2026年1月18日日曜日

すべての人に(生徒にも教師にも)SELを!

   去年の12月に『教師のためのアート・オブ・コーチング』という本を出したのがきっかけで、その著者のエリーナ・アギラ―さんがあちこちに書いた無料で読める記事(ブログ等)を読んでいます。ここで紹介するのは、彼女が11年前の2014年4月17日に書いたものです(CASELの設立は1994年ですから、アメリカでは20年が経過した段階で、いまは30年経っていることになります!)。~以降の青字は、紹介者のコメントです。

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この10年で、子どもたちのSEL(感情と社会性を育む学び)のニーズは、これまで以上に注目が集まるようになりました。こうした学びは、子どもにとっても大人にとっても欠かせない重要な領域です。そして今こそ、学校が教育者のあらゆる学習ニーズに責任をもって応えるべき時です。たとえば、新しいテクノロジーの活用、新しい基準(スタンダード)の理解と実践、新しい評価方法の導入、そして教育者自身のSELへの取り組みなど、幅広いニーズに対応する必要があります。~日本では、まだ「SELって何?」という段階です。『EQこころの知能指数』は1996年の本の販売で結構知れましたが、残念ながら教育界はその例外でした。

教師とSEL

 大人にとってのSELは、子どもたちに提供し始めている内容と大きくは変わりません。SELには、自分の感情を認識し理解すること、感情をうまくコントロールするための方法、他者の感情を読み取り理解する力を育てること、そして他者の感情に適切に応答するための方法などが含まれます。またSELには、逆境から立ち直る力――いわゆる「レジリエンス」を育てるための方法を、意図的に教え、練習することも含まれます。私は、こうしたSELこそが、教育者向けの研修において、新しい学習指導要領に関する研修よりも、もっと時間と注目を向けるべき領域だと考えています。なぜかというと、SELは、教育者が押し寄せる変化の波を乗りこなし、変化に効果的に対応するための基盤となる力だからです。 ~ エリーナさんは、このこだわりをその後Onward: Cultivating Emotional Resilience in Educators』(2018)という本を出すことで満たしています。そのなかで、感情の扱い方・自己認識・自己管理・希望・エージェンシーなどを学習可能なスキルとして扱っています。なお、『SELを成功に導くための五つの要素』も似たアプローチと内容を扱っている本(アメリカでの出版は2013年)ですので参考にしてください。

なぜ教育者にSELが必要なのか?

学校で働く大人たちがSELから恩恵を受ける理由は、読んでいる皆さんならいくつも思いつくでしょう。しかし私は、教育政策と意思決定を担う立場の人たちに「教育者向けのSELに貴重な研修時間を割くことは必要であり、場合によっては緊急性があり、そして非常に価値がある」と納得してもらうために、特に重要だと考える理由を挙げます。

1) 感情は存在する。

教師(校長、教頭/副校長、コーチなどを含む)にも感情があります。その存在を無視したり、「仕事の外で勝手に処理してほしい」と願ったりすることもできますが、むしろ感情の存在を認め、どう向き合うかを考えることもできます。感情は、誰も触れたがらない「部屋の中の象(見て見ぬふりをしている問題)」に長年なっています。~ もちろん、子どもたちにもあります! 「感情と人間関係は教室の外に置いてきなさい」と言ったところで、それは無理なのです(それは、教師にとっても無理なことです!)。

2) 変化はさらに多くの感情を生む。

そして今、教育の世界は大きな変化の波にさらされています。新しい評価、新しいカリキュラム、新しい教え方、新しいテクノロジーなど、次々と変化が押し寄せています。多くの人間にとって、変化に対する最初の感情反応は「不安」です。これは脳の仕組み上、ごく自然なことです。脳の構造と戦うこともできますが、脳の仕組みを理解してうまく付き合うこともできます。変化に対する反応が暴走しないようにするための、シンプルな方法はいくつもあります。そして素晴らしいことに、脳は変化できるものです。科学者はこれを「神経可塑性」と呼びます。脳の特性を活かすことで、変化に伴って生じる感情をうまく扱うことができます。これこそがSELの核心です。~ この「脳の可塑性(変化する性質)」も含めて、SEL5本の柱(自己認識、社会認識、自己コントロール、対人関係スキル、責任ある意思決定)と脳の構造にも各章で説明しながらまとめられている本が『感情と社会性を育む学び(SEL)~子どもの、今と将来が変わる』マリリー・スプレンガ―著、新評論、2022年)ですので参照ください。

