2020年4月19日日曜日

生徒が学校に合わせるのではなく、学校を生徒に合わせるべき


 いまが、まさにそのタイミング!!
 (ピンチがチャンス!)
 学校の合わさせたくとも、学校に来られなくて、みんなバラバラな状態ですから。
 ある意味では、学校(教師)が生徒に合わせなくてはならない状況に置かれています!

上記のタイトルは『あなたの授業が子どもと世界を変える』の第10章のタイトルです。その中身を紹介します(本の174~176ページからの引用です)。

 第二次世界大戦中、アメリカ軍はパイロットの高い死亡率という問題を抱えていました。◆原注15◆軍は、兵士養成の仕方の問題か、それとも速度の速い飛行機にパイロットが順応できないのではないかと推測しました。そして、パイロットに何か問題があるのではないかという前提のもとに、すべての問題に対する解決策を探り続けました。しかし、いかなる微調整をしても改善を図ることができませんでした。
 最終的に、すべてのパイロットを評価したところ、「平均」的なパイロットは一人も存在しないという結論が出ました。四〇〇〇人以上もいるなかに、たった一人も「平均」とされるパイロットが存在しなかったのです。
実際のところ、「平均的な男」に近いと判断されたパイロットがごく少数いました。平均というのは錯覚で、たくさんのデータを単純化する形で見せていたのです。言うまでもなく、それは人間が開発したものですし、科学的/数学的な真実があるということで社会が受け入れていただけなのです。
 この真実は、軍に衝撃を与えました。問題は、パイロットや飛行機、あるいはトレーニングの仕方にあったわけではなかったのです。真の問題は、さまざまな身体つきをしたパイロットを同一規格のコックピットに押し込めていたことでした。
 問題を解決するためには、これまでとはまったく違うアプローチを見つけ出す必要がありました。

<ここまで読まれてきて、学校や教室で日々していることとの共通点が、あまりにも多すぎると思われませんか?>

オーダーメイドの操縦席をつくるのか? もしそうなら、そのコストに対応できるのか? そして、パイロットが引退したり死んだりした場合はどうするのか? そのとき、この飛行機は使いものにならなくなってしまうのか?
 ほかにもアイディアが出されました。操縦席にぴったりフィットする身体をもったパイロットのみを選ぶというものです。しかし、これも現実的ではありません。なぜなら、軍にとっては、戦争で戦うのにもっとも適したパイロットが必要だからです。
 とはいえ、最終的には解決策にたどり着いています。

ものを調整可能にする


 そのとおりです! ヘルメットのストラップを調整できるようにする。ペダルを調整可能にする。座席を調整可能にする。柔軟な「デザイン」と「平均」という神話に人を合わせることから解放されたことで、突然、死亡率が下がったのです。
 最初の制度は、平均という概念によってつくられていました。平均がまるで役に立たないということではありませんが、それはすべての人(パイロットの場合が典型です)に合わせたように設計されています。さらに悪いことは、個々人の知識、スキル、資質を評価しようとする際にその平均を使ってしまうことです。このような現象は、常に学校で起こっていることでもあります。★注・一斉授業もテストも「平均」の発想がないとできないこと!?
ハーバード教育大学院で「心・脳・教育プログラム」を主宰している心理学者であるトッド・ローズ(Todd Rose)の「The Myth of Average(平均の神話)」 というタイトルのTEDトークで、上記のストーリーのすべてを聞くことができます◆原注15◆。

平均という捉え方は、教室で教える教師にとっては捉えにくい部分もあります。★注・言葉を換えると、教師の多くは次に掲げてあるような問いを常に頭に描いて授業をしているということです。そうでないと、指導案や指導書自体の存在自体が危ういものになりますから。しかし、「平均」という捉え方自体に問題があることが分かった今、それをベースにした授業をやり続けてしまっていいのでしょうか?
 平均的な生徒は、何を知っているべきでしょうか? 平均的な生徒は、これを学ぶのにどのくらいの時間がかかるでしょうか? 平均的な生徒は、このプロジェクトにどのくらいの時間をかけるべきでしょうか?
 やはり問題があります。私たちは、平均的な生徒などに教えることはないのです!

 平均的なパイロットが存在しなかったように、平均的な生徒も存在しません。平均を狙うと、私たちが行う指導は誰にも合いません。
 時間のことを例に取ってみましょう。あなたは、生徒たちが課題をこなすために一五分という時間を提供したとします。早くできる人もいるし、時間のかかる人もいます。平均は、誰にとっても役立つものではありません。生徒たちは、退屈したり、怒り出したり、イライラしたり、上の空だったりしているはずです。

<この平均思考を脱する教え方と評価の仕方については、『あなたの授業が子どもと世界を変える』以外に、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』や『教育のプロがすすめる選択する学び』を含めて、https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/teachers/osusume で紹介されている本が参考になります。先週の本ブログの記事も、です。http://projectbetterschool.blogspot.com/2020/04/blog-post_11.html

原注15TEDトークは、平均思考は捨てなさい : 出る杭を伸ばす個の科学』(トッド・ローズ著小坂恵理訳、早川書房2017年)に基づいています。教師必読の本です!!

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