まもなく、邦訳『教科書をハックする』(新評論)が発売されます。
この本は、リリア・コセット・レント(ReLeah Cossett Lent)さんによって書かれたものです。彼女は中学・高校での教職経験後、セントラルフロリダ大学のリテラシー・プロジェクト創設メンバーとなり、現在は教育コンサルタントとして、リテラシーから学校や教育委員会の(授業を本質的に変える)実践コミュニティーまでをテーマにワークショップを行っています。彼女は本書のなかで次のように書いています。
実際のところ、教科書疲労には「もう教科書にはうんざり」という倦怠感以上のものがあります。それは、教科書や指導案をカリキュラムの手引きとして使うこと、すなわち教科書会社が概要を示した順序と、その提供する活動の両方をロボットのようにただこなすだけというもどかしさです
この「教科書疲労」という言葉は、金属疲労にたとえて彼女が使った造語です。固い金属は壊れるとは思われていませんが、長年使われることで破損する場合があるのと同じく、国が関与して厳重につくられている教科書も「ほころびる」ということを意味しています。この本では、どのようにすれば教科書疲労に対する解毒剤となるように、さまざまな資源とツールを教師と生徒が使いこなして、生徒が積極的に学ぶ意味を感じられるような授業をつくり出せるかを私たちに解き明かしてくれます。
たとえば、第2章の「予備知識」では、予備知識が「すべての学びは、それまでの経験からもたらされる。初めて学ぶことでさえ、これまでの経験と予備知識をもとに行われる」という識者の言葉を引用してその重要性を教えてくれます。そして、どのようにすれば、生徒たちの予備知識を教師が授業前に把握することができるのか、その具体的な方法についても言及しています。「予想の手引き」を作成して、これから学ぶ単元に登場する重要な概念について生徒たちに予想をさせます。この活動によって、生徒たちは興味・関心をもって授業に臨むことができるわけです。
また、生徒たちの予備知識を培う方法として「絵本を利用する」ことを著者は薦めています。なぜ絵本を利用するかという点に関して、著者はある研究者の次のような言葉を引用しています。
子どもの本として知られる絵本は、小さな子どもたちのためだけにつくられたものではありません。驚くべきことに、1000文字ごとに含まれている難しい言葉の数は、ゴールデンタイムのテレビ番組や大学生の会話以上なのです。
また、日々の授業のなかで、教科書に登場した語彙を効果的に学ぶためにはどうすればよいか悩んでおられる先生方も多いと思います。そのような問題を解決するために、著者はいくつもの方法を具体例も交えて紹介しています。たとえば、「見える化用紙」(考えることを促進するツールで、図式による表現方法が用いられています)を利用して、視覚的にわかりやすく整理するやり方や、「読み聞かせ」を積極的に利用する方法などを説明してくれています。
まだまだ紹介しきれないほどの宝の山がこの本のなかにありますので、ぜひ手に取っていただいて、お読みいただくことをお薦めします。
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