デンマークは人口579万人(2020年の統計資料による)、国土の面積は43千平方キロと、日本の約九分の一の広さです。立憲君主制で、女王マルグレーテ2世が在位されています。
自治領として、グリーンランドとフェロー諸島があります。最近放送されたテレビドラマでこのフェロー諸島を舞台にしたものがありましたが、手つかずの自然が残る地域のようです。ただ、北欧に近く、いかにも寒そうな印象を受けました。
さて、何でこのような話をしたかというと、年明けに内村鑑三の『デンマルク国の話』を久しぶりに読んだからです。私が最初にこの話を読んだのは、中学生のころでした。もう半世紀以上の前になりますが、その後の生き方に大きな影響を受けました。
これは、1911年10月に行われた講演がもとになっているものです。
その内容はおおよそ次のようなものでした。
1864年、ドイツとオーストリアとの戦争に敗れた小国デンマークが南部の肥沃な土地を奪われ、経済的にも困窮しました。それを植林によって、肥沃な大地をつくり出し、国を立て直したという実話に基づくものでした。その中心がダルガス親子なのですが、不屈の精神をもって、作物の育たない不毛の大地を肥沃な土地に変えていくという、多くの人に勇気と希望を与えた話です。当時、内村は最愛の娘を亡くし、人生の大きな試練に立たされていたのですが、そのさなかに自らの生きる力を鼓舞するようにこのお話を語ったということです。
また、『後世への最大遺物』も多くの人々に力を与えてきましたが、『君たちはどう生きるか』の著者である吉野源三郎も内村に大きな影響を受けた一人です。彼が、高校生のときに内村の『リビングストーンの一生』という講演を聞き、その感動を長く忘れることはなかったと書いています。その後『後世への最大遺物』に触れる機会があり、それが自分の人生に不安を抱いたときに自分を支える大きな拠り所となったようです。
この二つの講演はこれからのわが国の未来を考えるうえで、とても大きな指針になるように思います。また、人間の強い意志というものは、人から人へと伝わっていくものであることがわかります。ここにこそ未来への希望があり、「バトンを渡していく」ことが教育の大きな目的であることを改めて確認させてくれます。
2004年の国立大学の法人化に伴って、国立大学の予算を年に1%ずつ削減していきました。このことが今になって、じわじわと日本の科学技術の先行きを暗いものにしています。
思いつきのような施策を展開するのではなく、百年先を見据えて手を打つことがいかに大切か、私たちも内村や吉野から受け取ったバトンを次世代につないでいきたいものです。
前回も書きましたが、日本の企業の稼ぐ力が本当に弱くなっています。過去の成功体験に引きずられて、なかなか改革の進まないのは、あらゆる分野に共通することです。ここでじっくりと未来を見据えて新たな道を切り拓くことです。多くの若者が未来に希望が持てるようなイノベーションをあちこちで起こしてほしいものです。
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