2024年7月14日日曜日

ひらめきに至る8つのステップで授業を設計する

子どもたちが多様な意見を出し、新しい考えをひらめくような授業を作りたいと思いませんか? 教師が支持する手順に従って、全員が同じテンポで進む学びは、本当に「学び」と言えるのでしょうか。そんな疑問を持ちながら、ひらめきを生む授業設計を模索していると、興味深い本に出会いました。それが、虫明元著『ひらめき脳』です。



 

この本では、創造性の事例を研究した結果、「8つのステップ」がジグザグに絡み合うことで、ひらめきが生まれることが発見されています。直線的に順番に進むわけではなく、互いに影響し合いながら行き来することで創造性が発揮されるのです。これらのステップは、「体験的ステップ」「認知的ステップ」「対話的ステップ」の3つに分類され、それぞれ以下のように説明されています。

 

体験的ステップ

 

1. 五感で体験する重要性

単なる文字情報だけでなく、実際の現象や状況を身体を通して五感で感じることがひらめきには不可欠です。心から驚くような経験は、従来の固定観念に疑問を投げかけ、新たな視点をもたらします。

 

2. 想像と遊びの役割

遊びは純粋な楽しみのために行う活動であり、想像力や空想を解放し、無意識の領域へ導いてくれます。遊びを通じて、自己の内部に現実世界とは異なる世界を創り出します。現実と空想の世界を行き来することが、ひらめきの触媒となるのです。

 

3. 具体的に表現すること

創造性は単に精神的な活動だけでなく、身体的な表現や感情表現といった特定の環境での活動に関連しています。アイディアやコンセプトを頭の中に抱えているだけではなく、それを具体的な形にすることが重要です。心の内部と外部世界との相互作用によって、真の創造性が発揮されるのです。

 

認知的ステップ

 

4. 疑問や質問

好奇心や発見への希望を持ち、常に良い問題を見つけ、新しいインスピレーションを求める内的な対話を行うことが重要です。

 

5. 深い学び

良い質問は深い学びへと導きます。創造的な生活では、常に学び、実践し、習得し、深い知識を追求することが求められます。事実と誤情報を区別する批判的な思考も必要です。

 

6. 遠隔融合

創造的なマインドは、異なるアイディアや観点を融合させる能力を持ちます。これにより、新たな次元やアプローチが生まれる可能性が広がります。

 

7. 比較と選択

創造的なプロセスには、発散的思考と収束的思考の両方が含まれます。多くのアイディアを広く探求し、多くの選択肢を比較して、制約条件のもとで最適な選択肢を見つけ出します。この発散と収束のサイクルを通じて、アイディアは洗練され、最良の選択肢が見つかります。

 

対話的ステップ

 

8. 対話

創造的な思考は対話に基づいています。他者との対話だけでなく、自分との内的対話も含まれます。他者との対話は新しい視点を提供し、内的対話を豊かにしてくれます。

13の体験的ステップでは、子どもたちの遊ぶ姿を見ると納得できるのではないでしょうか。子どもは遊びのプロですから、どんどん新しいアイディアを生み出し、工夫し、よりエキサイティングにして遊びそのものを創造的な活動にしています。

 

また、この47の認知的ステップは、子どもたちの創造的なアイディアを促進させる授業設計にそのまま活用できるでしょう。そして、令和教育のキーワードであるステップ8の対話を通じて学びを深めていくことで、授業はより創造的になると考えられます。

 

私は、このステップすべてが、算数授業で取り組んでいるワークショップ「数学者の時間」に当てはまるものだと感じました。これまで8つのステップとして意識していたわけではありませんが、「ひらめきに至る8つのステップ」に当てはめてみると、とても納得のいくものでした。実際に数学者の時間で取り組んでいることを、8つの要素に当てはめて書き出してみると以下のようになりました。

 

「ひらめきに至る8つのステップ」から見る、数学者の時間における授業を創造的にする8要素

 

1. 五感で体験する重要性

これは、体験してやってみることです。問題に熱中し、具体物や半具体物を使って学ぶことを指します。五感を使った体験は、子どもたちに新たな視点をもたらし、深い理解を促します。

 

2. 想像と遊びの役割

授業に遊びの要素を取り入れることです。ホイジンガやカイヨワの理論を参考にすると、遊びは自由で自発的、限定された空間と時間で行われる不確実な活動です。特定のルールに従いながらも、現実から離れた架空の世界を創り出すことができます。授業という限られた時間と場とルールの中で、集中して取り組んだり、自分のペースで問題から離れたりする自由を持たせることが、遊びのある授業と考えています。

 

3. 具体的に表現すること

これは、形にしてみることです。数学者ノートに書くことを指し、実際に文字にして自分の思考をモニターします。考えを形にするために問題を作ることも含まれます。具体的な表現は、アイディアを具体化し、他者との共有を可能にします。

4. 疑問や質問

質問することは数学的に思考し、創造的になるために必須です。数学者の時間では、自分や友達、批判的な友達に対して説得できるように質問し、問いを投げかけます。

 

5. 深い学び

じっくりと学ぶために、一つの問題を多様な方法で考えます。概念を身につけるためには、多様なアイディアで学ぶことが重要です。単一の方法だけでは限定された場面でしか活用できません。だからこそ、筆算だけを学ぶのではなく、多様な方法で学ぶことが大切です。

 

6. 遠隔融合

アイディアを掛け合わせることで良い解決方法を生み出します。授業で取り組んできたミニ・レッスンを組み合わせ、問題解決に活用できないかを考えます。

 

7. 比較と選択

発散と収束を繰り返します。数学的思考の本質である特殊化(試すこと)と一般化(パターンを見つけること)を繰り返すのです。数学的思考そのものがひらめくための創造的活動そのものです!

 

8. 対話

他者と対話し、自分と対話します。教室内にはいつでも相談できる環境があり、同時にじっくりと一人で考えられる環境も大切です。

 

みなさんも、ぜひ、ご自分の授業を「ひらめきに至る8つのステップ」に当てはめて振り返ってみてください。すでに取り組んでいることは継続し、足りなかった要素を付け足すことで、授業がよりダイナミックになるはずです。それによって、教科書を越え、学習者がより主体的に学んでいくことができるでしょう。

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