引き続き、教師の働き方について考えている。
先月は、学校現場が、勇気を持って声を上げようという提案をした☆1。今でも、その考えは変わっていない。やはり、変革のエネルギーは、学校から生まれると信じている。
一方で、学校の努力だけではどうにもならない状況も生まれてきているようだ。
その一つが、若者の教員離れだ。小学校教員採用試験の競争率は、ピークの2000年度試験では12.5倍だったが、2017年度は3.5倍にまで下がっている。文部科学省「公立学校教員採用選考試験の実施状況について」によると、2019年度の小学校教員の競争倍率が1.2倍になった県もある。もはや「狭き門」とは言えない。
舞田敏彦氏は、これらの結果を受けて、「日本は優秀な人材を教員に引き寄せるのに成功してきた。労働条件や待遇が良くないにもかかわらずだ。個々の教員の熱意ややりがい感情に寄りかかっているわけだが、こういう虫のいいやり方も綻びを見せ始めてきた。教員の専門職性を明確にし、働き方改革を断行しなければ、他国と同様、優秀な人材は他の専門職に流れてしまうだろう。」と述べている☆2。熱意と使命感を持った優秀な人材が教職を目指さなくなったとすれば、これは実に深刻な事態だ。
これからの時代を担う若者たちが、ぜひ教壇に立ちたいと思えるようになるために、私たちにできることはないだろうか。働き方改革や採用試験改革を待たずに、私たちが、学校にいてできることだ。
私たちが、元気に、生き生きと働く姿を見せることがまず第一だろう。深刻そうで、ストレスフルな表情の先生ばかりの学校に魅力は感じないはずだ。次のようなことも必要になるかもしれない。
ー教職の良さや学校の素晴らしさなどを広く伝える場面づくり(ネット上だけではなく、直接語り合う機会など)
ー教師の「元気」を支える専門的支援
(教師対象のコーチングの確立、職場でのマインドフルネス実践など)
また、保護者や地域の人たちが、もっと学校を激励し、応援したいと思うようになってもらうことも大切だろう。学校や教師の応援団やファンになってもらうのだ。学校や教師だけでできないことはたくさんある。抱え込みすぎないことだ。
ー子どもたちの教育に、親や地域が、学校と一緒に関わる、携わる、歩んでいくような取り組み(例えば、ジェイムス・バポット(2002)『ペアレント・プロジェクトー学校と家庭を結ぶ新たなアプローチ』新評論 のような取り組み)。
ーもっと多くの人が学ぶことのよろこびを実感できる社会づくり(生涯学習を通じた学ぶことの再発見など)
サッカーにグリーン・カードというのがあるのをご存知だろうか。通常の大人のサッカーでは、ルール違反に対して、イエロー・カードやレッド・カードを提示して処罰をすることは良く知られている。いわゆる減点法によって、正しい行動を引き出そうとするものだ。グリーン・カードは、主に幼年層のプレーヤーの試合で使用するもので、主審はフェア・プレー精神や競技者同士の助け合いなどの行動を褒め、奨励することを目的として、提示する。負傷選手への(思いやり)対応、規則準拠に対する自己申告、問題行動への抑止行動、チームに対する試合への取り組みなどが評価される。
私たちも、もっと学校にグリーン・カードを出してもいいのかもしれないと思う。ポジティブなマインドの循環が学校の周辺に必要な気がしてならない。
☆1 PLC便り 2019/2/17,「教師の働き方改革 - 現状を当然と思わずに学校現場が声をあげよう」https://projectbetterschool.blogspot.com/2019/02/blog-post_17.html)
☆2 舞田敏彦「優秀な若者を教職に引き寄せてきた日本で、とうとう始まった「教員離れ」」https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11650.php
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