2022年1月23日日曜日

授業では日々、「先延ばし、注意散漫、逃避」という子どもたちの挫折形態が見られている!

埼玉の小学校で教えている久保田先生(仮名)が紹介文を書いてくれたのは、それへの対処法が書かれている『挫折ポイント』(アダム・チェインバーリンほか著、吉田新一郎ほか訳、新評論、2021年)という本です。子どものやる気(モチベーション)と、その逆のやる気のなさに興味をもっている(課題を感じている?)方におすすめの一冊です。

「モチベーションや努力というのは蛇口を捻ったからといって出てくるものではない。やる気をだし、ベストをつくすためには、様々な要因がかかわってくる。」

何かを情熱を持って取り組み続けるのは難しいと一番分かっているのは自分自身であるにも関わらず、さらりと子どもに強いていたなと気づかされた一冊でした。そもそも「挫折」というと、もっと人生の節目やターニングポイントにあるようなイメージでしたが、日常に、しかも毎日の「ちょっとした」行動の背景にあるものだという見方は私にとって大きな発見でもありました。

例えば「先延ばし、注意散漫、逃避といった形で人は挫折を表すことになる」という言葉。子どもうんぬんというよりも、真っ先に「ああ!私のことだ!」と思ったのと、「なるほど。これも挫折した結果だったのか」ということに気づかされました。

教室で教える自分自身を思い出してみても、再三声をかけても改善が見られない場合、やはり本人の「気質」や「やる気」、「〇〇なタイプだものな」という解釈をしていることが多く、挫折の兆候というとらえ方はしていませんでした。これらを挫折の兆候という見方ができれば、原因(つまりそこが挫折ポイント)解明の方に力を注ぐようになり、当然声のかけ方も変わってくることになります。

一番考えさせられたのは第4章の「一人ひとりをいかす教え方による挫折の抑制」です。そこで紹介されていたのが「三つの段階のモデル」です。子どもたちを様々な角度から見て、大きく以下の三つの段階に分けています。

第一段階は、どの学びに対してもモチベーションが低く、努力レベルも常に低い子。

第二段階は、学級の中で中間にいる子。基本的には特別なサポートはあまり必要としない子。

第三段階は、教師の期待を上回る学びをしている子。

どの段階にいるかで、ニーズは違います。今振り返ってみると、私の場合はつい下を引き上げたいという思いと、上の子はなんとかやるだろうという勝手な思い込みから1時間のカンファランスの量がかなり偏っていました。

第4章の中でも一番はっとした言葉は、「第一段階にいる生徒が目立ちすぎるため、第二段階にいる生徒が挫折しかけていることに気づかないことがよくある」という部分。

私が第一段階の子どもたちにせっせと関わっている最中に、第二段階にいる子どもたちの挫折を見抜けないと、表面上は課題を終わらせている「だけ」の状態になってしまう「みせかけの努力」に陥っているのだそう。なんと怖い言葉。でも思い当たることはたくさんあって、「あーせっかくここまでやったのに、集中力が続かないなあ」とか「提出はしたけど、ものすごく雑」とか。改めて一人ひとりの子どもを理解することと、どの段階の子どもも挫折の可能性があり、適切なフィードバックと学習の中のサポートを必要としているのだと痛感しました。最近個別最適化という言葉をよく耳にしますが、丁寧に子どもを理解(強みや長所、特徴)しそれを活かすことが、一人ひとりをいかす授業となっていくのだと、とても納得することができました。

ちなみに、忘れてはいけないのは「見せかけの努力=悪」というわけではないということです。見せかけの努力をしている状況いうのは、完全にあきらめているわけではないので、そこから積極的な取り組みに移行していくこともできるし、逆に更に転落していく可能性もあるわけです。クラスの子どもたちの顔が浮かんでは消え、まだまだやれることがありそう!と元気がでた一冊でした。

さて、この仕事について10年が過ぎようとしていますが、なかなかうまくいかないことが多かった2021年。3学期は第二、第三段階にいるであろう子どもたちへの学習のサポートも積極的に行うように意識してスタートしました。なるほど、私が思っていたよりも第三段階にいても、サポートを必要としている状況がつかめてきました。まだまだ始まったばかりですが、自分の教室での在り方を今一度見直すことができました。

*****

上の原稿を送ってくれた後に、久保田先生のおすすめの本を尋ねました。「教えること、学ぶこと、学校という場所のことを考えるためのおすすめの本のリストを3~5冊ぐらい教えてください」と。5日後に以下のリストを送ってくれました。絞るのに、とても苦労したそうです。(結果的に、8冊です!)

家庭で育むしなやかマインドセット

深い学びをつくる

理解するってどういうこと

言葉を選ぶ授業が変わる

遊びが学びに欠かせないわけ

ちなみに、『読み聞かせは魔法』、『スタンフォードの自分を変える教室』、『マインドセット「やればできる! 」の研究』もめちゃ好きです。

 

以上です。『家庭で育むしなやかマインドセット』を読まれた方には、無料で別訳をプレゼントしますので、pro.workshop@gmail.com宛にメールください。久保田先生も、両方を読んでいます。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