小学校と中学校で教える二人の先生の感想(紹介)文を紹介します。
●白井 雄大 さん(佐賀県 小学校)
この本は、「子どもが夢中になる学びをどうつくるか」を、10の視点から紹介してあります。授業の工夫や教材の選び方だけでなく、子どもと世界との関係をどうデザインするかという大きなテーマが語られます。
第1章では、教材を「鏡」と「窓」に例え、自分を映し出す学びと他者を知る学びの両方が大切だと説かれています。第6章では、子どもが課題をどう意味づけるかが学びの深まりを決めるとし、第9章では「協働」を分担作業ではなく、共に理解をつくる探究と捉え直してあります。そして、本の最後の「おわりに」では、「業務」と「仕事」の違いを通して、教師の本質的な使命について説かれています。
私自身、現場で教える身として特に共感したのは、「課題をどう意味づけるか」という視点でした。良い課題を用意しても、子どもが自分事として受け取らなければ深い学びにはなりません。子どもが「自分で選んでいる」「自分の思いを重ねている」と感じられる場面をつくることが、教師の役割だと感じました(第4章と第5章)。
また、対話を通して互いの考えを育て合う姿勢は、学級づくりにも直結しそうです。グループ活動の中で子どもたちが違いを尊重しながら進む姿は、まさに本書が目指す「夢中になる学び」です(第8章)。忙しい日々の中でも、子どもが心から学びに向かう瞬間を支えることこそ、私達教師の「仕事」なのだと改めて思いました。
●寺田 愛子 さん(長崎県 中学校)
今年度、教員3年目として中学校3年生の担任、国語の授業は1、3年生を2クラスずつ受け持たせていただいています。高校入試を控えているはずの3年生。受験へ向けたやる気スイッチはどこにあるのか。どうすれば生徒がもっと主体的に学級を動かしてくれるのか。なかなか思うようにいかない学級経営に頭を抱える毎日です。教科においては、初任の年に国語の授業を担当した1年生(今の3年生)と今年の1年生の生徒の雰囲気の違いに戸惑いながら、なるべく生徒が前のめりになって取り組んでくれるような言語活動を模索しています。そのような最中、幸運にもこの『ほんものの学びに夢中になる』を読みました。その中でも一番の悩みであった、無気力な 3 年生のやる気を引き出す方法について、本書の第7章「生徒と一緒に考える成功の定義」を紹介したいと思います。
「教室では、教師が価値を置くものに対して選択的な注意を向けると、生徒たちが自分の価値観を行動ややりとりにどのように反映させているかに気づかなくなるおそれがあります。」(130ページ)
この文章を読んだとき、授業や学校生活の諸場面における、私自身の「選択的な注意」から生まれた発言が、生徒の主体的な言動を制限してはいないだろうかと不安になりました。
国語の授業で言うと、各単元で提示する学びの目的(目指す国語力)ばかり注目して、生徒自身の考えや価値観などを後回しにしてしまってはいないか。生徒の問題行動を指摘するだけで、行動の原因を軽視してはいないか。知らず知らずのうちに投げかけた言葉が、やる気や自信の低下につながっているのではないか。
手立てとして本書で提案されているのは、教師と生徒の併記されたルーブリックをつくり、それぞれに教師がフィードバックをすることです。本書の「生徒の価値観を尊重しながら教師の期待に応える方法を提示すること」こそが、生徒のモチベーションにつながる方法なのだと気づきました。教師が書いたフィードバックを読んだ生徒が何を思うのか。生徒の立場になって考えることがいかに大切か、痛感した次第です。
これからの生徒との関わりの中で、自分一人では解決できないさまざまな場面に遭遇したとき、解決の糸口を見出だしてくれるような心強い一冊です。


