今回は学校組織の形成に校長がどうかかわるかということを考えてみたいと思います。
以下は2006年にジョージア州を訪問したときにお会いしたジョージア大学のゼペーダさ
んの著書「Ref lective Supervisor」の一部をヒントに作成したものです。
組織づくりをしていく上で、校長がどうあればよいかを考えたものです。
そこで、具体例を通して、大きく分けて次の5つの視点から考えることにします。
1 校長は学校の状況(実態)をどう把握すればよいのでしょうか
昇任又は異動によって新しい学校の校長になった者が自分の担う役割をどう現実的に考えるかを例に取り上げます。
情報源
まず行動を起こす前に、校長としてどのような役割を期待されているのかという情報を
集める必要があります。第一段階は、多くの情報源から公平な立場で情報を集めること
です。
★情報収集の重要性
公立学校では転任者が毎年何名かいます。
校長は次年度の職員構成を考えるにあたり、転任者の情報を必要とします。
そのようなとき、電話で前任校の校長から情報を仕入れるわけですが、
手が正直に答えてくれる場合ばかりとは限らない。したがって、時にはその
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誤った情報で学級担任などを決めてしまうこともあります。
年度始めの数日でその人となりを見極めることはなかなか難しいのが現実で
す。
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校長にとって最初の情報源は教頭(副校長)です。教頭が新しい校長に何を期待しているのかを理解する必要があります
第2の情報源は前任者です。また、教頭(副校長)と教務主任、学年主任たちとの関係を 理解しておくことが必要です。前任者が主任層との関係に問題があった場合は、主任層との信頼関係を築くことが学校経営上不可欠でしょう。
また、これまでずっと続いてきた仕事、問題解決のパターン、重要なデータファイルのある場所について、前任者から個人的に引き継ぐ必要があります。
第3の情報源は主任層です。
主任たちと学校に関すること、学校に今必要なこと、その方向性について話し合うことが求められます。このことは、リーダーシップとして大切な傾聴と問題解決という技能を発揮するよい機会を与えてくれることになります。異なる意見に対して寛容であることが求められます。
批評的な情報を集めるには他にも方法があります。他の職員とも話したらよいでしょう。尋ねるべき質問はたくさんあるでしょう。「彼らがその役割についてどう感じているのか」「管理職とはどのようにつきあってきたのか」「校長のリーダーシップについてどう考えているのか」など。
また、過去のメンバーの評価、予算や連絡、管理に関する覚書や会議の議事録などが重要なデータとなります。
振り返り
あなたは校長として新しい学校に赴任して、その学校の職員の雰囲気、人間
関係を知るためにどのような方法を取りましたか?
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2 校長はビジョンをどのように作ればよいのでしょうか
校長に求められていることは自分の役割を理解することです。校長として求められているものは何でしょうか?
だれもがその役割について違った意見を述べるでしょう。この質問にうまく答えるためには、進むべき進路を定めることです。一方で、どのメンバーも喜ぶようなことをしようとすれば結果的にはだれも喜ばすことはできないでしょう。また一方でだれの言うことにも耳を貸さないとすれば、すべてのメンバーとの関係が壊れてしまうでしょう。
いずれにしても、仕事をうまく進めることもできないし、組織への貢献もできないと思われます。
力のある校長になるためには、教頭や職員と一緒にうまく仕事を進めていくべきです。校長がその組織の目標を達成するためには、共にやることが大切なのです。協働者なしには、どんな組織も、そのミッションを達成することはできません。
学校の実態を把握した後は、学校として目指す目標・ビジョンを明らかにする必要があります。結果としてできあがったものよりも、作成する過程の方がはるかに重要です。
学校の実態を明らかにする作業と同時に、ビジョンづくりの参考となる様々な事例・情報を収集することです。
その結果、集められた情報を関係者と共有します。この関係者の中には、保護者・地域住民の代表が参加している地域協議会のような組織が含まれます。そして、ビジョン作りの会議を持つのです。(中学校であれば、生徒代表が入ることも考えられます。)
3 部下職員の所属意識を高めるにはどうすればどうすればよいのでしょうか
心理学者は人間にとって所属意識が重要であると言います。それは人間にとって大切な動機です。われわれは所属意識が感じられないときは、他のメンバーや組織に対して疎外感をふくらませてしまうでしょう。所属感を感じられる職員は、学校のためによく働くし、忠実に仕事を進めることができます。
◆振り返り
あなたは部下の所属感を高めるためにどんな工夫をしています
か?
