協力者の一人の佐藤可奈子さん(中学校の国語科教師)が、以下の紹介文を書いてくれました。
「生徒がやる気をなくした瞬間や努力をしないと決めた瞬間」これを「挫折ポイント」とする。(「はじめに」より)
想像してみましょう。やる気をなくした生徒を前にした教師(私たち)は、どんな行動をするでしょう?
*やる気をなくしているなら、何を言っても無駄だから無視する。
*授業(仕事)の邪魔をしない限りは、放っておく。
*大きな声で叱る。
*事情を聴いてみるが「別に」と答えられて会話がおわる。
*背中をトントンとして参加を促す。
*レベルを下げた教材を渡す。
*課題に取り組む際に、一言二言会話を交わしてアドバイスする。
*評価を下げて、損を実感させる。
とりあえず、こうした対応をしておけば、時間が過ぎて授業が終わります。
生徒は授業を受けた(理解した)ことになり、教師は学びの保障をしたアリバイができ、すべての思わしくない結果は生徒の「やる気」の問題だったということに……教室でよくある場面ではないでしょうか。
「これ以上、どう関わればいいの?」
「やる気のない生徒に、何かを求めても無駄。」
「会社ならクビでしょ。社会で通用しないよ。」
そう思った方は、本書を読んでみる価値があると思います。
本書は“ごきげんな教室”をつくり、生徒と教師の成長を支援する方法や考え方を教えてくれます。
私のお薦めの読み方は「おわりに」から読むことです。
そこには、やる気をなくした生徒を前にした教師の、よくある姿が描かれています(私も、もれなくその一人です)。エピソードから「挫折ポイント」で展開される教師と生徒の関係は、互いの間に大きな認識の違いを生んでいることがわかります。
「おわりに」―P237L4「協力的な生徒はみんな努力家であり、協力的でない生徒は怠けていると捉えていた。」この記述には、ハッとさせられます。果たしてこの捉え方で生徒の成長はあるのでしょうか…?
「おわりに」を先に読むことで、読み手が問いを持ちながら、本書で語られることのゴールをイメージし、各章の内容を理解できる、理解しようとするだろうと思います。
「おわりに」を読んだ後は目次へ飛び、興味のある内容を選んで読んでもいいでしょう。どの章から読み始めても意味が分かる内容になっていると思います。
教育界の旬で言えば、第7章で取り上げられているICTツール、第5章で取り上げられている評価方法、形成的評価については、私たちの認識を変えたり生徒との関係や授業をよいものにしたりするヒントを与えてくれるでしょう。
きっと、手法を学ぶだけでなく、概念や考え方を学ぶことができます。これまでとは異なる、子どもへの目線、考え方を得られることでしょう。
本書のお薦めをもう一つ。各章末の「ルーブリック」が大きな刺激と学びを与えてくれます。
授業や子どもを理解したり授業を構成したりするための評価基準として機能することはもちろん、初期段階では自身の授業や考え方のチェックリストとしても使えると思います。
アメリカの教育現場で使われているルーブリックを、これほどまでに具体的に、豊富に示している訳本は、日本ではなかなかお目にかかれません。本書だけでなく、註釈で紹介されている多くの書籍と関連付けながら読むことで、「挫折ポイント」で何もできずに生徒を放置してきた自分と授業を変える必要性に気づくことでしょう。
手を付けられそうなところはどこでしょう。まず一つ、興味を持てた「ルーブリック」をもとにして行動してみてはいかがでしょう。
多くの教師が“ごきげんな教室”を作り、生徒と教師の学びと成長を支えるファシリテーターとなれたら、「挫折ポイント」にいる子どもたちも顔を上げて、自分の学びに向き合えるのではないかと感じます。
本書の「教師」「生徒」を「教え手」「学び手」に読み換えると、一般社会での人材育成に当てはめて読むことができます。「挫折ポイント」に至ることは子どもに限ったことではなく、大人も当たり前のように経験します。「教師」と「生徒」という関係性で考えるのではなく、「人」と「人」が学び、成長する時に必要な環境や資源を整備して、挫折の放置を止める。学校だけでなく、大人や社会も“ごきげん”になれるのではないでしょうか。
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