2018年6月23日土曜日

様々な世界とつながる教室

今回の学習指導要領の改訂で「見方・考え方」が各教科共通の視点としてその中に整理されました。
その解説によると、「見方」とは、「対象を捉える視点」であり、「考え方」とは、「対象へ迫るアプローチの仕方、方法」です。また、その「見方・考え方」はそれぞれ、教科固有のものがあるという前提で考えられています。
この「見方・考え方」を強調することは、私なりに考えてみると、その教科の本質的な面白さ、楽しさを追究するというねらいが指導のポイントとして強調されているものと思います。

そこで、具体的に小学校理科で考えてみます。
単元「振り子の運動」について取り上げることにします。
「振り子の運動」については、小学校学習指導要領・理科解説では次のように記載されています。

第5学年の目標 (1) 物質・エネルギー
物の溶け方,振り子の運動,電流がつくる磁力についての理解を図り,観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
物の溶け方,振り子の運動,電流がつくる磁力について追究する中で,主に予想や仮説を基に,解決の方法を発想する力を養う。
物の溶け方,振り子の運動,電流がつくる磁力について追究する中で,主体的に問題解決しようとする態度を養う。
   (以下省略)

さらに、学習指導要領解説では次のような説明が記載されています。

ここでの指導に当たっては,振り子の長さや振れ幅を一定にしておもりの重さを変えるなど,変える条件と変えない条件を制御しながら実験を行うことによって,実験の結果を適切に処理し,考察することができるようにする。その際,振れ幅が極端に大きくならないように適切な振れ幅で実験を行うようにする。(下線は筆者が付け加えたもの)
また,振り子の長さは糸などをつるした位置からおもりの重心までであることに留意する。さらに,伸びの少ない糸などを用いることや,おもりの数を増やして実験するときに,おもりを下につなげてつるすと振り子の長さも変わってしまうことがあること,測定中の振れ幅の減少ができるだけ小さい振り子を使用することなどに留意する必要がある。
他教科等との関連として,実験を複数回行い,その結果を処理する際には,算数科の学習と関連付けて適切に処理できるようにする。

この通りに授業をやるとすると、あまり面白みのない授業になってしまうでしょう。
そこで、まず工夫すべきは導入部です。
最初の発問は次のような内容でどうでしょうか。
「みなさんの身の回りで、規則正しく動くものにどんなものがありますか?
5年生であれば、「時計の秒針」「心臓」「人工衛星」など、いろいろ子供からの発言があると思います。
そこで、実際に実験として取り上げられることが可能だというものから、「振り子時計」(本物が用意できれば、それを提示するし、なければ写真でもよい)を子供に見せます。
そこから、ガリレオのエピソードなども交えながら、「振り子の運動」について調べることを、その時間の目標とします。
「振り子の運動」では何が規則的になるのか。子供に予想させます。
いろいろな意見が出され、検討されることが重要です。教師がすべて用意して、「さあ、これをやってみましょう」では料理番組と同じです。時間的に、そんなに長い時間、試行錯誤をさせる余裕はありませんが、それでも考える時間は取りたいものです。
「振り子の運動」はガリレオが行った実験の一つであり、地上の重力下における様々な運動の関連を見いだした歴史的な実験です。また、観察・実験を科学に本格的に持ち込んだのも、このガリレオが最初であり、その意味でもこの「振り子の運動」を扱う意義はもっと子供たちに科学の歴史という視点から強調されてもよいと考えます。

武谷三男の「物理学入門」によると、「振り子の等時性を発見しただけでなく、落下の加速度と振り子の周期の間の一定の関連を見出したのである。」と、地上の物体の運動を通して、力と運動との関連性を発見したことが記されています。その意味では、ニュートンの運動の法則につながる実に大きな研究だったことがわかります。

 4年生で学んだ「月と星」あるいは6年生で学ぶ予定の「月と太陽」のどちらも天体の運動を扱うものですが、中世の地動説裁判にガリレオがかかわってくる話は子供たちにとっても興味深いものになるでしょう。それと同時に、地上の運動と天体の運動が同じ法則のもとに行われているということを示すニュートンの運動方程式は中学3年以降の学習内容ですが、多少それを示唆するような話をトピックスとして取り上げても良いかもしれません。
要するに、自分たちがやっていることが教室の中だけで閉じた世界のものではなくて、現実の世界とも過去ともつながっていることを再認識する機会にすることがこの単元では可能だということです。

このように教室から広がる世界を味わい、楽しむことができるような授業を構成していくこと、これが21世紀の授業の典型の一つであると考えます。

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