先月末の一週間、アメリカのボストンで理科教育に関する実態調査を行ってきました。
ここ数年、アメリカの理科教育を調べているなかで、気になるキーワードが、「科学者のように学ぶ」授業です。
これは、理科を教室内で完結させる授業と言うよりは、現実社会とのかかわりや、より本物のサイエンスを体験させることに重点が置いたものと理解することができます。わが国でも、現行の学習指導要領のなかで理科については、「理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会をもたせ,科学への関心を高める観点から,実社会・実生活との関連を重視する内容を充実する方向で改善を図る。」と改訂の基本方針の中で示されているわけですが、目指す方向性は同じでも現実に形になっているものはかなり違います。あちらでは科学・技術・社会の関係が様々な視点から検討されています。
今回の調査訪問において、「サイエンス・トーク」という言葉に出会うことが何回かありました。「サイエンス・トーク」の手法はいくつかあるようですが、基本的には次のようなものです。
「科学者がデータを共有したり、結論について話し合ったりするように、子どもたちが自分の経験や集めたデータについて語り、思考を深め、結論を導き出すこと」(「The Essentials of Science and Literacy」Karen Worth et al. 2009 Heinemann )
言い換えれば、一人ではできないような認知的な発展をクラスの仲間や先生と語り合うことになって行うこと、とまとめることができるでしょう。
通常は教室で輪になって座り(床に座るか、又は椅子に座って円を作る)、その授業で行った実験・観察などに関して、語り合うという形式です。そこには、いくつかの特徴があります。
・子どもたちはお互いの顔が見られるように輪になって座る。
・その場には、だれもが理解している明確な規範がある。
・教師主導の質問や意見交換よりも、子どもたち同士の自然な会話の流れが
ある。
ある。
・多くの子どもが参加し、話し合いは特定の子や先生によって支配されてい
ない。
ない。
・話し合いは焦点化されており、子どもたちは特定の話題について時間をか
けたり、他の考え方との関連性について考えたりする。
けたり、他の考え方との関連性について考えたりする。
みんなの顔が見えて、話を聞けるということが、全員がその場に参加していることを実感させてくれます。
今回の訪問で公立学校の7年生(中学1年)の理科授業では、授業の終末で、子どもたちが同じテーブルに向かい合って座っている仲間と、その日のテーマであるDNAモデルについて語り合う場面がありました。これもまたサイエンス・トークの一つの形態であったようです。
DNAらせんモデルは日本では高校の学習内容ですが、州ごとの裁量が大きいアメリカではカリキュラムは日本よりも幅があると言えます。この市では、独自のカリキュラムコーディネータを配置して、州からの要請を満たしつつ、市独自のカリキュラムを編成していました。2月に出来上がったばかりのあるプロジェクトのカリキュラムを見せてくれましたが、わが国でも近年やっと知られるようになってきた「逆向き設計」の考え方に基づいて、Big IdeaやEssential Questionなどを盛り込んだ魅力あるカリキュラムに仕上がっていました。今後、これを公開して、現場の先生方の意見を取り入れながら修正していくとのことでした。
このあたりも参考にしたいところです。
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