2020年2月2日日曜日

あれもこれもではなく、取り組むことを減らす!


 学校や授業をよくするために、一番大切なことは何でしょうか?

 Leading with Focusという本は、やることを増やすのではなく、減らすこと。焦点を絞ることだと主張しています。
 しかし、文科省のアプローチは「あれもこれも」の増やすアプローチを長年とり続けています。(それを揶揄して、現場の先生方は「不変と流行」という言葉で、「どうせ流行はすぐにウヤムヤになるので、しばらくおとなしくしていればいい」と腹をくくっています。)どれだけの流行が過去20年ぐらいでもあったでしょうか? 「生きる力」「新しい学力観」「指導と評価の一体化」「総合的な学習の時間」・・・そして最近では、「アクティブ・ラーニング(主体的かつ対話的で、深い学び)」「英語教育」「プログラミング教育」「道徳教育」「探究学習」・・・これらのどれだけが果たしてすでに「死語」になっているでしょうか?

 あなたは、『7つの習慣』という本をご存知ですか? 90年代の半ばにベストセラーになった本です。★ 「成功する人たちがもっている7つの習慣を明らかにした」というようなサブタイトルがついた本です。最初の3つは、個人レベルに関して、です。

第一の習慣・主体的である
第二の習慣・終わりを思い描くことから始める(Begin with the End in Mind)★★
第三の習慣・最優先事項を優先する

 あなたは、これら3つを日々学校で実践できていますか?
 今回のテーマは、第3の習慣です。
 「最優先事項を優先する」 ~ 言葉でいうのは容易ですが、これを実行することは(特に、学校では?)かなり難しいかもしれません。しかし、2つ以上の最優先事項があると、失敗を約束することになります。しかも、それらの最優先事項の失敗だけでなく、他にたくさんやらなければならないことも、です。(このことが、学校および授業をなかなかよくできない最大の要因といえるかもしれないのに、文科省(や教育委員会や管理職)は何年経ってもこのことに気づけません!)
 「最優先事項を優先する」を実現するための方法として『7つの習慣』は、次のようなことを提案してくれていますが、あなたは実行できていますか?(~以降青字は、筆者のコメント。)
① 第2の習慣を身に付けたなら、それを具現化し、自由意志を発揮し、毎日の瞬間瞬間において実行する。 ~ どれだけ「自由意志」を発揮できていますか?
② 価値観に調和した生活を送るために、効果的な自己管理を行う。 ~ そのほとんどは、タイム・マネジメントということになります。
③ 重要だが緊急でない活動を行う。~ 何が重要で、何が重要でないかを見極められる? ウ~ン、これは容易ではありません! まさに、クリティカル・シンキングです。下も!
④ 重要でない活動に対してノーと言う。
⑤ デレゲーション。人に仕事を委任する。 ~ あなたは授業のどれくらいを生徒に任せていますか? 任せられると思いますか?

 個人レベルでこれらを実践することは、とても大切ですが、学校の場合は、それをいかにして組織レベルでやるかという一層ハードルの高いことに挑戦することになります。この点については、『7つの習慣』の残りの4つの習慣よりも、Leading with Focusの方がはるかに参考になります。
 効果的なリーダーシップを5つの段階で紹介してくれています。

1. しっかりリサーチする ~ 情報を集めて、何が大切なのかを見極める。これがいい加減だと、この後すべてのステップが徒労に終わることになります。個人レベルでも、組織/学校レベルでも、これがちゃんとやれているところはとても少ないです。
2. 減らす ~ たくさんの可能性の中から、最も重要なものを選び取る。リーダーはもちろん、スタッフも最重要なことに絞る必要があります。それは、二番目、三番目(あるいは、それ以下)のものに時間を費やすことは、一番目の優先事項に費やす時間を奪い取るからです。(文科省は、一度に「アクティブ・ラーニング(主体的かつ対話的で、深い学び)」「英語教育」「プログラミング教育」「道徳教育」をと言っているわけですから、「何もしなくていい」と暗にメッセージを発信していることになります!!)一つだけでも、しっかり身につけてやれるようになるには、相当の時間がかかります。まず、それをしないし、しかたもわかっていません。結果的に、「総合的な学習の時間」は20年以上経っても、当初の思惑とは程遠い実践しかできていません(そして、いまとなっては消えゆくだけ?)。
3. 明確にする ~ 優れたリーダーは、このような文科省や教育委員会の打ち上げ花火を見通して、一つないし多くても二つのことに焦点を絞ります。焦点を絞ることが、練習を通して身につけることにつながります。しかし、それは残念ながら既存の校内・校外研修には存在していません。行われている教員研修は、大雑把で、表面的で、曖昧です! 要するに、フォーカスされていない!!
4. 繰り返し練習する ~ 日本の教員研修を「繰り返しの練習」と捉えて実践されている例はどれほどあるでしょうか? 「一度の話を聞けば、わかる/できる」という錯覚(というか幻想)の下に行われているものがほとんどです。それでは、授業の悪いモデルとして行われているだけです。https://projectbetterschool.blogspot.com/search?q=%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88の表を思い出してください。ここでは、スポーツや趣味の世界では当たり前のことを、教え方に応用するイメージが一番わかりやすいと思います。スポーツや趣味の世界では、繰り返しの練習とコーチングがすんなり受け入れられていますから。教育も同じです! (モニタリングとフィードバックは、ステップ5のテーマです。)
5. 継続的にモニタリングとフィードバックをする ~ 「一度の話を聞けば、わかる/できる」の幻想で教員研修も授業も行われていますから、これが存在しないのが日本の教育界です。また、研究授業を中心にした研修や人事考課の体験が悪いことも要因です。モニタリングとフィードバックが役立つ/楽しい体験として捉えられていませんから。おすすめは、「大切な友だち」です。https://projectbetterschool.blogspot.com/2012/08/blog-post_19.htmlこれなら、両者に受けること請け合いですから。

 以上は、学校/組織レベルを中心に説明しましたが、これの個人レベルは、
https://wwletter.blogspot.com/2018/01/blog-post_26.html の図を参照してください。
 今回紹介した「焦点を絞ること」はとても重要なのに、日本の教育界は軽視どころか無視し続けています。その方が、仕事をしているように装えるから(忙しい方がいいこととされているから)? それとも、単に皆が思考停止に陥っているからでしょうか?

★ 私は同時期に知った『エンパワーメントの鍵』の方を、はるかにおもしろいと思ったので、そちらを訳しました。
★★ この「終わりから逆算して行動する」を実践したら、「教科書をカバーする」アプローチは取れないです。終わった段階で、カバーした内容を身につけている生徒は極めて少ないですから。そうではなくて、https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/teachers/osusumeで紹介しているライティングとリーディング・ワークショップ関連の本や、『だれもが科学者に慣れる!』のアプローチだと、年度末に自立した学び手(書き手、読み手、探究者、思考者)になることを目標に設定して、教科書も活用しながら取り組みますから、結果的に子どもたちは教科書の内容の何倍も学ぶし、身につけることになります。まさに、生徒たちが主体性やオウナーシップをもって学び、エンパワーされるので深い学びが実現されるからです。http://projectbetterschool.blogspot.com/2020/01/blog-post.html

参考: 『Leading with FocusMike Schmoker
    『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー

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