アメリカは一時よりも経済が回復しているようです。その一因となっているのが、シェールオイル、シェールガスの産出です。この掘削に利用しているのが、「水圧破砕」という工法で、水と砂、化学物質を高圧で地下のシェール(頁岩)層に注入して、その岩石の亀裂からオイルやガスを取り出すというやり方です。これによって、以前からの油田に加え、アメリカ全体の産油量が増加し、それによって石油精製を始めとして、化学産業が活気を呈してきているようです。
このような最近の話題を早速、学校の授業に取り入れているアメリカの教師たちがいます。
LDC(Literacy Design Collaborative )という民間団体があり、そこに所属する人たちが高校生向けの授業プランを作成し、Web上でも公開しています。
このプランの面白いところは、シェールオイルやガスの採掘に関して、賛否両論があるにもかかわらず、それらを含めて、生徒たちに議論させようというところです。もちろん、推進派と反対派の両方の考え方、科学的な根拠などを提示しながら、ち密に計算したワークシートを利用して、生徒たちの主体的な活動を促すような活動計画です。
その一部には、「映画の台本を作る」という学習活動があります。そこでは、生徒のためにサンプルが提示されています。その部分を以下に紹介します。
スティーブ・ツリーマン(環境保護グループの科学者)とトム•ドリラー(ガス会社の科学者)は、ホワイトハウスのバラ園でオバマ大統領と会談している。どちらの科学者も彼らの前にたくさんの論文を広げている。ツリーマン博士の情熱的で要点を押さえた話をオバマ大統領が熱心に聞いている。
ドリラー博士: しかし、スティーブ、水圧破砕がその地域で始まる前は、このメタンが存在しなかったことや細菌の正常な代謝機能の結果自然にできるものではないからです。
ツリーマン博士: (大統領に向かって体を傾けながら)大統領、深いシェールガスからのメタンの同位体と、細菌によるメタンの同位体を比較する試験によって、水中のメタンが細菌からのものではなく、もっと深いところからのものであったことが証明されました。・・・
(Literacy Design Collaborative :Hydrofracking__Pam_Meyer20140102-2-zl3jhzより)
賛否両論がある科学的な話題を取り上げるのは、容易ではありませんが、生徒にとってはとてもリアルタイムで面白いテーマだと思います。
STS(Science Technology Society)教育がしばらく前に話題になりましたが、そのときの先駆者たちもアメリカの教師でした。サイエンスはまさに現代社会と密接に関連しており、そのリアルな話題を可能な限り授業の中で、取り上げていくのは「教室の中だけで完結する」これまでの学びを広げ、面白くしていくしかけの一つだと思います。ただ、それには十分に考えられた授業プラン、カリキュラムが必要です。年間に一つでも、そのようなオリジナルのプランを作って、子どもたちと追究してみてはどうでしょうか。
そのような教師が増えて、交流の輪が広がっていくことが教育改革の一番の近道のような気がします。
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