この時期、高校3年生にとっては推薦入試が決まり、中学3年生は受験校をしぼるにあたっての成績を振り返っている頃でしょう。
その際の規準には通知票といった成績が使われることが多いのですが、こういった成績を進学するための「パスポート」扱いにしてしまっていいのでしょうか。
成績は、そもそも自分自身が成長するためのものです。自分をよりよく知り、自分を伸ばしていくためにあります。もちろん定期的に評価することは必要ですが、進学に使われる材料として、数字で切り取られた成績はそれにふさわしいのでしょうか。
学期末ごとに配布される(一方的に渡される?)終末評価の通知票をもらっても、学習者はもうやり直すことはできませんし、数字や文字だけの評価では学習者の学びの全体像をつかめません。このような成績では成長のためのツールとはなっていません。
そこで、それにかわる評価としてポートフォリオを導入してみませんか。
「成績をハックする: 評価を学びにいかす10の方法」
スター・サックシュタイン著 高瀬裕人、吉田新一郎(翻訳)
この本の10章に「ハック10 クラウドベースのデータを保存するポートフォリオ評価へ移行する」とあります。テストや数字だけで学習者を評価するのではなく、自分がつくった作品やふりかえりシート、授業のノートだったりと、その学習のプロセス★をためたものを記録していきます。このような日々の学習を継続的にファイルしていくものは「ワーキングポートフォリオ(元ポートフォリオ)」と呼ばれます。
ワーキングポートフォリオから、学習者が自分自身の努力に納得し、いくつかのハイライトを選びだしたものが「パーマネントポートフォリオ(凝集ポートフォリオ)」と呼ばれるものです。学習者が何を学んだり、失敗や困難をどう乗り越えたししたのかがわかるものです。このような方法に取り組むと、確実にメタ認知が高まると思いませんか。
ポートフォリオを海外では、卒業時に「グラディエイションバイポートフォリオ(卒業ポートフォリオ)」として、学習の軌跡を携えて卒業していくようです。このような取り組みがデジタルで★★行われ、しかも、すでに採用面接にも使われているように聞きました。このポートフォリオを元にして、自分の学びのよい例をどうやって選び、なぜそれを選んだのかについて説明していくことで、少なくとも、学びの結果に一喜一憂せず、学びのプロセスにこだわれるようにはなれます。
今後、ポートフォリオをもとに、日々の授業の視点をプロセス評価★★★へと変革していくことは可能です。ゆくゆくは、高校進学や大学受験、採用面接(デザイン系ではすでに活用されています)のパスポートとして活用されていくことになるでしょう。数字や文字の成績よりも、はるかに説得力のあるものです。
ポートフォリオ評価では、今、その地点の力のみだけではなく、プロセスを含めて、学習者をもっと全人的にみとることできます。「あなたは、なぜその点を取ったのか?」そう問われたとき、テストだけでは説明できませんが(説明できたとしても学習内容はすぐに忘れてしまう!?)、ポートフォリオは説明できるため、成績の正反対の効果があるのです。
★その他、写真、音声、動画、ブログ、発表の記録も含まれます。これらをデジタル情報にためていくデジタルポートフォリオの取り組みは、海外では2000年代からすでに行われています。保護者、学校間や校種を越えてもその学習者の情報を共有することが可能となっています。日本の指導要録はそのような機能を果たせるものになっているでしょうか?
★★もちろん個人データ保護のため規正の強い日本の学校現場にいきなりデジタル情報で生徒の作品や日々のノートなどをストックしていくことは難しいかもしれません。まずは紙ベースといった、できるところからの取り組みです。よいものは広がっていきます。その意味からたくさんのアイデアや実践のヒントをもらえる参考になる10章です。
★★★
プロセス評価とは、学習単元を通して、または、年間を通して学習者が今、どのような状況で、学習目標に到達するには何を支援していくのかといった、形成的評価とよばれるものです。単元の事前にすでに知っていたり、できることを評価することを診断的評価、単元末のテスト評価などは終末評価とよばれます。
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