標は4Ms(Manageable「扱いやすい」、 Measurable「測ることができる」、Made First「最初に決める」、Most
Important「最も重要である」)でなければならないと教わったことを思い出しました。「教室という空間と割り当てられた時間をどんな教師でも同じように管理できなければならない。生徒を平等に評価しなければならない=全員を同じ基準で同様に測らなければならない。客観的に測れないことは、目標にできない。測れないことは、生徒に教えることも、生徒がそれを学んだかどうかを判定することもできない」。そういう理屈のもと、「教育の真の目的」が擦り変わってしまったというのです。
デニスは「教師としてするべきことは、教育の目的を理解し、学びがどのように機能するかを理解し、どのようにしてこういったことすべてを一人ひとりの生徒に応用するのかを見つけることです。一人ひとりの生徒を大切にすることです」(14ページ)と力強く述べています。私が他の誰かとまったく違う人間であるのと同じように、生徒も一人ひとり異なります。この当たり前の事実を受け入れ、一人ひとりの生徒を知り、その生徒が自分で目的を達成するのを手助けするためにできることがたくさん紹介されているのが本書です。
各章末に「学びを深めるための問い」がありますが、読み始める前に目を通して、本書を読む前の自分の考えを振り返っておくのもいいかもしれません。そうすれば、実際に本文を読みながら、問いに対する自分自身の答えをまとめていくこともできます。そして、これらの問いは一人だけで考えたり、答えたりするのではなく、同僚や仲間と自分が思ったことを共有できたら、その中身がさらに広がったり、深まったりします。(訳者と共有するという選択肢もあります! その場合は、本ブログ=pro.workshop@gmail.com宛に送ってください。) 執筆・谷田美尾
★このリストだけでも、見る価値があります。ぜひ、自分が加えたいものがあるか、という視点で見てください! なお、「目の前の生徒(親なら子ども)にこうなってほしいと願う姿」以外にも、「教育の真の目的」を明らかにできる問いはあります。たとえば、「21世紀を担う子どもたちにもってほしい知識・技能・態度」や「地球市民として子どもたちのもってほしい知識・技能・態度」などの問いが可能です。これらは、いい学校や授業のつくり方が書いてある『いい学校の選び方』(中公新書、絶版なので図書館で借りてください)の中で、現場の教師や教頭先生、保護者の回答リストが、文科省や経済界が期待していることのリストと一緒に紹介されています。
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