2019年2月17日日曜日

教師の働き方改革 - 現状を当然と思わずに学校現場が声をあげよう

先日、ある中学校の校長と話していて、学校の働き方改革の話題になった。

その学校では、試験的に導入されたタイム・レコーダーを使っているらしい。「そんな形式的に勤務時間をカウントして何になるんだろう。」と疑問を呈していた。その校長は、「勤務時間も顧みず、土日も部活で頑張る。それが中学校教員だ。」と考えるタイプの人だ。部活に外部指導者も導入しているらしいが、保護者との間でトラブルが発生し、教員がその対応で追われて、大変だったらしい。「やはり、子どもたちの安全や成長を考えると、教員が部活の指導をやらざるを得ない。」と力説していた。

「しかし、本質はそのようなところにはない。圧倒的にマンパワーが足りない。学校現場の現実をつぶさに見ずに、形式的な働き方改革をやっても何の意味もない。」この点では、大いに同意した。忙しい時期の勤務時間を増やす代わりに、業務に余裕がある時期、例えば8月にまとまった休みを設ける「変形労働時間制」なども検討されているようだが、これなどは形式的な働き方改革の典型だろう。労働時間を平準化して解決する問題ではない。

2016年の「教員勤務実態調査」(文部科学省)によると、小学校教員の33.5%、中学校教員の57.7%が週60時間以上勤務、つまり月80時間以上の時間外労働をしているらしい。これは、明らかに過労死ラインを超える数値だ。学校の多忙化が深刻になっている要因として、以下の3つが挙げられることが多い☆:

1)子どもたちのためになるから(学校にあふれる善意)
2)前からやっていることだから(伝統、前例の重み)
3)とても少ない教職員数のなかで頑張っている

これらは、仕事の生産性や能率を上げたり、法律で規制したりすることで解決する問題だろうか。むしろ、どのような学校でありたいかというビジョンの問題であるように思える。子どもたちにとって何が大切なのか?優先順位が高いものは何か?捨てられるものはないか?といったことだ。

硬直化した教員定数の見直しや勤務時間の適正な運用など、行政にできることはたくさんあるし、進めてもらいたい。しかし、今すぐにでも、学校ができることはたくさんあるはずだ。国や自治体から新しいルールが「下りて」くる前に、勇気をもって学校に立ち上がって欲しいと思う。子どもたちの学びを向上させることが学校に与えられた使命。その本質に戻って、自ら働き方を変えませんか。学校が、子どもたちにーそして、先生にとってー、楽しく、生き生き学び、クリエイティブで、夢を描き、自分らしくいられる場所であるために。

「初めて自分の役割を見つけた気がした。会社から与えられた役割ではなく、自分の意志で選びとった本当に役割にハマることで、これほど熱い気持ちになれるとは思わなかった。」                   原宏一(2009)『トイレのポツポツ』集英社,p.189



☆妹尾昌俊「教育界でも「働き方改革」が問われた2017年―なぜ、日本の先生は忙しいのか?」
https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/20171228-00079786/


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