3) 感情は必ず結果を伴う。

感情は、私たちに動機づけや活力を与え、他者とのつながりを深めてくれます。しかし同時に、私たちを病気にしたり、怒りや抵抗を生んだり、排除の態度を強めたり、前向きな変化を妨げる要因にもなります。感情に向き合わなければ、感情のほうが私たちを支配し続けてしまうのです。 ~ かなりやっかいな存在なので、うまくコントロール術(スキル)を身につける必要があるわけです。いつまでも「部屋の中の象(見て見ぬふりをしている問題)」にしておくわけにはいきません!

最後に伝えたい本質的なこと

 この10年間、私はインストラクショナル・コーチとして、大人が自分の実践をより良くし、子どもたちが必要とし、ふさわしい教育を受けられるようにするにはどうすればよいかを考え続けてきました。その中で最も頻繁に現れるのは「感情」でした。感情を理解し整理するための支援、共感してもらう経験、自分が孤立していないと感じること――こうしたニーズが、どんな話題よりも強く表れました。

正直に言えば、これが現実でなければいいのにと思ったこともあります(本当は授業計画やブッククラブの話だけをしたい時もあります)。しかし、感情に向き合わなければ――つまりSELを扱わなければ――その先の話には進めないのだと学びました。
 私はコーチングの多くの時間を、教師のSELのサポートに費やしています。そして、人は感情に圧倒されている状態では学ぶことができません。コーチとしての私の信条のひとつは、「相手がいる場所に寄り添う」ことです。相手が悲しんでいるなら、私はその場所に寄り添う必要があります。

 私はここで、もうひとつ大胆で挑発的な主張をしたいと思います。もし私たち(学校改革や教育の変革に取り組む者)が、大人の感情に向き合い、その感情を丁寧に扱い、そして教師が受けるべき研修にSELを組み込まなければ、すべては終わりです。この戦いは、敗北したのも同然です。

この主張を裏づけるために、私はまず教師の定着率に関する数字を示します。私が働くオークランドの教育委員会では、毎年、教師の3分の1が辞めていきます。5年後に残っているのは、わずか5人に一人です。校長の離職率はさらに高いのですが、教師ほど正確には追跡されていません。私たちは、(せっかく教育に関わることを選び、そして実践を蓄積してくれた人たち人的資源(professional capital)、組織としての知識、そして変革を持続する力を失っています。さらに、さまざまな取り組みに多額の投資をしても、高い離職率のせいで、その多くが失われてしまいます。 ~ この状態は、アメリカの20年、30年前の状態ですが、今も継続しています。日本でも似たような状態が起こりつつあります。そして、その状況は悪化の一途をたどることでしょう。感情を扱わなければ、問題はさらに深刻化することでしょう!

次に重要なステップ

教師が最善の仕事をし、すべての子どもに落ち着いて忍耐強く接することを期待するのであれば、まず教師自身が感情を扱うためのサポートを受けられる環境が必要です。さらに、上司から怒鳴られたり、威圧されたり、評価されないまま働かされているような状況では(残念ながら多くの現場で起きています)、なおさら不可能です。

「感情は職場の外で勝手に処理してほしい」と願うだけでは、もううまくいきません。教育組織のあらゆるレベルの管理職が、学校で働くことによるストレスを教育者がうまく扱えるよう支援する責任を引き受けるべき時です。これは、思っているほど複雑でも難しくもありません。 ~ 彼女のコーチングのやり方は、この感情や価値観、あり方をベースにしたアプローチです。それは、まだ教育界では新鮮なアプローチです。教室で、教師がSELと教科指導を統合することを求められ、かつその実践が展開しているのと同じように、教員研修でも感情(や価値観、教師のあり方)と研修の内容を統合するのが効果的といえます。

  次のブログでは、教師のためのシンプルなSEL(感情と社会性を育むための学び)のアイディアを紹介します(順番が逆になりましたが、すでにhttps://selnewsletter.blogspot.com/2026/01/sel5.html で紹介してあります!)。

出典:https://www.edutopia.org/blog/social-emotional-learning-for-teachers-elena-aguilar

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