それは、誰にとっても学びが最大化することではないでしょうか? もちろん、おとなしく聞いていても、考えている人はいます。が、話している人ほどではない可能性は高いです。話すことは確実に考えた結果ですから。
それでは、生徒(それも、できるだけ多くの生徒)が考えて話す授業はどうつくり出せるのでしょうか?
一つ確実にいえることは、教師が口を閉じることです!
この本の、50ページには、それがコラムの形でまとめられています。
■生徒の声に耳を傾ける=教師が口を閉じる(ジェフ・ウィルヘルム)■
教師の力量というものは、話すこと、目的を示すこと、コントロールすることを通して生徒に働きかける技量を示すものではありません。むしろ、聴くこと、配慮すること、協働することといったように、生徒と一緒になって活動する姿勢にこそその真骨頂があります。そうするからこそ、生徒たちは自ら活動するようになるのです。
「口をふさいで教える」には、新しい考え方やこれまでとは違う学習の進め方、そして目的が明確となっている活動が必要です。
「身につけること」には、思考、会話、記述、構成、演出、そして考えること、話すこと、書くこと、構成すること、演じること、応用することなどが含まれます。
「チームで取り組むこと」には、傾聴、観察、反応、見ること、反応すること、そして生徒に継続的な刺激をもたらし、学ぶ技量を育てるといったさまざまなやり方で協働することが含まれます。
「教えること」には、時に知識だけでなく、知りたいという意欲やそれを知るためにはどうしたらいいのかということにまで及びます。
「学びそのもの」には、なぜ学ぶのか、どのようにして学べばよいのかも含まれます。恐らく、生涯にわたる継続的な自己探究の姿勢とスキルにもかかわってくるでしょう。
こうしたことのすべてが、「口をふさいで教える」ことの意義であり、ドナルド・フィンケルが『Teaching
with Your Mouth Shut.(教師が自分の口を閉じて教えること)未邦訳』という本のなかで書いていたことと同じです。フィンケルは、教師が口を閉じて教えるときにはやるべきことがたくさんあることを示し、それは、生徒が活動に主体的に取り組み、理解を構築する際に貢献するものだと指摘しています。
活動のすべては、生徒に自分の声とお互いの声に耳を傾けさせるものです。そして、教師に対しては、生徒の声に耳を傾けさせるものともなります。
『私にも言いたいことがあります!』の著者は、同じ第2章の別なところで、次のようにも書いています。
生徒たちが自らの力への自信を高め、自分たちの可能性に気づき、能力を最大限に引き出し、個人の成長につながる自己決定ができるようになれば主張(=自分の声)はより明確なものになり、それを外に向かって表現できるようにもなるのです。生徒の声が熱を帯び、教室や学校の活動に参加する意欲が高まるのですから、私たち教師はそれを促進し、価値づけるようなやり方を生みださなくてはなりません。
生徒は、教室で起こることについて決定したり、企画したり、組み立てたり、反応したりするための「声(意思・主張)」があるとき、初めて学習内容を身につけるより良いチャンスを手に入れることになります。これらの機会は、生徒たちの思考に対する有意義な挑戦となるでしょう。またそれは、生徒が協働的・協力的な授業を通して、学習、成長、変更、修正、そして理解の深化を振り返ることにも直結しています。
これは、このブログで繰り返し紹介してきた「エイジェンシー(主体者意識)」https://projectbetterschool.blogspot.com/search?q=agencyや、文科省が5年ぐらい前から言い出しているアクティブ・ラーニングそのものと言えないでしょうか? この本には、それらを実現するための具体的な方法と事例が満載です。
ちなみに、この最後の引用に対する翻訳協力者のコメントを紹介します。「賛成です。黙ってノートを取ることを求められてきた生徒たちに、自分の思うことを書いてよい、話してもよい、助けてもらってもよいという場を提供しただけで、生徒の顔つきが変わりました。今年度はまだ対話のドリル的なものしか提供できていませんが、これからどんどん解放していこうという気持ちになりました!」
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