3学期が始まります。この一年間続けてきた学びの集大成に向けて、今、準備をしておくといいことはどんなことでしょうか。私は、この3学期の学びを終えたとき、「私という先生がいなくなったとしても、子どもたちには学び続けることを大切にしてほしい」ということでした。それは、学びの主人公になるということ。子どもたちが学びの質を自分で見定められるように評価を中心にすえることでした。つまり、自己評価です。私自身の反省をこめてこう叫びたい。「学校には教師よる一方的な評価がいかに多いことか!」と。
自己評価は本来、個別化されて、教師と学習者が協力して考えた目標が示され、学習者の知っていることやしたこと、そして、すべきことなどをもとにした判断から始まるものです。そこで、読むこと・書くことに貢献し、教育界のノーベル賞と呼ばれるグローバル・ティーチャー賞の初代受賞者ナンシー・アトウェル著『イン・ザ・ミドル』(三省堂)を読み直してみました。すると、3学期の評価に向けて、第8章「価値を認める・評価する」の自己評価用紙とポートフォリオがまさに! 大いに役立つヒントとなり、さっそく参考にさせてもらいました。
自己評価には、各学期末に行う質問用紙「自己評価用紙」を作成します。そこには「書くこと」の質問例が挙げられています。
自己評価用紙
l 完成作品数・ジャンルを振り返ることで、生徒が(保護者も)達成できたことをはっきりと知ることができる。
l 自分の作品の特徴を見つける。自分が使った書くことの技について、ミニ・レッスンやカンファランスで教わった文学用語を使って答えることで、その技を自覚し、自分のものになる。
l 書き手としてどう幅を広げたのかを、包括的に振り返る。最初と今を比べ、その成長を喜ぶことができる。
★ 本書P.317に詳しい項目が挙げられていて、大変参考になります。
l 最後には「執筆量」「綴り」「綴り以外の書き言葉の慣習」「書き手の技における目標」を振り返る。
エイブリーの自己評価用紙(書くこと)例
私は現在、小学校5年生の全クラスの算数を担当し、そこでは算数ワークショップに取り組んでいます。そこで『イン・ザ・ミドル』の自己評価用紙を参考に、振り返り項目を書き出してみました。
数学者自己評価用紙
l この学期に解いた良問の数は? 問題づくりをした数学作品の数は?
l よくできたと思う数学作品ベスト2を選び、その題名を書き、その下に数学者として行ったことを書きましょう。
l 今学期、数学者としてどうやってその問題解決の質を高められましたか。「問題」「計画」「解決」「ふりかえり」「共有」という点から考えましょう。
l 優れた問題解決するためには、どうして「試行錯誤(試すこと、予想すること、確かめること)」が大切なのか、数学者ノート、ミニ・レッスンやカンファランスから学んだことをふりかえり書きましょう。
l 優れた問題解決するためには、どうして「思考のスピードを落とす記録(添え書き)」が大切なのか、数学者ノート、ミニレッスンやカンファランスで学んだことをふりかえり書きましょう。
l ミニレッスンで学んだ一番よかった問題解決スキルはどれですか。どうしてそれがベストなのか、その問題解決スキルの優れた点を箇条書きしましょう。
l 優れた問題解決者として取り組んでいること、または、苦労していることはどんなことがありますか。
l 今学期のテーマである「算数・数学におけるアート」とはなんですか?
l 次の学期にむけて、優れた問題解決者として成長したいことを、以下の点から考えましょう。
・ 問題解決の量
・ 算数授業の単元学習(小テスト・まとめテスト最終版)
・ 問題解決者の技
第8章はさらに、日々の学習記録である自分の学習プロセス、その結果、この間の成長、課題を自己分析するための材料となるポートフォリオの紹介もありました。
ポートフォリオ(書くことと綴り)に入るもの(本書P.327より)
l 自己評価用紙
l 最も良い作品のコピー
l 執筆記録。書いた量、ペース、題材の選択、成長という点から、書き手としてのあなたについてわかることを簡潔に説明する。
l ワークショップノートの授業ノートセクションから、最も有益だった情報を3つ選び、書き手としてなぜそれが有益だったのか簡単に説明する。
l この学期で読んだ回想録のうちベストのもの
l 校正項目リスト
l 一学期の書き取りテスト
l 執筆や綴りに取り組んでいるときの写真
また、同じように算数ワークショップのポートフォリオも作ってみました。
数学者ポートフォリオに入れるもの
l 数学者自己評価用紙
l 最も良い作品(優れた問題解決記録、問題づくり、数学アート作品)のコピー
l 問題解決記録(数学者ノート量、そのペース、選んだ良問)に、成長という点から、数学者としてのあなたについてわかることを簡潔な説明を付箋に書く。
l 数学者ノートから、最も有益だった問題解決スキルを3つ選び、数学者としてなぜそれが有益だったのか簡単に説明する。
l この学期で問題解決したベストの良問とその記録ノート
l この学期の単元テスト(最終のもの)
l 問題解決に取り組んでいるときの写真
これらをもとに、実際に3学期取り組めた内容を修正しながら見通しを持って取り組もうと考えています。本書にもあるように、きっと最後の一週間は、学期でしたことをふりかえり、次の学期に向けての計画を立てるなど、この自己評価に費やす時間となることでしょう。
実際に『イン・ザ・ミドル』をモデルにしてつくってみると、読み書きの項目は、算数・数学にも同じように使える共通点も多くありました。おもしろいことに、概観すると算数・数学における「解くこと」は国語でいう「読むこと」であり、算数・数学における「問題をつくること」は国語いう「書くこと」に似ている事に気付きました。すると、普段の算数授業では、いかに解くことしかやってこなかったのか! 算数・数学の教科における解くことでみつけたパターンをいかして問題をつくって広げてみるなどの、決定的な欠陥事項に気付けてしまいました。
上記のリストを見直して、今学期の見通しがたち、子どもたちがどのように自己の学びの材料を増やしていけるのか、安心した気持ちにもなれました。みなさんも、担当している一つの教科に絞って実際に自己評価用紙を作ってみるだけで、3学期の授業の目標や活動の質が高まり、学習者がいかに学びの主人公であることが大切なのか、教育の見方が大きく変わるはずです。学年末に、達成したことを自分で自分を誇りにして、祝福できる、そんな自己評価できる学びにスタートを切ってみませんか。
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