2022年1月9日日曜日

ICT機器を使って「静かな子どもも大切にする」

 年の初め、子どもたちから年賀状が届きました。その中の一枚に、やや大人びた容姿をした子のプリクラが貼ってありました。「はて、誰だろう?」と、住所と文面を読み返してみると、もう何年も前に担任した子からの年賀状。その面影からは当時の様子を思い返してみると、その子はクラスの中でも人一倍静かで、めったに言葉を口にすることのない、とても大人しい子でした。そして、算数の授業では、つい学級全体にその子のノートを取り上げて紹介してしまうほど、豊かな考えを持っていた子でした。

 

新学期が始まります。子どもたちは大好きな友だちや先生と久しぶりの再開で、きっと教室は賑わうことでしょう。冬休みの出来事を紹介しあったりするかもしれませんね。そんなとき、つい活発で愉快なクラスの子たちが活躍しがちになりますが、ふと、教室で一番大人しく、静かにしている子どもに目を向けてみてください。言葉や表情にはなかなか表さないかもしれませんが、久しぶりの再開をきっと楽しみにしている子です。そして、そういった内向的な子は、実はよく考え、豊かな内面をもっています。

 

最近、読んだ本の中に「なるほど!」と腹落ちするグラフを見つけました。

 


内向的な人が会話の中で行っている様子です。大人しくしているのは、ただ聞こえているだけではなく、熟考しながら聴いている。よく聴いているからこそ、自分なりのするどい視点を持っている。そして、グラフが示すような10%さえも、話をしない時だってあります。こういった子の声をどうやって拾っていったらいいのでしょうか。

 


 



クリスィー・ロマノ・アラビト著/古賀洋一・山﨑めぐみ・吉田新一郎訳『静かな子どもも大切にする 内向的な人の最高の力を引き出す』新評論


全ての子どもの声に耳を傾けるだけの価値はあります。でも、教室では数人の活発な子どもの声によって、全ての生徒の声を聴くということはなかなか大変なことです。静かな子どもの声を教室に響かせ、学びに夢中になることを促す方法についてこの本では紹介されています。

 

コロナ禍以前の2019年に洋書として出版された本ですが(日本では2021年に出版)、GIGAスクール構想やオンライン授業で右往左往している日本には、ICT機器を活用した静かな子どもの声を大切にしようとする具体的な海外実践は大変参考になるはずです。

 

4章 学校は静かな生徒を過小評価しているー「授業への参加」を最高するーから、3学期からさっそく実践できそうなものをいくつか紹介します。

 

 

教室における秘密のコミュニケーション(P.113

 

内向的な子たちが安心して自分の考えを周囲と共有するためには「秘密」が有効です。常に学級全体で発表するだけではなく、パドレット(https://ja.padlet.com/日本語対応あり)やフリップグリッド(https://info.flipgrid.com/日本語対応なし)などのデジタル情報共有サービスを活用して、同時進行の話し合いを促進してみましょう。映像資料や動画を観たり、クラスで発表をきいたり、実験をしている最中に、子どもたちが自由にできる意見交換の場を使うのです。伝えたいと思ったときに自分の考えを共有することができ、自分の学びを中断せずにその場で質問をすることもできます。特に対面で話し合うことに不安のある子にとっては非常に有効になります。

 

子どもたちへ自由にICTデバイスを使わせる不安もあるかと思います。日常から大切にしているあたりまえのこと、例えば自分がやられて嫌なことをしない、言わないなどの最低限の生活のマナーはデジタル空間においても同じであることを確認し、最低限のグランドルールをつくって子どもたちと使いながら、問題が起これば話し合って共通の規範づくりをしていくこともまた大切な学びの一つです。

 

 

授業前や授業の最後に振り返り活動を行う。(P.116

 

授業の初めに、その日学習する内容について既に知っていることを書き出したり、授業終わりに、その時間で分かったことやさらに考えてみたいことなどを、子どもから回収します。これまでフセンやノートなどが活用されていましたが、一人一台のデバイスがあるならばGoogleクラスルームの質問機能、Googleフォームなどを駆使すれば、特に静かな子どもを授業の理解状況や理解できていない疑問、言い残した意見を表明できる機会となります。

 

 

「今週の生徒」を特集しよう(P.124

 

クラスの一人に焦点を当てて特集を組むおもしろい取り組みです。一人子どもを選んだ後、1週間にわたる生活を係の子が写真を撮りながら記録して、デジタル共有スペースへ投稿します。その週の終わりには特集を組ませてもらった子や係の子たちへと感謝を伝えます。また、感想を伝えるためにも、5分間だけ時間をとってあげます。もちろん投稿される内容の適切さに不安があるときや、子どもは学級アカウントから直接投稿できないと取り決めがある場合は教師が変わってやってあげるか、専用の投稿機器を用意します。実際に印刷して新聞として配り、フセンにフィードバックをもらうのもいいかもしれません。

 

 

 

いよいよ迎える三学期。学習のまとめの時期です。コロナに翻弄されて思うように進まない時期もあったかと思います。1学期からの学級づくりも落ち着きを見せ始め(もちろん課題はあるものの)、子どもたち一人ひとりと関わることができる時期でもあります。静かな子どもには、豊かな世界が広がっています。ぜひ、声をかけてスタートしてみませんか。その子の声を聴き取る工夫をしてみませんか。関心をもつこと。分かろうとすること。そこが出発点です。

 

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