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4 生き生きと部下が働けるようにするためにはどうしたらよいでしょうか
校長の中には、校内に競争原理を持ち込むタイプがいます。
しかし、これは結局、職員たちにとって利益になりません。
競争原理を持ち込めば、絶えず自分たちの利益を守ることが目標になってしまいます。
したがって、校長が学年間の連携・協力関係を作ることが重要となります。校長が職員に対して、同僚との良好な関係を築くよう配慮すれば、協働的な雰囲気が醸成されます。
もうひとつの失敗例は、タテとヨコの組織の分裂です。校長があるグループと他のグループを競わせるようなことをすると、内戦状態になります。
例として予算要求の例が考えられます。
もし、ある教科が昨年削減された予算の回復に成功したとしても、それは近視眼的な勝利です。なぜなら、その教科が予算の回復に成功したとしても、それは他の教科を削って得たものにすぎないからです。その小さな勝利はまた新たな敵を生み出してしまうことになるのです。
★これは給与・待遇に連動した教員評価において同様の例が見られます。
ある自治体の公立学校では、教員に対して4段階の評価がなされ、下のランクに評価された教員は昇給が延伸されたり、賞与の額が減額されたりしています。その減額分は成績優秀者に対して与えられるというシステムです。これなども互いに競わせて勤労意欲を高めようという競争原理に基づいた組織活性化法と言えるでしょう。
しかし、上記の話からも、これは両刃の剣であることがよく理解できます。
たしかに、一生懸命働いても、そうでなくても給料に差がつかないのはお
かしいという考えも成り立ちます。しかし、時代の変化と共に、「協働
性」が重視されている学校において、チームプレイや連携プレーが要求さ
れているにもかかわらず、その協働性を分断するような成果主義であれば
それは学校にとってマイナスです。
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5 組織づくり成功のために校長に求められるものは何でしょうか
① 力のある校長は部下の話をよく聞く
リーダーシップというと、常に部下に対して指示を与えることと思いがちですが、決してそうではなく、部下職員の話に耳を傾けることが大切なのです。
このコミュニケーションの基本が守られていて、初めて部下職員は校長の言うことをきくのです。
② 力のある校長は正直である
正直さは校長の行動やことばに滲み出ています。
これらの行動やことばはどのような与えられた状況のなかでも、常に正しいことをやろうとする意欲と関連しているものです。正直さをもって校長が行動しているときは、すべての部下がその校長を言行一致の人とみなすでしょう。陰での取引や依怙贔屓などがないことです。そのときは校長の行動が、組織に対して正直さ、公平さ、統一性として反映されるのです。正直に行動することにより、校長は信頼と高い倫理的な原則に基づいた校内文化を作り始めることができます。
★部下職員が意欲をもって仕事を進めることができるためには、やはり
校長が自らそのモデルとなる必要があります。
「正直さ」という範を示すことで部下は安心して職務にあたることができます。
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「モデル」となって示すことは「言うのは簡単だが、実行は難しい」のです。自分のことは棚に上げて、言行不 一致の上司にはだれもついていきません。生徒が担任教師のことをよく見ているように、部下職員も校長のことをよく見ているものです。
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◆振り返り
校長として部下の信頼を失わないためには、どのように行動すればよいの
でしょうか?
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