2022年2月6日日曜日

成長のサイクル:現状を正しく知ること

今年度も、1年間の振り返りをする時期が近づいてきた。★1


私の授業ジャーナルにも、たくさんのストーリーが貯まってきている。声を上げて、その成功を喜びたいものもある反面、とても困難で、解決策が見出せないように思えるものもある。悔しいことに、ここ数年毎年似たような課題で格闘している。進歩がない。

ただ、成果であれ、課題であれ、それらに思いを巡らすことは、心踊ることでもある。来年度の教室の様子を思い浮かべることができるからだ。より良い方法や新しいことを教室で試すことができるからだ。また、悩ましくも、ワクワクする日々が始まる。

あらゆる実践が、いわゆるPDCAのサイクルで行われることは、今や常識的なことになってきた。計画も見通しもなく、教科書の1ページ目から始めるといったことは、少なくなったし、年度末には振り返りや反省、省察の機会を設けている人も増えてきただろう。

この実践のサイクルの中で、難しいことの一つが、現状(Reality)を的確に捉えることである。教育コーチングの普及や研究に携わってきたジム・ナイトによれば、実践の現状分析を誤らせる要因として、「認識の誤り(perceptual errors)」と「防御機制(defense mechanism)」があるとしている。★2

認識の誤りには、次のようなものがある:

 ・確証バイアス(自分の信念や仮説を支持する情報のみを集めようとする傾向)
 ・帰属の誤り(うまくいかない原因を他者に求める傾向)
 ・ステレオタイプ(先入観、思い込みなど)
 ・初頭効果(初対面の印象が固定化されること)
 ・ハロー効果(目立ちやすい特徴に引きづられてしまうこと)
 ・馴化[じゅんか](刺激が繰り返されることで、それに対する反応が弱くなること)

防御機制とは、自分自身にとって不快な現実から、自己を守ろうとする機能のことである。次のようなものがある:

 ・否定と最小化(不都合なデータを見ようとしない傾向)
 ・合理化(正しくないとわかっていても正当化しようする傾向)
 ・他者のせいにする
 ・自分自身のせいにする

ただし、防御機制は、ストレスフルな社会から自分自身を守る役割も果たしており、人間の生存にとって、不可欠なものだえると言える。重要なことは、このようなメカニズムが備わっていることを認識できているかどうかであろう。

どれも思い当たるものばかりではないだろうか。自分自身が、確信をもって実践したことを、否定したり、客観的に、かつ、冷静に分析するのは、思いの外難しいことだ。これは、専門職であっても、容易なことではないとする調査もある。

このような認識の弱点を克服する方法として、次のようなものが紹介されている。

(1)ビデオで授業を録画してみる
(2)生徒の声を聴く(インタビューなど)
(3)生徒の学習成果をみる(テスト結果や書いたもの記述など)
(4)第3者による観察(指導主事やメンター、同僚など)
(5)いくつかの方法の組み合わせ

現状を的確に分析できる力を磨くことは、教職という専門職としての成長の重要な柱であろうと思う。

一歩づつ成長していきたいものだ。

★1 私がジャーナルの振り返りに使っている問いかけは、次の3つだ。もともとはもっと多くの問いがあったのだが、何年か使い続けるうちに、この3つに絞られてきた。
<毎月の振り返り質問>
1.この間、心が動いたことは? 嬉しかったこと、悲しかったことは? 人に伝えたいことは? 
2. 実践のハイライトは何でしたか? 特に、よかったことや成功したことです。  うまくいった要因は何だと思いますか? 
3. うまくいかなったことはどのようなことでしたか。児童・生徒が動かなかった時や自分らしさを発揮できなかった時です。  それらに共通することは考えられますか? パターン/傾向のようなものです。 
「1年間の振り返りに役立つ10の質問(Ten Questions To Help You Reflect On Your Practice This Year)」を参考にしている。
 https://mindstepsinc.com/2017/05/ten-questions-help-reflect-practice-year/

★2 出典をお知りになりたい方は、pro.workshop@gmail.comに連絡ください。

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